症状。(シューイチ目線)
今回もシューイチ目線でのお話になります。
『俺とシューイチ』の『俺』の名前を設定していませんでしたが、ストーリーの目線が変わると、なんだかややこしい事になるのだと反省中です。ただ今、力不足を痛感しております(汗)
交感神経の働きが活発化し、それに伴う血圧、心拍の上昇及び筋肉の緊張。
外見からは明らかな頬の紅潮と僅かな発汗が見て取れる。
他にも声の調子や浅い呼吸、挙動などから推測することは可能である。
「シューイチ、やっと見つけた」
放課後の図書室。
声の主は慌ただしく入ってくるなり、俺の隣の椅子に腰かけた。
俺はそれまで読んでいた本から顔を上げ、ハアハアと肩で息をするそいつの顔を見た。
「部活終わったのか?」
「おう。シューイチは生徒会終わったんだろ?」
「ああ」
「じゃあ一緒に帰ろーぜ」
俺は高校に入ってから部活には入っていない。
中学時代こいつに誘われて入部したサッカー部は思いの外楽しかったが、今はその分をバイトに費やしたい。
○高は進学校の割にはその辺の融通が利くので有り難いが、生徒会の方は結局断りきれなくて週2回の会議には成るべく出席している。
会議のある日はこうやって一緒に帰ることも珍しくはないが、結局は学校から駅までの10分間と、こいつが先に降りる駅までの一駅分というだけで、特に何処かに寄り道をするわけでもない。
駅のホームで列車が来るのを待つ間、俺たちはいつものように話をしていた。
「今日体育の授業の時バスケの試合しただろ?」
「ああ」
「そん時高瀬がさー、めっちゃフェイントかけてくるから俺なんかムカついちゃってさー」
「ああ」
「アイツ背デケーからぜんぜん敵わないし、やっぱ今日も負けかなーって思ったらシューイチが3点シュート決めたじゃん。そっから形勢逆転したよなー」
「そうだったか?」
「そーだよ。シューイチまじでスゲーって思ったし」
「別にすごくねーって」
「スゲーカッコ良かったよ。俺ももう少し背があったらなー。もう伸びねーのかな? せめてシューイチくらいは欲しかったな。中学ン時はそんなに変わんなかったのに」
そう言いながら背の高さを比べる様に背伸びをしながら俺を見る。
「あと15センチくらい伸びねーかなー。今からでもたくさん牛乳飲んだら伸びるかなって、ウワッ!!」
爪先立ちでバランスを崩し、よろめいた身体を俺は咄嗟に掴まえた。
そしてその勢いのまま自分の胸に閉じ込める。
「わわっ! ごめん! あ、ありがとう」
「今のまま……」
「え? なに?」
「今のままでいいよ。今くらいで丁度いいだろ?」
俺は間近にある柔らかな髪の毛に鼻先を埋めた。
「!!」
――――血圧、心拍の上昇及び筋肉の緊張。
――――頬の紅潮と僅かな発汗。
きっと、いやほぼ間違いなく、こいつは俺が好きなんだろう。
なら俺は――――――。
「シューイチ! もう大丈夫だから放せよ!」
力いっぱい振りほどけば難なく逃れられるだろうがそうしない。
「放せって」
僅かに震える声でそう訴える。
俺が腕を緩めたとたん、その場にしゃがみ込んでしまった。
「なんで……なんでこういうことすんの? 俺の反応見て楽しんでんの?」
怒った表情で俺を見上げるその潤んだ瞳に心拍が上がる。
「別に楽しんでるわけじゃない。ただ……」
「ただ?」
「ただ、確かめたいんだ」
俺はお前のことを、お前が俺を想うのと同じ重さと密度で、愛せているだろうか。
お前はいつからそんな表情で俺を見る様になったんだろう。
だからいつも確かめずにはいられない。
あの人のように壊れてしまわないように。
もう誰も傷つけたくない。