ボクも言いたいことがあるよ!
はじめまして。ボク、色鉛筆。え? 何色かって? よく聞いてくれたね。うふふ。ボクはね、七色なんだ!
持ち主はあの、鉛筆やシャーペンをちょっと雑に扱う高校生。そういえばさっき、鉛筆三本組の一番長いのがあの子に強く握られてて、かわいそうだったよ。とんでもない所がボキッといきそうだったよ……。ああ、恐ろしい。
ボク、持ち主の筆箱に入ってる文房具の中ではかなり古いんだ。なんと、あの子が小学三年の頃からいるんだ! これは良くないことだよ。今になってまだボクが存在してるってことは、使われてないってことなんだから!
そりゃあね、色鉛筆なんて使う機会はあんまり無いしね、七色なんてなおさらだよ。でもね、せっかく筆箱に入ってるんだから、使って欲しいよ。……最後に使われたのいつだったっけ。あの子が高校に入ってから使われた覚えがないよ……。
ボクね、あの子には気に入られてるのはわかってる。あの子は気に入った物が無くなるのが嫌なんだ。だからボクはなかなか使われない。それに、あの子の七色鉛筆はボクだけなんだ。ボクを使ってしまって、七色のが手元から無くなるのも嫌みたい。
大切にされてるのは嬉しいけどね、まだ10センチ以上あるよ! ちょっとくらい使ってもまだまだ無くならないよ! だから使って!
ん、持ち主が筆箱をあさってる。消しゴムならキミから見て右の奥で埋もれてるよ。……え? ボク、持ち上げられた……。これってもしかして……。
うわあ! 出番だー! 久し振りの外だー! 何書くの? 何描くの? ああ、描いた絵に色をつけたいんだね。色ペン使って描き分けるほうが早いよ。っていうか今までそうしてきたじゃない。どうしたの、急に。もしかしてボクの願いが届いた?
持ち主は七色のうち一色だけがノートにあたるようにして描いた絵を塗り分けていってる。ちょっと、その角度だと違う色が混じっちゃうよ。
ふふふ。使われて嬉しいなあ。手、あったかいね。眠いの?
そうそう、ボク、芯が折れたことないんだ。たぶん鉛筆たちより丈夫なつくりなんだね。
……ぐ、持ち主がちょっと強く握ってきた。何かあった? あー、隣の席の生徒が寝てる。ということは、自分は眠いの堪えてるのに、すやすやと寝てる彼が許せないんだね。寝てる奴のことなんかほっときゃい、ぐえええぇぇぇ!
ううう、ぐるじい、やめで……。
はあ……
持ち主が小さく溜め息を吐く音が聞こえて、手が緩まった。ついでに出番が終わったから、ボクは解放された。筆箱に戻される。持ち主は怒りを溜め息にして吐き出したみたい。
鉛筆みたいに芯は折れないし、シャーペンみたいに特に脆い部分もないから油断してた。あの子が怒った時に持たれてると大変だってこと忘れてたよ。まったく、持ち物に八つ当たりするなら、別の物にしてよ。文房具に当たらないで!
ボクはこのまま、あの子にくっついて大学に行って、あの子が大人になっても長いままなんだろうね。
ボクも鉛筆とシャーペンと同じこと言うよ。
これからもボクを使って! ボク待ってるから! あと、なるべく優しく使ってね!




