木枯らしの頃③
ご覧いただきありがとうございます。
本作は、実話をもとに再構成した「叩き上げ公務員」の半生を描くサクセスストーリーです。
学歴もコネもなく、定時制高校からスタートした主人公。
決して順風満帆ではなかった彼が、どのような葛藤や壁を乗り越え、霞ヶ関の本省、そして幹部へと駆け上がっていったのか。
実際の官僚機構や他省庁でのリアルな泥臭さ、そして人生後半での新たな挑戦までを丁寧に描いていきます。
働くすべての人、そして逆境から這い上がりたい人に届く作品になれば幸いです。
ぜひ最後までお付き合いください!
冬休みの初日。
浩一は勉強机の引き出しの奥から、使い古されてボロボロになった県内の高校案内パンフレットを取り出した。
もう使うことはないはずだと、いや、使う日が来ないことを祈っていた。だが、心のどこかで「いつかこの日が訪れるのではないか」という予感があり、捨てるに捨てられず取っておいたものだった。
パンフレットを開き、神戸市内の県立・市立高校のページをめくる。
中学の担任に約束を反故にされ、願書すら提出させてもらえなかった県立商業高校。そして、野球部でレギュラーが狙えそうだと一時期憧れていた須磨区の県立高校。その2校の欄に、そっと付箋を貼った。
意を決して、まずは県立商業高校へ電話をかけた。
現在、県内の私立高校に通っていること。しかし経済的な理由で通い続けることが難しくなったため、そちらへ転校できないだろうか——そう切実に尋ねた。
保留音のあと、しばらく待たされて返ってきた担当者の回答は冷淡なものだった。
「県外からの転居に伴う転校であれば、転入試験を受けていただき、その結果で合否を判定します。しかし、県内での転校となると、そもそも転入試験の受験資格自体がありません」
厳しいだろうとは予想していたが、いざ面と向かって現実を突きつけられると、心が折れそうになる。
それでも気を取り直し、須磨区の普通高校へ電話をかけた。現在通っているI高校と学力レベルもさほど変わらないため、かすかな希望を抱いていたのだが……電話口から返ってきた答えは、県立商業と同じだった。
電話を切り、浩一は自室の天井を仰ぎながら、ぽつりと呟いた。
「先生……あの時、俺に県立商業高校を受験させてくれてたら、ひょっとしたら違う未来があったんと違うか……? 先生って、一人の生徒の人生を左右するほど影響力のある存在なんやで……」
どこにもぶつけようのない感情が胸を塞ぐ。
(……俺はどうしたらええんや。どこの高校にも通えんやんか。もう学校を辞めて、家計を助けるために就職するしかないんか? この先、俺に何が待ってるんやろ……人生、やり直せるんか……?)
静まり返った部屋の中で、浩一はしばらくの間、ただ茫然と放心状態に陥っていた。
ご覧いただきありがとうございました。
自分の努力や成績ではどうにもならない「制度」と「過去の選択」という重い現実に直面する浩一。
家族にも友達にも頼れず、一人で電話をかけ、一人で傷つく浩一の孤独な戦いが切なく描かれた回となりました。
中学時代の担任の判断、そして今回の学費問題——大人の事情に翻弄される15歳の葛藤が痛いほど伝わってきます。




