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初級アビスダンジョン

ワールドストーリーの世界で冒険を続ける主人公は、テトラに誘われてスペシャルダンジョンの一つ「アビスダンジョン」へ挑む。舞台はメルギュロス大陸南西の岩山に口を開ける深淵の縦穴。そこは層が深くなるほど敵も地形も危険になるが、そのぶん貴重な素材や宝箱、図鑑登録の楽しみが詰まった場所だった。第一層では、湿った石床と苔に覆われた薄暗い通路で、主人公たちはアビススライムと遭遇する。図鑑の情報を頼りに弱点を見抜き、主人公は練習していた雷属性技「サンダースラッシュ」を成功させて撃破。初めての本格ダンジョンで手応えを得る。さらに木箱級の宝箱から回復草や雷石を入手し、探索の面白さを実感する。


第二層は獣臭と骨が転がる不穏な自然洞窟へと変わり、二人は集団で奇襲を仕掛けるダークファングウルフと戦う。テトラの睡眠魔法「スリープ」で敵の動きを封じ、主人公との連携による「ダブルスラッシュ」で危機を突破。戦いを通じて、二人の呼吸は以前よりも確かに噛み合い始めていた。銀級の宝箱から魔石や装飾素材も手に入り、ダンジョン攻略は順調に進む。


そして第三層。そこは巨大な石柱が並ぶ古代遺跡であり、最奥には初級ボス「ダークエンシェントゴーレム」が待ち受けていた。高い耐久を誇る巨体に苦戦しながらも、テトラの光と雷の魔法、風の足場支援を受け、主人公は弱点である胸部の核を見極める。最後は二人同時の「ダブルスラッシュ」で核を断ち、ゴーレムを撃破。金級宝箱から強化素材やスキル書断片、レアな腕輪を獲得し、アビスダンジョン初回攻略は成功する。深淵の入口を踏破したこの冒険は、単なるダンジョン攻略に留まらず、主人公とテトラの距離が少しずつ縮まり、信頼と親密さが深まっていく一日となった。

第七章


アビスダンジョン


第一層 濡れた石床とアビススライム

その日は、空が少しだけ鈍い色をしていた。


ワールドストーリーの世界では天気ひとつでも妙に意味ありげに見える。雲が低く、風は冷たく、遠くの山脈の輪郭がわずかに霞んでいる。テトラはそんな空気をまるで気にせず、いつものように軽い足取りで歩いていた。


「今日はね。」


彼女が振り返る。

金色の髪がふわりと揺れた。


「アビスダンジョンに潜ろう!」


「アビス、って。」


名前からして、あまり明るい感じはしない。


「深淵って意味だよ。」


テトラは笑う。


「でも最初は初級層だから大丈夫。いきなり死の国みたいなとこじゃないから安心して。」


「安心材料の出し方がちょっと変なんだよな。」


そう言うと、テトラがくすっと笑った。


二人が向かった先は、メルギュロス大陸の南西にある岩山の裂け目だった。地表にぽっかりと口を開けた縦穴。その周囲だけ草木が不自然に少なく、空気がひんやりとしている。入口の上には古い石板があり、かすれた文字でこう刻まれていた。


ABYSS DUNGEON


「うわ、ちゃんと怖い。」


「でしょ?」


テトラが少し得意そうに胸を張る。


「スペシャルダンジョンの一つなんだよ。層が深くなるほど敵も地形も厄介になる。でも、そのぶんレア素材とか宝箱とか、図鑑登録とか、楽しいこともいっぱい!」


「図鑑?」


「うん!」


テトラは指を立てた。


「このゲームの楽しみって、強くなるだけじゃないの。図鑑を埋めるのも大きいんだよ。」


メニューを開くと、彼女がこちらの画面をのぞき込んでくる。距離が近い。近い近い。少し甘い香りすらする気がして、思わず視線をそらした。


「モンスター図鑑、素材図鑑、地形図鑑、武器図鑑、料理図鑑。いっぱいあるんだ。初めて出会った敵を倒したり、初めて見た植物を採取したり、初めての場所に行ったりすると埋まってく。地味だけど、こういうの好きなんだよね。」


「へえ。」


「それにさ。」


テトラはにこっと笑う。


「君と一緒に埋めていけるの、ちょっと嬉しい。」


心臓が変なタイミングで鳴った。


「……そういうこと、さらっと言うなよ。」


「え?」


「いや、何でもない。」


彼女は不思議そうな顔をしたあと、楽しそうに笑って先に進んだ。やっぱり少しずつ、前よりずっと気さくになっている。最初の頃のどこか遠慮がちな感じが薄れて、今は一緒にいることを自然に喜んでくれているようだった。


ダンジョンの中へ入る。


一層目は、思ったよりも広かった。石造りの通路が迷路のように続き、壁面には湿った苔が張りついている。天井からは水滴が落ち、ぽつ、ぽつ、と規則のない音が響いていた。空気は冷たく、かすかに鉄のような匂いが混じっている。


「まずは様子見ね。」


テトラが小声で言う。


「初めての本格ダンジョンだけど、初級層だから落ち着いていけば大丈夫。」


「了解。」


龍派生のミディアムソードを軽く握り直す。剣はかすかに脈打つような感触を返した。まだ完全に手に馴染んだとは言えないが、それでも以前よりずっと相棒っぽい。


通路の先に、小さく何かがうごめいた。


青黒い半透明の物体。低く震えながら、ぬるりと床を滑ってくる。


「いた。」


テトラが囁く。


「アビススライム。」


モンスター図鑑が自動で開いた。



アビススライム

分類:深淵粘性体

特徴:湿った闇気を吸って成長するスライム種。通常のスライムより粘性が高く、暗所では擬態しやすい。打撃にはやや強く、雷属性に弱い。体内に微量の深層鉱液を含むことがある。



「特徴まで出るのか。」


「そうそう。初見の敵はこうやって少し情報が出るんだよ。だから図鑑埋めって楽しいの。」


アビススライムは一体だけじゃなかった。薄暗い水たまりのふちから、もう二体、ゆっくりと浮かび上がってくる。見た目の割に、動きには妙な嫌らしさがある。足元を狙って絡みつくように寄ってくるタイプだ。


「スライムって地味に面倒そうだな。」


「でも君にはぴったりの技があるよ。」


「ぴったり?」


テトラは期待に満ちた目でこちらを見る。


「ほら、昨日少し練習したでしょ。」


「ああ……雷の。」


「うん!」


少し緊張しながら、剣を構える。右手に意識を集中させ、心の中で魔法式をなぞる。声には出さない。暗唱。まだぎこちないが、テトラに教わった通り、心の作用を媒介に無へ形を与える。


剣身に青白い雷が走った。


「雷の剣よ、サンダースラッシュ!」


横一文字の斬撃。


雷光が剣先から伸び、最前列のアビススライムを真っ二つに裂く。遅れて電撃が弾け、二体目にも飛び火する。スライムたちはびくりと震え、青い火花をまとったまま崩れ落ちた。


「おおっ!」


テトラが本気で感心した声を出す。


「いいじゃん! すごいすごい!」


褒められると、びっくりするほど嬉しい。


残った一体が跳ねるように飛びかかってくる。だが動きは単調だ。踏み込んで斜めに切り上げる。スライムはぺしゃりと潰れ、光の粒になって消えた。


ダンジョンの空気が少しだけ静かになる。


図鑑に登録音が鳴る。


アビススライム 登録完了


「これで一体目。」


テトラが笑う。


「一歩前進だね。」


足元には小さなドロップアイテムが落ちていた。

深淵粘液と、鈍く光る石片。


「あ、素材だ。」


「取っとこ。あとでクラフトにも使えるかも。」


さらに奥へ進むと、小部屋の隅に木箱のようなものが見えた。


「宝箱?」


「うん。でも宝箱にもランクがあるよ。」


テトラが近づきながら説明する。


「木箱級、鉄級、銀級、金級、虹級の五種類。見た目もだんだん豪華になっていくの。」


「虹級ってすごそうだな。」


「めったに出ないよ。見つけたら運命。」


小さな箱は、確かに簡素な木箱だった。開けると中には回復草と少量のコイン、それから初級の雷石が一つ。


「木箱級だね。」


「最初のダンジョンっぽくていいな。」


「うん。こういうのも好き。」


テトラは宝箱をのぞき込んだまま、楽しそうに言った。


「君、ちゃんとダンジョン向いてるかも。」


その何気ない一言が、不思議と嬉しかった。


初級層の空気はまだ優しい。

けれど確かに、ここは地上とは違う。

深く潜れば、何かもっと大きくて危険なものが待っている。


そんな予感を残したまま、二人は第二層への階段を降りていった。


第二層 牙と眠りの連携


第二層へ降りた瞬間、空気が変わった。


一層目の湿った冷たさとは違う。こちらはもっと生々しい。獣臭と土の匂いが混ざり、壁は剥き出しの岩盤、通路も自然洞窟に近くなっている。ところどころに大きな爪痕のような傷があり、足元には白っぽい骨まで転がっていた。


「雰囲気、急に悪くなったな。」


「ここからはアニマルモンスター系が多いよ。」


テトラが声を落とす。


「それなりに凶暴そうなのが出る。」


「それなりに、って便利な言い方だな。」


「安心して。すっごく凶暴ってわけじゃないから。」


「そこまで安心できない。」


彼女は笑った。


その笑い声が少しだけ通路に響く。すると、奥の暗がりから低いうなり声が返ってきた。


「……今の、聞こえた?」


「うん。」


二人同時に構える。


岩陰から現れたのは、狼だった。だが普通の狼ではない。毛並みは黒というより闇色で、四肢は異様にしなやか、牙だけが不自然なくらい白く光っている。目は赤く、こちらを見つめるだけで獲物として値踏みされているのが分かった。


図鑑が開く。



ダークファングウルフ

分類:深淵獣

特徴:暗所での奇襲を得意とする狼型モンスター。集団行動を行うことが多く、噛みつきによる出血付与に注意。睡眠耐性は低めで、連携に弱い。



「睡眠耐性、低め。」


テトラがにやっと笑う。


「いいね。」


「行けるか?」


「もちろん。」


しかしその直後、さらに二体、影から姿を見せる。

三体。囲むつもりだ。


「なるほど、集団行動。」


「図鑑は親切だね。」


先頭の一体が飛びかかる。とにかく速い。剣で受けるが、牙の衝撃が思ったより重い。金属が鳴り、腕にしびれが走る。


「っ!」


「大丈夫!?」


「なんとか!」


二体目が側面に回り込む。テトラが片手をかざした。


「永遠に眠れ、スリープ!」


淡い薄紫の光がふわりと広がる。まるで花粉のようなきらめきが狼たちを包み込み、二体目と三体目の動きが一瞬止まる。瞳の赤がゆるみ、足取りがよろめく。次の瞬間、二体はその場に崩れ、眠りに落ちた。


「本当に寝た。」


「でしょ!」


テトラが少し得意そうに笑う。


先頭の一体だけは辛うじて耐えたのか、まだこちらを狙ってくる。だがもう、流れはこちらのものだった。


「テトラ!」


「うん!」


彼女が駆ける。こちらも踏み込む。


「デュアルで行くよ!」


「了解!」


息が合った。

同時に剣を振る。


「ダブルスラッシュ!」


二本の軌道が交差し、凶暴な狼の胴に十字の斬撃が刻まれる。闇色の毛皮が裂け、ダークファングウルフは低く唸ってから崩れ落ちた。


眠っていた二体も、起きる前に処理する。テトラが一体の動きを小さな風魔法で縛り、こちらが一閃。残る一体は彼女が短詠唱の氷刃で足を止め、二人で挟み込むように倒した。


静寂。


「……勝った。」


「勝ったね。」


呼吸を整える。

緊張はあったが、確かな手応えもある。


図鑑登録音が鳴る。


ダークファングウルフ 登録完了


「この感じ、いいな。」


「うん。」


テトラが少し嬉しそうにこちらを見た。


「ちゃんと連携になってきた。」


その言い方が妙にくすぐったい。


さらに奥へ進んだ先で、銀色に縁取られた宝箱を見つけた。


「お、これは。」


テトラがしゃがみ込む。


「銀級かも。」


開けると、中には中級回復薬、狼牙の装飾材、それから闇属性の小さな魔石が入っていた。


「おお、ちょっと豪華。」


「二層目っぽいでしょ。」


テトラは魔石をつまんで光に透かす。


「こういうの、あとでアクセサリにできるかもしれない。」


「テトラって、ほんとこの世界詳しいな。」


「長くいるからね。」


そう言って笑う横顔が、少しだけ大人びて見えた。最初の頃よりずっと距離が近い。戦闘中の声の掛け方も自然になったし、何より、こちらが動くのを信じてくれている感じがある。


第二層の終端には、重い石扉と下り階段があった。


その向こうから、鈍い振動が伝わってくる。


「三層目。」


テトラが小さく息を吐く。


「たぶん、ボス部屋。」


「初級ボスってやつか。」


「うん。でも油断しないで。」


彼女はそう言ってから、少しだけ笑う。


「まあ、私がいるから大丈夫。」


「自信満々だな。」


「だって君もいるし。」


さらっと言うな、本当に。


心臓を落ち着かせる暇もないまま、二人は第三層へ降りた。


第三層 ダークエンシェントゴーレム


第三層は、まるで遺跡だった。


自然洞窟だった二層目までとは明らかに違う。巨大な石柱が規則正しく並び、床には古代文字のような溝が走っている。中央広間の天井は高く、暗闇の中に消えて見えない。空気は乾いていて、代わりに古い砂と石の匂いがした。


部屋の中央には、巨大な影が立っていた。


いや、立っていたというより、眠っていたのだろう。

石の巨人。

両腕は太い柱のようで、全身には黒ずんだ古代紋様。

目の位置に埋まった赤い宝玉だけが、こちらの気配を察したようにぼうっと光った。


図鑑が開く。



ダークエンシェントゴーレム

分類:古代守護兵器

特徴:深層遺跡を守る旧式ゴーレムの闇変質個体。高い物理耐久を持ち、鈍重だが一撃が重い。関節部と胸部の核が弱点。雷・聖属性にわずかに反応。



「うわ。」


思わず漏れる。


「初級でこれは、でかいな。」


「見た目はね。」


テトラも少しだけ緊張した顔になる。


「でも動きは単純なはず。焦らずいけばいける。」


次の瞬間、ゴーレムの両眼が完全に点灯した。

重い地鳴り。

一歩踏み出すだけで床が震える。


「来る!」


右腕が振り下ろされる。

横に飛んで回避。

床石が砕け、破片が散る。


「重っ!」


「だから言ったでしょ!」


テトラが手を掲げる。周囲に光の輪が三つ浮かぶ。


「光槍、ルミナスレイ!」


細い光の槍が飛び、ゴーレムの膝関節に突き刺さる。金属とも石ともつかない鈍い音。完全には貫けないが、動きが少しだけずれる。


「効いてる!」


「少しだけね!」


ゴーレムが腕を横薙ぎに振るう。しゃがんで回避し、足元へ滑り込む。剣で足首の継ぎ目を狙って斬るが、硬い。さすがに普通に斬っただけでは浅い。


「やっぱ物理は通りにくいか。」


「弱点狙い!」


テトラが叫ぶ。


ゴーレムの胸部、中央に黒い装甲。その奥に赤黒い核の光が脈打っているのが見えた。


「でも、あそこ高いぞ。」


「なら作る!」


テトラの周囲に風が巻く。


「風よ、ステップエア!」


足元に風の踏み台が生まれる。

咄嗟にそれを蹴って跳ぶ。

視界が一気に高くなる。


「今!」


剣に意識を集中。


雷。

光。

心臓の鼓動と一緒に魔力を通す。


「雷の剣よ、サンダースラッシュ!」


今度は縦一文字。

雷をまとった斬撃がゴーレムの胸装甲に走る。火花が弾け、核の光が一瞬強く乱れる。


「効いた!」


「もう一押し!」


だが、ゴーレムも黙っていない。胸の中央から黒い波動を放つ。空気が重く歪み、着地と同時に足元がぐらつく。


「く……!」


「大丈夫!?」


「まだいける!」


テトラが前に出る。

その声に、以前よりためらいがない。


「じゃあ次、合わせよう!」


両手を開くと、彼女の背後に幾つもの属性光が浮かんだ。炎、氷、雷、風、光、闇。そのうち二つが前へ出る。雷と光。


「牽制する!」


「わかった!」


「雷霆よ、ボルトランス!」


鋭い雷槍が飛び、ゴーレムの肩に直撃。続けざまに。


「聖光よ、ホーリーフレア!」


白い爆ぜる光が胸部装甲を焼く。核の周囲がひび割れた。


「今だよ!」


踏み込む。

龍派生の剣がかすかに熱を持つ。

まるで応えるように。


ゴーレムの拳が振り下ろされる寸前、その内側へ潜り込み、跳躍。


「これで……!」


テトラも同時に駆ける。


「行こう!」


「おう!」


二人の息が重なる。


「ダブルスラッシュ!」


交差した斬撃が、ひび割れた胸部の核を正確に断つ。

一瞬の静止。


次の瞬間、核の赤光が内側から砕け、ゴーレム全身に亀裂が走った。石の巨体がゆっくりと崩れていく。腕が落ち、胴が割れ、最後に頭部の宝玉が消灯した。


轟音。


砂煙。


そして静寂。


「……勝った。」


「勝ったぁ!」


テトラが思わずその場で小さく跳ねた。


こちらも大きく息を吐く。

手が震えている。

でもそれは恐怖より、達成感の震えだった。


図鑑登録音が鳴る。


ダークエンシェントゴーレム 登録完了


「初級ボスにしては濃いな……」


「でしょ。」


テトラが笑う。


「でもすごかったよ。最後、ちゃんと核を見切ってた。」


「テトラが割ってくれたからだろ。」


そう返すと、彼女は一瞬だけ目を丸くして、それから少し照れたように笑った。


「……そうやってちゃんと返してくれるの、なんかいいね。」


「なんだそれ。」


「なんでもない。」


広間の奥、ゴーレムが守っていた祭壇の前に、豪華な宝箱が現れていた。

金の縁取り。中央には青い宝石。


「おお……!」


「これは!」


二人同時に声を上げる。


「金級!」


駆け寄って開ける。中には、初級上位の強化素材、古代遺跡のコア片、雷属性のスキル書断片、それからかなりの額のコイン。そして一つ、黒金の小さな腕輪。


「レアっぽい。」


「うん。たぶん初級では当たり。」


テトラが腕輪を手に取る。


「アビス系耐性ついてるかも。あとで鑑定しよう。」


さらに、祭壇の脇には転送用の青い魔法陣が灯っていた。クリア地点だ。


「帰る?」


テトラが尋ねる。


「今日はここまででもいいし、もう少しだけ余韻に浸ってもいいよ。」


「余韻に浸るって選択肢あるのか。」


「あるよ。」


彼女は笑う。


「初クリアなんだから。」


しばらく二人で広間を見回す。

崩れたゴーレム。

静かな古代遺跡。

クリア後の少し軽くなった空気。


「こういうの。」


テトラがぽつりと言う。


「一緒にできてよかった。」


その声は以前よりずっと自然で、近かった。


「俺も。」


言ってから少しだけ照れたが、今度はそらさなかった。


テトラは嬉しそうに笑って、転送陣の上に立つ。


「じゃあ帰ろっか。次はもっと深いとこ、行こうね。」


「もう次の話かよ。」


「もちろん。」


彼女はくるっと回る。


「図鑑もまだまだ埋まってないし。」


青い光が二人を包む。


アビスダンジョン第一回攻略。

一層目、二層目、三層目。

まだほんの入口にすぎない。


けれど確かに、今日の冒険は一つの始まりだった。

ダンジョンの深さだけじゃない。

テトラとの距離も、少しだけ深くなった気がした。

もちろん。こんな感じの「あとがき」なら、物語の余韻を壊さずに締めやすいです。


あとがき


第七章「アビスダンジョン」まで読んでくださり、ありがとうございます。


今回は、主人公とテトラが初めて本格的なダンジョンへ挑む回になりました。

一層ごとに空気や地形、出現するモンスターの性質を変えながら、少しずつ緊張感が深まっていく流れを意識して書いています。最初は湿った石床とスライム、次は獣の気配が濃い洞窟、そして最後は古代遺跡と巨大ゴーレム。ゲームらしい段階的な高まりと、「次は何が出るんだろう」というわくわく感を大事にしました。


また、今回の章では戦闘そのものだけではなく、図鑑、素材、宝箱のランクといったゲーム世界ならではの楽しさも強めに入れています。ただ敵を倒して進むだけではなく、世界を知り、埋め、集めていくことも冒険の喜びなのだと感じてもらえたら嬉しいです。


そして何より、この章で描きたかったのは、主人公とテトラの距離の変化でした。

最初はどこかぎこちなかった二人が、戦いの中で自然に声を掛け合い、連携し、相手を信じて動けるようになっていく。その小さな変化の積み重ねが、アビスダンジョンの攻略そのものと同じくらい大切なものとして書けていたらいいなと思っています。

深いダンジョンに潜るほど、二人の関係も少しずつ深くなっていく。今回は、そんな一つの節目のような章でした。


アビスダンジョンはまだ入口にすぎません。

この先、もっと危険な敵、奇妙な地形、そして今より強い試練が待っています。けれど同時に、それだけ新しい発見や成長も待っているはずです。


次の章でも、主人公たちの冒険を見守っていただけたら嬉しいです。

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。


必要なら次に、

「小説家になろう向けでもっと軽いあとがき」

「商業っぽい、少し綺麗めのあとがき」

の2パターンにもできます。

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仮想世界だと思っていた場所が、少しずつ別の顔を見せ始めます。 続きもよろしくお願いします。
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