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作者とゲームと君

第七章


第一章 作者


ダンジョンの奥は、静かだった。


テトラと二人で入ったはずの洞窟。


さっきまでモンスターの気配があったのに、

今は妙に静まり返っている。


「……おかしいね。」


テトラが小さく言う。


松明の光が岩壁に揺れる。


奥にボス部屋があるはずだった。


だが、扉を開けた瞬間。


空間が歪んだ。


「……?」


床が消える。


壁が消える。


洞窟が溶けていく。


代わりに現れたのは、真っ白な空間だった。


上下も左右も分からない。


ただ、光だけが広がっている。


「……なにこれ。」


テトラが呟く。


そのとき。


後ろから声がした。


「やぁ。」


振り向く。


そこに、一人の男が立っていた。


年齢はよく分からない。


少年のようでもあり、大人のようでもある。


ラフな服。


手をポケットに入れている。


まるで、この場所が自分の家みたいに自然だった。


男は軽く手を振る。


「やぁ、僕だよ。」


少し笑う。


「ゆう。」


肩をすくめる。


「通称、U。」


「ゆうって呼んでくれ。」


「……」


一瞬、言葉が出ない。


テトラが前に出る。


「誰?」


男は首を傾げる。


「誰って。」


少し考える。


そして言う。


「強いて言えば。」


軽く笑う。


「超越者かな。」


空気が少し静まる。


男――ゆうは、少し困ったような顔をする。


「まぁまぁ。」


手を振る。


「そんな警戒しないでよ。」


そして突然、こちらを見る。


「いつもすまんな。」


「……?」


「ともだち。」


ゆうは言う。


「いつもありがとう。」


その言葉が、妙に自然だった。


まるでずっと知っている相手みたいに。


「どう?」


ゆうが聞く。


「楽しんでる?」


腕を広げる。


周囲の空間に、無数の世界が映る。


森。


海。


都市。


ダンジョン。


ワールドストーリーの世界。


そして。


さらに別の世界。


現実の街。


そしてまた別の仮想空間。


「そっちの世界と。」


ゆうが言う。


「さらにその世界の中の仮想世界。」


少し笑う。


「どう?」


「……」


答えられない。


ゆうは面白そうに続ける。


「ということは。」


指を立てる。


「僕がどの世界にいるのが正解か。」


こちらを見る。


「君にはわかるかな?」


空間に無数の世界が重なる。


ゆうは言う。


「全ては繋がっている。」


そして首を傾げる。


「あれ?」


「どっかで聞いたことない?」


一瞬、胸がざわつく。


父の遺書の言葉。


ゆうは気にせず続ける。


「面白い?」


少し間を置く。


「つまんない?」


肩をすくめる。


「あ、そうか。」


軽く笑う。


「まぁいいんだ。」


その声は、少しだけ優しかった。


「でもさ。」


ゆうは言う。


「君と。」


少し指を動かす。


空間に小さな世界が浮かぶ。


ワールドストーリー。


「君の世界を作れて。」


静かに言う。


「嬉しい。」


少し照れたように笑う。


「とても。」


そして小さく付け足す。


「たっくさんの愛情さ。」


沈黙。


ゆうは続ける。


「作品だけじゃない。」


指をこちらへ向ける。


「君にも。」


「……」


その言葉に、少しだけ胸が揺れる。


ゆうは軽く笑う。


「さて。」


手を叩く。


「少しゲームの話をしようか。」


第七章


第二章 ゲームマスター代理


ゆうは、その場に腰を下ろした。


椅子はない。


だが座っている。


この空間では、それが普通のことのようだった。


「僕さ。」


気楽な声で言う。


「基本、ソロかデュアルでプレイしてるんだ。」


こちらを見る。


「だからさ。」


軽く指をさす。


「君はデュアルがいいと思うよ。」


テトラの方を見る。


「相棒がいるって、楽しいからね。」


テトラは少し警戒したまま立っている。


ゆうは笑う。


「ああ、そうそう。」


急に思い出したように言う。


「テトラ。」


指を鳴らす。


テトラの周りに光が浮かぶ。


「生かすも殺すも君次第。」


空気が一瞬冷える。


ゆうはすぐに肩をすくめる。


「まぁまぁ。」


「そんな顔しないで。」


そして言う。


「この世界はゲームだから。」


少し考える。


「……あ。」


指を立てる。


「そうだ。」


「NPCのこと。」


こちらを見る。


「死んだら蘇ると思う?」


少し考える。


ゆうは首を傾げる。


「うーん。」


そして笑う。


「蘇らないよね。」


テトラの表情が少し変わる。


ゆうは続ける。


「でもさ。」


「僕の世界では。」


手を広げる。


「ゲームの中に犯罪はない。」


「自由に遊んでいい。」


声は軽い。


でもどこか、本気だった。


「ただし。」


指を一本立てる。


「僕のルールは。」


小さく笑う。


「僕のルールだ。」


空間が少し揺れる。


ゆうは立ち上がる。


「どうかな?」


こちらを見る。


「君の感想を聞きたい。」


少し胸を叩く。


「僕さ。」


笑う。


「ゲームマスター代理もできるからね。」


テトラが小さく呟く。


「代理……?」


ゆうは頷く。


「そう。」


「完全なGMじゃないけど。」


肩をすくめる。


「まぁ似たようなもの。」


そして、思い出したように言う。


「あ。」


指を立てる。


「大事なこと。」


空間に小さなアイコンが現れる。


それは、メッセージ送信のマークだった。


「この機能。」


「5回までしか使えない。」


「え?」


思わず声が出る。


ゆうは笑う。


「いざって時。」


指を軽く振る。


「僕に送ってみて。」


その言葉を言うと。


空間が少しずつ消え始める。


世界が遠くなる。


ゆうは最後に手を振る。


「それじゃあ。」


にやっと笑う。


「グッドゲーム。」


その瞬間。


光が弾けた。


そして気づくと。


またダンジョンの中に戻っていた。


テトラが隣に立っている。


何も言わない。


でも、同じことを感じているのは分かった。


今の出来事。


それはただのイベントではない。


この世界の――


作者に会った。




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仮想世界だと思っていた場所が、少しずつ別の顔を見せ始めます。 続きもよろしくお願いします。
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