第3話 不死探究と不治の少女 エクストラクエスト
第三話 不死の探究
3-1 クエスト発生 ――「少女を救え」
画面は静かにフェードインする。
暗い石造りの部屋。窓の外には雨が降っている。音は小さく、ただ世界の奥で降り続けているような雨だ。
ベッドの上に、ひとりの少女が横たわっている。
白い布。
細い腕。
浅く、短い呼吸。
画面の端に、ゆっくりと文字が現れる。
状態異常:不治
その言葉は、普通の毒や呪いとは違う色で表示されている。
解除方法:不明。
回復魔法:無効。
時間経過:進行中。
プレイヤーキャラクターはベッドのそばに立っている。
少女は目を開ける。
かすかに笑う。
「……あなた、冒険者?」
声は弱い。
でもどこか不思議に明るい。
「ここに来る人、みんな強そうだから。
でもね……私の病気は、誰も治せなかったんだって。」
窓の外で雷が鳴る。
画面が一瞬だけ白くなる。
部屋の奥に立っていた老人が、静かに前へ出る。
長いローブ。
古い杖。
この街の学者のようだ。
「この病は、普通の病ではない。」
彼はゆっくり言う。
「肉体だけの問題ではない。
魂そのものが、ゆっくりとほどけている。」
プレイヤーにウィンドウが表示される。
選択肢
・詳しく聞く
・黙って立つ
どちらを選んでも、老人は続ける。
「救う方法がないわけではない。
だが、それは人間が簡単に触れていい領域ではない。」
少女は少しだけ首を動かす。
「……でも、死ぬのは怖い。」
その言葉は、静かだった。
泣き叫ぶわけでもない。
ただ、本当に小さく言う。
「まだ、やりたいことあるの。」
画面のBGMが少しだけ変わる。
遠くで鐘の音が鳴る。
老人は深く息を吐く。
「もし本当に救いたいなら、ひとつの道がある。」
杖の先で床を軽く叩く。
その瞬間、画面中央に光の文字が浮かび上がる。
クエスト発生
「不死の探究」
説明ウィンドウが開く。
不治の病に侵された少女を救うため、
この世界に散らばる不死の遺物を集めよ。
それらは生命と死の境界に触れた者だけが手にできる。
必要アイテム:
1.賢者の石
錬金術師たちが夢見た、完全なる変換の核。
生命と物質の境界を越える石。
2.エリクサー
古代王朝が封印した万能薬。
肉体の崩壊を一度だけ巻き戻す。
3.不死鳥アムルゼスの羽
炎の中で何度も蘇る鳥。
その羽は、死の瞬間に命を呼び戻す。
4.死の皇帝の許し
ここで文章が一瞬止まる。
最後の条件だけ、文字が少し暗い。
死の皇帝に許しを乞え。
ウィンドウが閉じる。
少女は目を閉じかけながら、小さく言う。
「そんなすごいもの……集められるの?」
プレイヤーキャラクターは答えない。
ただ画面は、ゆっくりとキャラクターの背中を映す。
外の雨が強くなる。
老人が静かに言う。
「賢者の石は、忘れられた錬金塔にあると言われている。
エリクサーは古代王朝の地下神殿。
不死鳥アムルゼスは、燃え続ける砂漠の奥。」
そして最後に。
「死の皇帝だけは、場所ではない。」
部屋の空気が少し重くなる。
「死そのものの王だ。
許しを得るには、死の国へ降りるしかない。」
窓の外で雷が落ちる。
画面が白く弾ける。
少女はかすかに笑う。
「……でもね。」
ゆっくり目を開く。
「もし本当に行くなら。」
少しだけ息を吸う。
「帰ってきてね。」
その言葉のあと、
画面が静かに暗転する。
そして中央に、金色の文字が現れる。
QUEST START
第三話:不死の探究
その瞬間、世界地図が開く。
遠くに、まだ見ぬ塔、神殿、砂漠が表示される。
そして画面の片隅に、小さなアイコンが追加される。
少女のシルエット。
状態表示:
残り時間:不明
3-2
不死の探究
忘れられた錬金塔
世界地図の北端に、ほとんど読めないほど小さく記された場所がある。
忘れられた錬金塔。
地図の説明には、こう書かれている。
かつて錬金術師たちが真理を求め、
水銀を黄金へと変えようとした塔。
現在は廃墟。
しかし地下深くに、賢者の石が眠るという噂がある。
プレイヤーキャラクターが近づくと、塔は霧の中から姿を現す。
高い。
細い。
そして不自然なほど静かだ。
石壁には、古い記号が刻まれている。
円、三角、蛇、そして水銀を示す古代の紋章。
扉は壊れていた。
押すと、ゆっくり開く。
塔の内部は暗い。
壊れた机。
散らばったフラスコ。
干からびた薬草。
だが塔は完全に死んではいない。
奥の階段から、かすかに光が漏れている。
プレイヤーが階段を降りると、地下研究室にたどり着く。
そこには一人の男がいた。
壮年の男。
白髪が混じった髪。
長いローブ。
机に積まれた紙の山。
男はプレイヤーを見ても驚かない。
ただ、静かに言う。
「……また誰か来たのか。」
声は疲れている。
「賢者の石を探しに来たんだろう。」
プレイヤーに選択肢が出る。
・うなずく
・理由を聞く
どちらを選んでも男は続ける。
「ここには石はある。
だが簡単には渡せない。」
男は机の上の水銀の瓶を持ち上げる。
液体の銀が、ゆっくり揺れる。
「錬金術は魔法じゃない。
少なくとも、ここではそうじゃない。」
彼は瓶を机に置く。
「水銀は、核が変われば金になる。」
プレイヤーの視界に、小さな説明ウィンドウが出る。
水銀は放射性崩壊により、
条件次第で金へ変化する可能性がある。
男は静かに言う。
「問題は時間だ。」
紙に数式が書かれている。
「半減期。
それが長すぎる。」
彼はため息をつく。
「だが、もし半減期を変えられるなら。
水銀は金になる。」
男はゆっくり振り向く。
その背後に、黒い石が浮かんでいる。
小さな石。
だが周囲の空気が揺れている。
「賢者の石。」
男は言う。
「これは核反応を変える媒介だ。」
プレイヤーが近づくと、石がわずかに光る。
「物質ではない。」
男は続ける。
「想念だ。」
画面に説明が出る。
賢者の石
半減期を変える媒介となる想念結晶
物理と意識の境界に存在する石
男は少し黙る。
「だが、この石には問題がある。」
机の横に、奇妙な人影が立っている。
それは人間の形をしている。
呼吸している。
目も動く。
しかし何かがおかしい。
男が言う。
「哲学的ゾンビ。」
プレイヤーの視界に説明が出る。
哲学的ゾンビ
外見と行動は完全に人間と同じ
だが主観的意識が存在しない存在
ゾンビは静かに立っている。
まばたきもする。
歩きもする。
だがそこに「感じる者」はいない。
男は頭を抱える。
「意識のハードプロブレム。」
声が震える。
「なぜ物質から意識が生まれるのか。
なぜこのゾンビには、それがないのか。」
ゾンビは静かに歩く。
机に触れる。
振り向く。
だが目の奥には何もない。
「もし意識が物質から生まれるなら、
このゾンビにもあるはずだ。」
男は言う。
「だが、ない。」
研究室の空気が重い。
「私はずっと考えている。」
男の声は小さい。
「意識とは何だ。
なぜ存在する。
なぜこのゾンビにはない。」
沈黙。
男はプレイヤーを見る。
「賢者の石は、想念を結晶化したものだ。」
石がわずかに光る。
「意識が必要なんだ。」
彼は静かに言う。
「だが私は、もう疲れた。」
プレイヤーにクエスト更新が表示される。
イベント発生
「意識の代行」
男が言う。
「もし君が戦えるなら。」
地下室の奥の扉が開く。
暗い廊下。
そこから、低い唸り声が聞こえる。
「この塔には、錬金実験で生まれた怪物がいる。」
画面に敵のシルエットが映る。
「私は考え続けてしまう。
だが君は戦える。」
男は石を見る。
「もし塔の怪物を倒してくれたら、
その行為を意識の代わりとして石に刻む。」
彼は言う。
「行為もまた、想念だ。」
クエスト更新。
塔の敵を討伐せよ
プレイヤーは地下廊下へ進む。
そこには錬金術の失敗作がいる。
水銀の怪物。
金属の獣。
歪んだ人体。
戦闘が始まる。
剣の光。
魔法の火。
金属の悲鳴。
長い戦いのあと、最後の敵が倒れる。
静寂。
研究室へ戻ると、石が強く輝いている。
男がゆっくり立ち上がる。
「……なるほど。」
彼は言う。
「思考ではなく行為。」
賢者の石が静かに浮かぶ。
「君の戦いが、想念として刻まれた。」
男は石を手に取る。
そしてプレイヤーに渡す。
「賢者の石だ。」
石は暖かい。
説明ウィンドウが出る。
入手:賢者の石
男は小さく笑う。
「意識の答えはまだ分からない。」
哲学的ゾンビが静かに立っている。
「だが一つ分かった。」
男は言う。
「生きている者は、考えるだけじゃない。」
プレイヤーを見る。
「動く。」
塔の外に出ると、霧が晴れている。
世界地図が開く。
クエスト更新。
不死の遺物 1 / 4
賢者の石を入手した。
不死の探究
3-3 エリクサー ――月光の量子錬成
賢者の石を手に入れたあと、世界地図に新しい光点が現れる。
目的地は三つ。
•ルクラット湖畔
•ルクスの洞窟
•ゼーレの谷
クエストログが更新される。
不死の遺物の一つ、エリクサーを作るには
通常の錬金術では不可能。
古の知識と特殊な素材が必要になる。
説明欄にはさらにこう書かれている。
必要素材
•カブトガニのブルーブラッド
•超停留液
•花のプリズム結晶
•月光エネルギー
だが、その下にもう一行ある。
必要知識:量子魔法計算
⸻
1 ルクスの洞窟
山脈の奥に、白い光を放つ洞窟がある。
それがルクスの洞窟だ。
内部は静かで、壁に淡い光の鉱石が埋まっている。
奥へ進むと、石の椅子に座った老人がいる。
長い髭。
星の刺繍のローブ。
瞳は不思議なほど澄んでいる。
老人はプレイヤーを見ると微笑む。
「賢者の石を持っているな。」
プレイヤーがうなずくと、老人はゆっくり立ち上がる。
「ならば次はエリクサーだろう。」
彼は洞窟の壁に手を触れる。
すると空中に、光の図形が現れる。
それは奇妙な模様だった。
線が重なり、分岐し、また合流している。
「これは何だと思う?」
プレイヤーに選択肢が出る。
・魔法陣
・分からない
老人は小さく笑う。
「これは計算だ。」
そして言う。
「量子コンピュータという言葉を知っているかな?」
説明ウィンドウが表示される。
量子コンピュータ
量子状態を利用して計算を行う装置
複数の可能性を同時に扱える
老人は続ける。
「この世界では、それを量子魔法計算機と呼ぶ。」
光の図形が変形する。
「エリクサーを作るには、
普通の化学では足りない。」
彼は指を鳴らす。
図形の中心に渦が現れる。
「必要なのは超停留。」
説明が表示される。
超停留
量子状態が崩壊せず、
同時に存在し続ける特殊状態
老人は言う。
「この状態を液体の中で維持できれば、
生命を修復する薬が作れる。」
プレイヤーにクエスト更新が表示される。
量子魔法の知識を習得
老人はさらに続ける。
「だが計算機が必要だ。」
洞窟の壁に、次の場所が浮かび上がる。
ゼーレの谷
「そこには古代のゴーレムがいる。
その胸に、量子魔法計算機の回路板が埋め込まれている。」
⸻
2 ゼーレの谷
谷は深く、霧に覆われている。
中央には巨大な石像が立っている。
古代ゴーレム。
近づくと目が光る。
戦闘が始まる。
石の拳。
地面を揺らす踏み込み。
魔法障壁。
長い戦いの末、ゴーレムは崩れ落ちる。
胸部から光る板が現れる。
説明ウィンドウ。
入手:量子魔法回路
それは複雑な紋様の刻まれた金属板だった。
線が枝分かれし、奇妙な幾何学を作っている。
⸻
3 ルクラット湖畔
湖は広く、月光を映している。
水辺には奇妙な生物がいる。
巨大カブトガニ。
甲羅は古代の盾のように硬い。
戦闘が始まる。
水しぶき。
鋭い尾。
硬い外骨格。
倒すと、体内から青い液体が得られる。
説明ウィンドウ。
入手:ブルーブラッド
青く光る血液。
魔法反応を持つ特殊物質。
⸻
4 量子錬成
素材が揃うと、錬金画面が開く。
必要素材:
•ブルーブラッド
•量子魔法回路
•賢者の石
•花のプリズム結晶
錬金装置が起動する。
青い血液がガラス容器に注がれる。
その上で、液体がゆっくり回転する。
老人の声が響く。
「量子魔法計算機を起動。」
回路板が光る。
液体が震える。
超停留状態 生成
ブルーブラッドがゆっくり変色する。
青 → 緑。
説明ウィンドウ。
グリーンリキッド生成
次の工程。
「月光を集めよ。」
夜になる。
花のプリズム結晶が並べられる。
月の光が反射し、液体に注がれる。
緑の液体が黄金色に輝く。
容器の中で、液体はゆっくり渦を巻く。
まるで小さな銀河のようだ。
説明ウィンドウ。
グリーンゴールデンリキッド完成
老人が静かに言う。
「これがエリクサーだ。」
液体は静かに光っている。
「生命の量子状態を修復する薬。」
画面中央に文字が現れる。
入手:エリクサー
クエストログ更新。
不死の遺物 2 / 4
賢者の石
エリクサー
残る遺物:
•不死鳥アムルゼスの羽
•死の皇帝の許し
遠くの空で、月が静かに輝いている
3-4
第三話 不死の探究
3-4 不死鳥アムルゼスの羽
エリクサーを手に入れたあと、世界地図に新しい印が現れる。
それは、赤い炎の形をしていた。
クエストログが更新される。
次の遺物:不死鳥アムルゼスの羽
説明欄にはこう書かれている。
アムルゼスは古代ペルシャの伝承に登場する不死鳥。
炎の中で死に、炎の中で再び生まれる存在。
その羽は、死に瀕した命を呼び戻す力を持つ。
だが、その下にもう一行ある。
通常の方法では出会えない。
プレイヤーが詳細を開くと、さらに説明が出る。
アムルゼスはこの世界に常駐する生物ではない。
特殊な召喚儀式によって降臨する。
⸻
炎の二つの本質
エリクサーを作った老人のもとに戻ると、彼は静かに言う。
「アムルゼスは普通の炎では燃えない。」
机の上に二つの火が現れる。
一つは赤い火。
もう一つは、透明に近い白い光。
「炎には二種類ある。」
老人は赤い炎を指す。
「これは普通の炎。
光によって熱を持つ、物質世界の火。」
そして白い光を指す。
「もう一つはアーエール。」
説明ウィンドウが開く。
アーエール
別名:エーテルの炎
宇宙の外側すべてに満ちる原初の火
老人は言う。
「アーエールは宇宙の外に広がる。」
洞窟の天井に、星空のような幻影が浮かぶ。
「宇宙は有限だが、アーエールはそれを包んでいる。」
炎が静かに揺れる。
「つまり、宇宙より大きい火だ。」
プレイヤーにクエスト更新が表示される。
アムルゼス召喚の条件
必要要素:
•アーエールの召喚儀式
•真のグリモワール
老人は静かに続ける。
「その儀式は古代から伝わる。」
空中に文字が浮かぶ。
継承召喚
「だが儀式には書物が必要だ。」
老人の声が少し低くなる。
「普通の魔導書ではない。」
洞窟の空気が少し冷える。
「ヴォイドグノーシス。」
⸻
ヴォイドグノーシス
説明ウィンドウが開く。
ヴォイドグノーシス
無の精神的知識を記した真のグリモワール
強烈な輝きを持つ禁書
老人は言う。
「無とは、ただの空虚ではない。」
洞窟の光がゆっくり暗くなる。
「存在が生まれる前の可能性だ。」
彼はプレイヤーを見る。
「この書物は、それを理解した者が書いた。」
プレイヤーに新しい目的地が表示される。
黒塔の遺跡
説明:
塔の奥の書物庫に
ヴォイドグノーシスが封印されている
⸻
塔の番人
黒塔は荒野の中央に立っている。
空は暗い。
風が強い。
塔の扉は閉ざされているが、近づくとゆっくり開く。
内部は石造りの長い階段。
上へ進むと、巨大な広間に出る。
中央に、鎧の騎士が立っている。
黒い甲冑。
長い槍。
説明ウィンドウ。
塔の番人
騎士は静かに言う。
「この塔の奥へ進む者は、
知識の重さを理解しているのか。」
選択肢が出る。
・理解している
・進む
どちらを選んでも、騎士は槍を構える。
「ならば、試そう。」
戦闘が始まる。
槍の閃き。
魔法の衝撃。
重い防御。
番人は非常に強い。
だが長い戦いの末、鎧は崩れる。
騎士は倒れ、静かに消える。
扉が開く。
⸻
隠された書物庫
塔の奥には、巨大な図書室がある。
天井まで続く本棚。
古い巻物。
石の机。
中央の台座に、一冊の本が置かれている。
黒い表紙。
だが内部から白い光が漏れている。
プレイヤーが近づくと、本がゆっくり開く。
文字が浮かび上がる。
説明ウィンドウ。
入手:ヴォイドグノーシス
ページには奇妙な図が描かれている。
円の外にさらに円。
その外側に、燃える光。
そこには一文が書かれている。
宇宙の外にある炎を呼ぶには、
無を理解せよ。
本を持つと、クエストが更新される。
⸻
アムルゼス召喚
夜。
儀式の場所は、古い石の祭壇。
ヴォイドグノーシスが開かれる。
文字が光り、空中に魔法陣が浮かぶ。
老人の声が響く。
「アーエールは宇宙の外の火。」
空が揺れる。
「その火を、この世界へ導く。」
魔法陣が回転する。
本の文字が光り、空が裂ける。
そこから、白い炎が降りる。
普通の火ではない。
透明で、星のように輝く炎。
その中心から、巨大な鳥が現れる。
翼は炎。
体は黄金。
瞳は太陽のよう。
説明ウィンドウ。
降臨:不死鳥アムルゼス
鳥はゆっくり羽ばたく。
その羽から、火の粒が落ちる。
プレイヤーが近づくと、一本の羽が舞い降りる。
それは赤と金が混ざった光の羽だった。
説明ウィンドウ。
入手:アムルゼスの羽
クエストログ更新。
不死の遺物 3 / 4
賢者の石
エリクサー
アムルゼスの羽
残る遺物は一つ。
死の皇帝の許し
遠くで、白い炎がゆっくり消えていく。
3-5
第三話 不死の探究
第四節 死の皇帝の許し
三つの遺物がそろった。
•賢者の石
•エリクサー
•アムルゼスの羽
だが、クエストログにはまだ一つだけ空白が残っている。
最後の条件
死の皇帝の許し
説明欄には、短い文章が書かれている。
死の皇帝は、
運命を書き換えようとする者の前に現れる
深淵の王である。
⸻
死の皇帝とは何か
ルクスの洞窟に戻ると、老人は静かに言う。
「死者を蘇らせる行為は、
ただの治療ではない。」
洞窟の壁に、影が広がる。
「それは運命の改変だ。」
老人は続ける。
「人が本来死ぬはずの時間を越えて生きるとき、
その背後には必ず監視者が現れる。」
彼の声が低くなる。
「それが死の皇帝。」
説明ウィンドウが開く。
死の皇帝
運命の均衡を守る深淵の王
時間改変や死者蘇生の試みに現れる存在
老人はプレイヤーを見る。
「この存在は普通の世界にはいない。」
洞窟の奥に、暗い図が浮かぶ。
死の国
「会うには、そこへ行かなければならない。」
プレイヤーに新しいクエストが表示される。
死の門を探せ
その下に、赤い文字がある。
猶予:14日
老人は言う。
「それ以上遅れると、少女の魂は完全にほどける。」
⸻
タイムカプセル
死の門の前に立つと、古い石の祭壇がある。
そこには小さな瓶が置かれている。
説明ウィンドウ。
タイムカプセル
時間と生命の境界を越える薬
飲むと身体ごと死の国へ移行する
老人の声が響く。
「一度飲めば戻るまでこの世界では眠り続ける。」
選択肢が出る。
飲む
プレイヤーが選ぶと、画面がゆっくり暗くなる。
身体が軽くなる。
世界の音が遠くなる。
そして、静寂。
⸻
死の門
目を開けると、灰色の世界が広がっている。
空は曇り、風は冷たい。
目の前に巨大な門が立っている。
黒い石でできた門。
説明ウィンドウ。
死の門
門はゆっくり開く。
その先に、死の国が広がる。
⸻
死の民族
死の国は奇妙な場所だった。
街がある。
家がある。
市場もある。
だが、そこにいる者たちはすべて仮面をつけている。
白い仮面。
長い目。
歪んだ口。
説明ウィンドウ。
デーベンドーダグの仮面
死の国で使われる仮面
呪いを避ける護符であり
同時に個人を隠す偽りでもある
仮面の住人たちは、プレイヤーを見る。
一人が言う。
「生者か。」
もう一人が言う。
「ここに来る者は珍しい。」
しかしすぐに空気が変わる。
「運命を変えようとしているな。」
仮面の者たちは武器を構える。
説明ウィンドウ。
死の民族
戦闘が始まる。
灰色の剣。
影の魔法。
重い静寂。
戦いは長い。
死の民族は一人ではなく、
次々と現れる。
だが最後の敵を倒すと、
街の奥の道が開く。
⸻
深淵の宮殿
死の国の中心には宮殿がある。
黒い柱。
深い闇。
玉座の間へ進むと、
巨大な影が座っている。
説明ウィンドウ。
死の皇帝
その姿は完全には見えない。
闇の中に、赤い光だけが浮かんでいる。
皇帝は静かに言う。
「生きたままここへ来るとは。」
声は深い。
「何を求める。」
プレイヤーに選択肢が出る。
・少女を救いたい
・許しを求める
皇帝はゆっくり言う。
「人は死ぬ。」
宮殿の空気が重くなる。
「それが運命だ。」
沈黙。
「だが、三つの遺物を集めたか。」
プレイヤーの持ち物が光る。
賢者の石。
エリクサー。
アムルゼスの羽。
皇帝は言う。
「運命を変えようとする意志は本物らしい。」
闇がゆっくり動く。
「ならば、代償を払え。」
影の中から、小さな鍵が現れる。
黒い鍵。
冷たい光。
説明ウィンドウ。
死の鍵
皇帝は言う。
「この鍵は死の門を開く。」
彼の声は低い。
「だが覚えておけ。」
闇が広がる。
「命を救うたび、
世界の均衡は揺れる。」
鍵がプレイヤーの手に落ちる。
クエストログ更新。
入手:死の鍵
皇帝は最後に言う。
「少女を救え。」
闇が消える。
⸻
クエスト完了
画面が暗転する。
再び目を開けると、
プレイヤーは死の門の前に立っている。
タイムカプセルの効果が終わった。
クエストログが光る。
不死の遺物 4 / 4
賢者の石
エリクサー
アムルゼスの羽
死の皇帝の許し
そして中央に文字が現れる。
QUEST CLEAR
第三話 不死の探究 完了
残るのはただ一つ。
少女を救うこと。
3-6
少女は、ゆっくりと目を開いた。
部屋は静かだった。
窓から朝の光が差し込んでいる。
机の上には、賢者の石、エリクサーの瓶、そしてアムルゼスの羽の残り火が、かすかに光を落としていた。
少女はしばらく天井を見ていた。
それから、ゆっくり腕を動かす。
指が動く。
手首が動く。
肩が動く。
そして体を起こす。
「……あれ?」
声が出る。
自分の声に、自分で驚いたような顔をする。
足を床に下ろす。
立ち上がる。
ふらつくかと思ったが、身体は思ったより軽い。
少女は目を丸くした。
「ふわあぁあ……!」
思わず声が出る。
「うそみたい……」
両腕を広げて、ぐっと伸びをする。
「身体って……こんなに動けるんだ……!」
そのまま部屋の中を走り出した。
一歩、二歩。
くるりと回る。
また走る。
床の上を軽い足音が跳ねる。
「すごい……すごいよ!」
少女は笑う。
さっきまで、ずっとベッドの上で動けなかった身体。
呼吸するだけでも苦しかった身体。
それが今は、走れる。
跳べる。
笑える。
部屋を何周か走り回ったあと、少女は急に立ち止まった。
窓の前だった。
外の景色が見える。
遠くの丘。
風に揺れる草。
青い空。
少女は静かに言った。
「……ここってさ。」
少し考えてから続ける。
「殺風景で、本当につまらないよね。」
窓の外を見つめたまま、小さく笑う。
「ずっとここにいたからさ。」
指で窓枠をなぞる。
「不治の病って言われて。」
声は静かだった。
「最初は怖かった。」
少しだけ間があく。
「でもね。」
少女は振り向く。
「それでも、ある人の言葉と、本に救われたんだ。」
机の上の本を指す。
古い本。
角が擦り切れている。
「そこに書いてあったの。」
少女の目が輝く。
「外の世界は、こんなに広くて、美しいって。」
窓の外を指す。
「私も……」
一歩近づく。
「見てみたい。」
そして、少し照れくさそうに言う。
「ねえ。」
プレイヤーの方を見る。
「連れてっていいかな?」
その瞬間、画面にウィンドウが出る。
テトラを仲間にしますか?
▶ はい
▶ いいえ
カーソルが動く。
一瞬、止まる。
そして選ばれたのは――
いいえ
ウィンドウが消える。
部屋の空気が、少しだけ静かになる。
主人公は口を開く。
「そうだ……」
言葉が続かない。
「僕は……」
心の奥で、何かが引っかかる。
なぜ断ったんだろう。
目の前には、やっと歩けるようになった少女がいる。
外の世界を見たいと言っている。
それなのに。
「……」
一瞬、時間が止まったようになる。
何をしているんだろう。
無碍にするなんて。
胸の奥に、小さな後悔が生まれる。
けれど、主人公はすぐに言葉を整える。
「……ううん。」
少し笑う。
「今回は、ごめん。」
外をちらりと見る。
「僕、忙しいんだ。」
少女――テトラは、ぽかんとした顔をする。
そして口を尖らせる。
「ええぇー……」
腕を組んで、少し頬を膨らませる。
「そっかぁ。」
ほんの少しだけ、残念そう。
でもすぐに表情が柔らぐ。
「でもさ。」
テトラは笑う。
「ありがとう。」
机の引き出しを開けて、小さなものを取り出す。
青い石がついたブローチ。
それを差し出す。
「これ、お礼!」
説明ウィンドウが現れる。
アイテム入手
テトラのブローチ
小さな青いブローチ
身につけると、ほんの少しだけ幸運が上がる
テトラは言う。
「またどこかで会えたらいいね。」
窓の外を見る。
風が吹く。
少女はゆっくり深呼吸する。
「世界って……」
小さくつぶやく。
「思ったより広いね。」
画面がゆっくりフェードアウトする。
その瞬間、クエストログに一行だけ追加される。
テトラ 生存
そして主人公は歩き出す。
まだ知らない土地へ。
まだ終わらない旅へ。
画面の中央に、静かに文字が浮かぶ。
これで僕の物語は続く。




