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第4話 鼻は聞くようだねぇ

 「何かリアクションして欲しいだけどね、おじさんとしては。」


 野盗を討伐して荷馬車を救出したのは良いが、どう見ても堅気に見えない上に、10人いた野盗達を難なく殲滅した強さを持つ水瀬の登場に、護衛達は強く警戒し、構えを解く事をせず水瀬を見ており、依頼人と思われる女性は、別の意味であわあわしている。


 話が進まねぇなと内心で思ったところで、頭の中にレベルが7に上がったと言うありがたい知らせが届くと同時に、水瀬の全てのパラメーターが向上したのを確認したところで冒頭の声掛けをすると、依頼人と思われる女性が、


 「あ、ご、ごめんなさい。助けて頂いたのに、お礼も申し上げられなくて」


 ようやく反応を返してくれた。


 「まぁ、あんな猿共に囲まれた挙句に、怪しいおじさんまで登場したらパニくるのもしょうがないわな。」

 「え、いや、怪しいだなんてそんな・・・」


 お道化た様に言う水瀬に女性は曖昧な笑みを浮かべながら返した。


 「あ、レナードさん達も荷物を守って頂いてありがとうございました。」

 「・・・いや、それが今回の俺達の引き受けた依頼だから、それをこなしただけだから。」

 

 そう言って護衛のリーダーと思われるレナードと呼ばれた剣士は、まだ水瀬の事を警戒はしていたが、構えは解いた。


 「あ、自己紹介が遅れました。私、商人をしているミント・グリーと言います。こちらの今回護衛をしてくれた冒険者のパーティーのリーダーが「レナードだ。メンバーの二人が」」

 「リタだ。」

 「エマです。」


 ミントの言葉に重ねる様にレナードは自己紹介すると取り合えずメンバーもシーフがリタで、魔法使いがエマと名乗ってくれた。


 「水瀬純一だ。しがない何でも屋だよ。」

 「名前のニュアンスからして水瀬さんは東の大陸の人ですか?」

 「さぁ?おじさん、仕事中の想定外のトラブルで随分と遠い所から転移させられてねぇ。グリーさんのいう所かどうかは分からないねぇ。」


 ミントの問いにそう返し、そのまま今度は水瀬が質問をした。


 「まぁ、そんな訳でグリーさんや護衛の皆さんに訊きたいが、ここは何処なんだ?」

 「あ~、中央大陸の東部にあるライオネル王国の地方都市ディードの近くですね。分かります?」

 「いや、言われてもさっぱり分からないねぇ。いやはや、こりゃあ随分と遠い土地(場所)に跳ばされてきたみたいだねぇ。いや、参った参った。」


 やれやれと首を軽く振りながら答える水瀬。


 「それでグリーさん達はこれからどっかの街か村に行くのかね?」

 「あ、はい、丁度今、私の商会があるディードに戻る最中なんですが・・・。」

 「それなら悪いんだけど、俺も同行させて欲しいんだがな・・・今し方話したが、ここは俺にとって未知の場所だから土地勘が無いからな。序にもう少しこの辺りの情報も欲しいからな。」

 「あ、それなら別に構いませんよ。レナードさん達も宜しいでしょうか?」

 「・・・まぁ、依頼主のミントさんが良いのなら」「私も別に構いませんが」

 「待った!!」


 ミントがレナード達に尋ねるとレナードとエマは同意したが、そこにリタの鋭い声が飛び、水瀬を睨みつけた。


 「そのおっさんは止めた方が良いぜ。」

 「リタ?」「リタさん?」「・・・どうしたんですかリタさん?」


 パーティーメンバーと依頼主の怪訝な視線を受けながらも、彼女は微動だにせず、


 「オレはスラムで育ったから、色々なぶっ飛んだ奴やヤバい奴を見てきたが、そのおっさんは間違いなく堅気じゃない上に、危険だぞ。」

 「ひひッ・・・なるほど、鼻は利くみたいだねぇお嬢ちゃん。だがよぉ、それじゃあ抽象過ぎていけないねぇ。」


 そして水瀬は中性的な容姿をしたシーフの少女と目を合わせ、


 「つまり、お嬢ちゃんは俺がさっきの猿共より危険で、一緒に行動をしたら依頼主と仲間共々、皆殺しにされるかもしれないから不安で怖いよぉぉ~って、解釈でいいんだな?」


 禍々しい笑みを浮かべ、言葉を発した水瀬の目には昏く鈍い光が宿っており、リタはその目に吸い込まれるかのような錯覚を覚え、気圧され、思わず「ひっ!」と短い悲鳴を上げながら反射的に数歩、後退した。


 「やっぱり、このおっさん、ヤバ過ぎる!!関わらない方が良いぜ!!」


 悲痛な声で反対するリタに、賛成に傾いていたミント達はどうするかと思案気な表情になった。

 この場の空気を察した水瀬は、鼻柱が強そうで生意気そうなリタが自分の言葉に反論するどころか、あっさり臆して声高に反対するとは思わず、内心で舌打ちした。


 しかし、それは表面には全く出さず、


 「おい、お嬢ちゃん、何もそこまでビビる事はねぇだろ。(おら)ぁ別に頭のおかしい快楽殺人鬼って訳じゃないんだ。いきなり何かはしねえよ。」

 「あんな禍々しい雰囲気を出しといて信じられるか!!何でも屋とかほざいてたが絶対嘘だろう!!」


 絶叫する様に叫ぶと、再び構えを取り、それを見た水瀬は挑発する相手を間違えたなと内心、うんざりしながらも


 「おじさんが何でも屋と言うのは確かなんだけどねぇ。まぁ、依頼主は堅気だけでなく裏からの依頼も多々引き受けているので、全うとは言えないかもしれないが・・・。」

 「・・・聞いていると水瀬さんは冒険者では無いのですか?」

 

 リタとのやり取りを一部始終見ていたミント達だったが、疑問が湧いたのかミントが尋ねた。


 「ああ、(おら)ぁ冒険者とやらではないねぇ。そもそも冒険者とは何だ?」

 「冒険者と言うのは世界中の主な都市にある冒険者ギルドに登録した方達の名称で、一般の方を始め、商人や国から出される依頼を纏めて引き受け、それを冒険者の方に斡旋し、依頼を引き受けた冒険者はその依頼をこなして報酬をもら「それでギルドは仲介料をピンハメすると言う訳かい。」まぁ、そういう事です。」


 ミントの説明途中に言葉を被せて言うとミントは頷いた。


 「ちなみに依頼とやらはどんなのがあるんだ?」

 「依頼の内容は、それこそ様々で薬草や薬や武器の素材の採集、モンスターや賞金首の討伐、護衛、果てはダンジョンに潜るというのもあります。簡単なモノでは引っ越しの手伝いとかお店のチラシ配りなんかもあったはずですよ。そうですよね?」


 説明し、レナード達に確認するとレナード達も頷いた。

 

 ミントの説明を聞いて、水瀬は異世界モノのラノベの定番の冒険者の定義と同じだな。そこに人材派遣が混じっている感じかと内心、納得した。


 「・・・成程、おじさんの営んでいる何でも屋と同じようなものだねぇ。」

 「・・・あんた、先程、裏からの依頼と言っていたが、それは裏世界の事か?」

 「・・・ああ、そうだぜ。おじさんのようなしがない何でも屋じゃ、依頼内容を選ぶような贅沢は出来ないからねぇ。」

 「・・・ちなみにどんな依頼内容か聞いても良いか?」

 「普通は守秘義務があるんだが、まぁ、いいだろう。大雑把に言えば護衛や運び屋、場合によっては()()()()()()()()による相手との交渉や説得もあるねぇ。」


 レナードの問いに水瀬がぼかして裏世界からの依頼内容を聞かせると、ミントは「あれ?意外と普通ですね?もっと危険な内容化と思ったんですが・・・。」と返した。


 もっともレナードとエマは内容を察したのか、渋い表情となったが、そこに反応したのもリタだった。


 「それだけじゃねぇだろ!!お前、それなりに殺してんだろ!!じゃ「おい、お嬢ちゃん」なきゃッッ!!」

 「あまり、自分の思い込みだけである事ない事言うのは感心しないぜ。よく言うだろ。()()()()()()()()()。あんまり囀ると()()()()()()()()()()()()ぜぇ。」

 「ッ!!」


 喚く様に叫ぶリタに、再び禍々しい雰囲気と威圧感を出しながら()()する様に言うと、リタは肩をビクッと大きく震わせると黙った。


 「いや、悪いね。ちょっと怖がらせちゃったみたいだね。まぁ、先程、言った様にしがない何でも屋で頭のおかしい快楽殺人鬼じゃないんだ。街まで一緒に行動して、道中いきなり襲ったりはしないよ。それにこう見えて内気な小心者なんだ。野蛮な事は気が進まない性質(たち)なんだよ(おら)ぁ。だから同行しても問題ないよねぇ。」

 「・・・ああ」

 「だって、このお嬢ちゃんも賛同してくれたので、悪いが同行させてもらうぜぇ。」

 「「「・・・」」」


 水瀬とリタのやり取りに、レナードとエマは勿論の事、危機感が弱そうなミントですら、渋い顔をしていたが、野盗との戦いで見せた強さも鑑みて、ここに至って同行を拒否した場合、()()()()()()()になる恐れもあったので、内心、渋々ながらも三人もディードまで同行する事に同意した。


 こうして水瀬は()()()()()()()()()により、ライオネル王国の地方都市ディードへ同行して向かう事になった。

誠心誠意のオハナシとは一体・・・震え声


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