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輪廻と土竜(メグルとモグラ)  作者: HS_TOUKA
第13章 月見祭り

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第13章 05

 

「さあ、ふたりきりの、月見祭りと参りましょう」



 サヤカは廊下の奥、月明かりの影にいた。鱗粉(りんぷん)のように漂う黒い霧が生み出す漆黒の闇のなかで、紅い瞳を光らせている。


「今夜、越界門(えっかいもん)(くぐ)るはずだったのは我ら魔鬼。あの計画が成功していれば、沢山の生徒、保護者、教師たち、そのすべての死体に我ら魔鬼が乗り移る計画だった」


 サヤカがゆっくりと腕を上げた。

 鋭く尖った爪でメグルを指差す。


「見てごらんメグル。我が同志たちが、お前の背後にある大鏡から見ているわ」


 ふり返えったメグルは、大鏡の中に黒い霧が立ち()めているのを見た。

 それは渦を巻きながらいくつもの黒い塊となって、鏡の中の廊下を()い回っている。



「いまから公開処刑を執行する……」


 その言葉に、メグルは再びサヤカに目を向けた。

 月明かりのもとに現れる、黒いワンピースを纏ったサヤカ。

 漆黒の蝶の羽をひろげて、鋭い視線を向けている。


「試練に踊らされている人間と、我欲に溺れる越界者。この両者を巧みに操り人間界を制圧する……。我が天魔王(てんまおう)の壮大な計画の一歩を無にした罪は重い」


 サヤカの瞳が紅く光る。



「その魂、二度と魔界へ還れるなどと思うなよ!」



 次の瞬間、突如発せられた耳をつんざくようなサヤカの咆哮(ほうこう)

 同時に、廊下の窓ガラスが次々と砕け散る。


 月明かりに照らされたガラス片が、ダイヤモンドダストのような無数の輝きとなって宙を舞うなか、黒揚羽(くろあげは)と化したサヤカも宙に舞い上がった。


 メグルは血だらけの()()で『魔捕瓶(まほうびん)』を握りしめ、破れたマントをひるがえした。

 が、一瞬姿を消したかに見えたものの、また廊下の中ほどに現れてしまう。



 長い廊下を滑るように飛んでくるサヤカ。

 メグルは目を閉じて、静かに祈りを捧げた。


「声無き魂たちの叫びを、我が怒りと(なげ)きの声を聞き入れたまえ……」


 そして『魔捕瓶(まほうびん)』を持つ()()を高く掲げ、叫んだ。



如来(にょらい)との契約を破り、魂を闇へと(いざな)う魔鬼よ。()()すことは、如来(にょらい)()すことと知れ!」


如来(にょらい)の名を語るな、自他(じた)(わか)つ反逆者どもめ! その体、八つ裂きにしてくれるわ!」



 迫り来るサヤカが、再び咆哮(ほうこう)した。

 ガラスを引き裂くような音がメグルの耳をつんざき、『魔捕瓶(まほうびん)』に亀裂が走る。


 構わずメグルは呪文を唱えた。



「この世に不法に存在する罪深き者よ。十層界(じっそうかい)の法を犯す者よ。三世十方(さんぜじっぽう)()べる如来(にょらい)の名において、無限封印の刑に処す!」



 サヤカは一瞬たじろぐも、『魔捕瓶(まほうびん)』に走った亀裂がメグルの腕から胸にまで達し、ついには左半身が引き裂かれるのを見て、狂ったような叫びを上げた。



「きゃっはああっ! 愚かなり六道(リクドウ)メグル! 全ての真理は我にあり! 我ら天魔王(てんまおう)こそが、全宇宙を()べる如来(にょらい)なりィイイイイイイっ!」



 しかし亀裂はメグルに(とど)まらず、メグルの奥に続いている廊下までもが、激しく音をたてて崩れていく。


 異変に気付いたサヤカが廊下に降り立つ。




 ――瞬間、終わりを悟った。





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