表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻と土竜(メグルとモグラ)  作者: HS_TOUKA
序章 輪廻と土竜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/86

序章 05(挿絵)


「そ。人間界は【十層界(じっそうかい)】で唯一、『善』と『悪』が混沌(こんとん)とした世界。見てて飽きないね!」


 人が聞いたら、頭に『?』マークが浮かぶところだが、人として人間界に来ていないメグルは、この世の成り立ちはあらかた理解していた。


 (はる)かな昔――。

 まだ全ての魂が混沌(こんとん)と混ざり合っていた頃。


 ()い魂、悪い魂の住み分けを望む者たちが突如として決起し、革命が起こされた。

 永い戦いの末に勝利した革命軍は、体制側として戦った者たちを魔界(まかい)へ追放。

 その後、全ての魂たちが転生(てんせい)(生まれ変わり)しながら己の霊格(れいかく)にふさわしい世界を目指す、十層に分れた世界を創り、魂をそれぞれの世界へ振り分けた。


 いわゆる【十層界(じっそうかい)】である。


十層界(じっそうかい)】は、四聖(ししょう)と呼ばれる四つの精神世界と、その下に続く六道(ろくどう)と呼ばれる六つの物質世界で構成され、下層世界へ行くほど、悪とされる魔界の影響を受けている。


 人間界は六道にあり、魔界側勢力の最前線。

 故に『善』と『悪』との境界線――。


 そこにいる魂は『善』に生きることも『悪』に染まることも本人次第、まさに『善』と『悪』とが混沌(こんとん)とした世界なのだ。



「光り輝く魂……。闇に染まりゆく魂……。このドラマチックな人間界を、いつまでも観察していたいのだ……」


 男は垂れ目を、さらにだらしなく垂らして、恍惚(こうこつ)とした表情で言った。

 しかしメグルの(いぶか)しげな視線に気が付いたのか、はっと我に返り続ける。


「おいらは越界者(えっかいしゃ)の情報を渡す。そのかわりお前さんはおいらを見逃す。ギブアンドテイクってわけよ」


 メグルはくせっ毛頭の前髪を、くるくると人差し指に絡ませながら考えた。


(面倒くさい管理人の仕事などさっさと済ませて、人間界のひとつ上の世界『天界』へ行きたいと思っていたところだ。この男と組めば効率よく仕事が進むかも知れない。いざとなったら利用して、使えない男だとわかったら()らえてしまえばいいか……)


「仕方ない。まぁ、いいでしょう」

 ずる賢い考えに頬が緩むのを必死に(こら)えて、メグルはこたえた。


「よし決まった! じゃあ、おいらの名刺を渡しとくからよ」


 男は胸ポケットからよれよれの名刺を一枚取り出し、メグルに渡した。

「カンノ ドリュウってんだ。いい名前だろ? 昔、世話になった管理人がつけてくれた名前でな」


 なるほどと、メグルは思った。

 確かに名刺には『菅野 土竜』と書いてある。

 が、土竜と書いてモグラと読むことを、この男は知らないのだろう。

 改めて見ると、まさに男の顔はモグラにそっくりなのだ。


「裏に住所が書いてあるからよ。困ったことがあったらいつでも訪ねてきな!」


 モグラはそう言い残すと、非常階段をするすると滑るように下りて、あっというまに繁華街のネオンのなかに消えていった。



「見るからに怪しいやつ……」


 モグラの姿が完全に消えるのを見届けてから、メグルは家路(いえじ)へと足を向けた。


「ぼくみたいなエリートが、あんな怪しげな男と協力するだなんて、絶対にありえないけどね!」



 その怪しげな男とふたり、天魔との永く険しい戦いの道を歩むことになるなど、このときのメグルには、まだ知る由もなかった。


挿絵(By みてみん)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ