表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻と土竜(メグルとモグラ)  作者: HS_TOUKA
第2章 モグラのねぐら

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/86

第2章 03


 モグラのあとについて河川敷の土手を街側へ下る。鉄橋の下でようやく強烈な日差しから逃れたメグルは、だらりとその場にへたり込んだ。日中を通して日陰になっているアスファルトの地面は、ひんやりとして気持ちがいい。


 一方モグラは橋桁(はしげた)を背に立ち、きょろきょろと注意深く辺りを(うかが)っていた。


「………?」


 (いぶか)しげに見つめるメグル。

 すると突然、モグラの姿が消えた。


 唖然(あぜん)と駈け寄るメグルの足もとで、マンホールの蓋ががらりと開く。


「何してんだい、早く来な。ちゃんと蓋閉めてこいよ」


 ひょっこりと穴から顔を出したその姿は、まさにモグラそのものだった。


(ここをねぐらにしてるのか。なるほど『菅野 土竜』とは、よく言ったものだ……)

 メグルはひとり納得すると、モグラのあとに続いてマンホールの中に体を沈めた。



 三メートルばかり梯子(はしご)を降りると地面に足が着いた。じんめりと濡れた暗闇のなかに、かすかに水の流れる音が聞こえる。下水道トンネルのようだ。


「こっちだ」


 声のする方向に目を向けると、ゆらゆらと揺れる明かりのなかに不気味な顔が浮かんでいた。ライターの火を持ったモグラが、少し先の曲がり角から顔を出していたのだ。

 湿った空気がまとわりつくトンネル内は、地上の灼熱地獄とは無縁だが、キッチンの排水口に鼻先を突っ込んだような異臭が漂うこの空間に長居したいとは思えない。メグルは鼻をつまみながら、モグラの背中を足早に追いかけた。


 いくつかの角を右へ左へ曲がりつつ五分ほど歩くと、コンクリートの壁で囲まれた十二畳ほどの空間にでた。そこには古めかしい西洋風のテーブルとソファー、大きな壁掛けテレビ、天蓋(てんがい)の付いたベッドまで置かれている。しかしよく見ると、どれも傷だらけの中古品。

 その奥にはガラクタのような部品や機材が山積みにされていて、見慣れない工作機械や作業台まで置かれていた。反対側には、これまた中古と(おぼ)しきパソコンが数台並び、モニタの青白い光が部屋全体をうっすらと照らしている。


「捨てられたパソコンから部品を調達した寄せ集めだが、OSは最新だぜ」


 モグラはサングラスを外して、シルクハットの上に掛け直すと、軽快な音をたててパソコンのキーボードを叩きだした。するとモニタに四分割されたカメラ映像が現れ、それぞれにマンホールの蓋が映し出される。


「防犯カメラだ。越界者(えっかいしゃ)はここまで用心深くやらなきゃダメよ」


 モグラが得意げに、ぴんっと指で口髭を弾いた。よく見ると、さきほど入ってきたマンホールも映っている。


「すごいな。全部ひとりでやったのか」


「いんや。パソコンの知識も機材を集められたのも、あの川っぺりに住んでいるおっさんたちのおかげさ」


「あの段ボールハウスの?」


「バカにすんなよ。ああ見えて昔は世界を相手に取引きしてた工場の職人や、名立たる会社の技術者だったんだ。知識も経験も一流だぜ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ