汝討つべきは十一之王。心にゆとりを
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!今回は逃げ切るぜぇー!」
エリートウルフ軍とのボスファイトが終わり素材や経験値もウハウハ。浮かれて呑気にスキップなんかしていたせいでモンスターに補足され第二回モンスターから逃げろが開催されてしまった。
「はっはっはー!!!AGI80の俺に着いてこれるかな?!!」
10分後
「だぁ、だぁー、はぁ、キッツ!AGI80だからってなんだよ!余裕なんて物どこに置いてきたんだよ?!だんだん増えてくの怖!何とか逃げきれたけどさ?!なんでいつもこんな目にあうんだ、泣くぞ!俺!」
地面に手を付き四つん這いの状態で休憩ているところを多くのプレイヤーに目撃され、少し距離を置かれてしまったことは知る由もなかった。
「今日はこの辺にしとくかな!流石に疲れた。」
ウィンドウ操作をし一番下のログアウトを選択した。
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【本日の成果】
・チュートリアル完クリ ◎
・レベル上げ ◎
・素材集め ◎
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「インフィコードオンライン....神ゲーだな」
ガンマはVRチェアに座り天井を眺めながらそんなことを口にする。
「もう夕方、て言うか夜だなほぼ。」
VRチェアから降り頭をポリポリと掻きながら1階のリビングに向かう。
「いい匂〜い」
「ん、おはよお兄ちゃん」
「ん、おはよ....おはよか?」
「適当に言ってるだけだからわかんない」
[一色 庵 ]
( 17歳高校生。頭脳明晰で学力は常に学年のトップに位置しており、訳あって一色司と二人暮しをしている実の妹。家事は二人で分担、庵は料理が趣味なため基本的に作ってくれる。)
「それにしてもいい匂いだな」
「フッフッフー今日は疲れがよく取れる薬膳料理に挑戦したのじゃ〜」
「おー!今からだバキバキで死にかけてたんだ、ありがたやー」
「崇めたまえ〜我が兄よ」
庵に両手を合わし感謝の意を込めた。
「あ、それと優勝おめでと〜」
「軽いな、ありがとうだけど」
「うーん、だって負けないだろうなって思ってたし....」
「そりゃありがたいお話だよ」
「視聴者投票とか凄かったよ?優勝予想」
「ん?そういや見てねーな」
「98%だよ?負けるなんて思われてないらしいよ」
「ははっ負けたら大ニュースだな」
笑いながら椅子に座り庵のご飯を待った。
「ただまぁ、俺が一番強くて俺が一番頑張ってるって事は俺が一番分かってるからさ。負けないって思ってるし分かってる、だから途中で飽きちゃうんだろうね」
「.....まあー昔から飽き性だったよねお兄ちゃんって」
「そうか?」
「え、自覚なかったの?ま〜飽き性っていうかすぐ完クリしちゃうから他のゲームに移ってる印象」
「あー、言われてみれば?」
「何?新しいゲーム見つけたの?」
「え、なんでわかったの?」
「え、いやだってすげ〜充実した一日だった、って顔してたから....え?違った?」
「いや、その通りです。」
「いいんじゃない?昔の方が活き活きしててかっこよかったよ?」
そういいつつも料理を次々と置いていく
「庵〜、確かにそうだな!一旦ニューワは休止!!!今はインフィコードオンラインをガチるか!」
「え?!おにぃやってんの?!インフィコード!」
料理を全て並べ終えた庵が机に手を付き身を乗り出すように食いついてきた。
「お、おん、今日始めたんだよ。にぃつに教えて貰って」
「へぇ〜!私もやってるんだ」
「......なに、」
「しかもレベルはカンストしたぜ」
「なん、だと........」
座っている司を見下ろすように庵は仁王立ちしている。
「そんなことより、今日の品目は?」
「そんなことよりなんて言わんでよ〜、まーいっか!フッフッフ〜今日は薬膳に挑戦してみたぜ。こっちの参鶏湯で〜これが見たまんまの薬膳麻婆豆腐!」
「おぉー、流石にスポーツ以外なんでも出来る庵さん、頼りになりますな」
「一言余計だけど....まぁお兄ちゃんには稼いでもらってますのでこれくらいはさせて下さい。逆にこれすらできなくなったらこの家から出ていきます.....」
「俺が困るわ、」
「それもそっか」
「んじゃ、いただきます」
「はい。いただきます」
「まずは参鶏湯から、ん?!」
『鳥の旨みが凝縮され、あっさりとしているが奥行きが感じられる、そして高麗人参、ナツメ、ニンニクなどの鼻腔をくすぐる香り、極めつけはこのもち米!このスープを吸ってとろみが増しているだけでなく微かに甘味を感じられる。更に、シンプルながら最強、塩コショウを少しかけ鶏肉をつけながら食べる..........いや庵の料理が完璧すぎて塩コショウ振ったのは間違いだったな、これは、』
「俺は、侮辱に等しいことを.....」
唇をかみしめて握っているスプーンに力がこもる。
「フッフッフ〜私の料理の味に平伏すがいいさ!貴様などが味をたすなど烏滸がましいとしれ!!」
「ネットで調べてあったからやってみたけど、完璧すぎて必要ねーぜ、、」
「褒めたまえ」
「いーや、まだだ」
次に麻婆豆腐に手をかけ小さな器にとりわける。
「実食」
蓮華に適量麻婆豆腐を乗せ口にほお張る。
「ん?!」
『な、なんだこの辛さ!だ、だが、美味い!!五感を刺激するこの奥深い刺激的で複雑な辛さ!そして子の痺れ!花椒の痺れるような刺激や、「生姜」「唐辛子」のピリッとした辛さ、』
「疲れが吹っ飛ぶ辛さだぜ、」
「何年お兄ちゃんの舌を肥えさせてると思ってるんだい?好きな味なんて手に取るようにわかるのじゃ。」
「くっ、これはひれ伏さざる負えない....」
毎度恒例仲良し漫才を終え二人で食べ進めている時に司から話を切り出した。
「そういや、お前もやってるって言ってたけどさ、モードなんなの?」
「ん?あーインフィコード?私はノーマルでやってるよ〜そっちは?」
「セレスティアル一択」
「ははっ、知ってた」
乾いた笑いとジト目で麻婆豆腐を頬張る司を見つめる。この時庵はまだ知らない、セレスティアルモードを一人で攻略しようとしているイカれた兄であるということを、
「つっても、俺あのゲームのことなんも知らねーんだよな。事前情報ほぼゼロで始めたし。人口がめちゃめちゃ多いってのは知ってるわ」
「ん〜どっから知りた?」
「そりゃー全部っしょ?ネタバレのない範囲で」
「おっけ〜じゃーまずは世界観からかな?」
「そっから頼む!」
「インフィコードオンラインって明確にこれ!っていう世界観は無いんだけど、考察勢によると神話の時代がモチーフかもって言われてる」
「神話?ゼウスとかそこらの?」
「そそ、でもその考察もあってるかまだ分からない状態なんだよね〜」
「んで?そういう考察になった根拠はあるのか?」
「もちろん」
そういい庵はタブレットを取り出しあるところを指さした。
「この世界には数本しかないって言われてる武器“神器”があって今見つかってるのが2つ、1つ目が「月弓 アルテミス」2つ目が「戦王 アレス」この2つなんだけど、今のところこの2つしか考察できる情報がないの。だからまだ全然考察するには情報が足りて無いの。実際このゲームのシナリオとかクエストの発生条件とかもほとんど判明されてないから新しい情報も停滞してるんだよね」
「なるほどな、じゃ、まずは開拓を進めなきゃな。」
「どうせすぐ追いつくでしょお兄ちゃんのことだし...そんなことはさておき、次がこのゲームの大目玉!レコードホルダーについて教えてあげる!」
「レコードホルダー?ってなんだそいつ」
「本当にミリしらなんだ....まーいいや。レコードホルダーってのはね?この世界にいる11体のちょーーーー強いモンスター、って言われてる。一体一体がある分野の頂点に君臨していて過去誰も倒したことがないモンスター!って言われてる」
「んなっ!過去誰もって、一体も倒せてねーのかよ!...てか“って言われてる”って?」
「まぁまぁそこは置いといて、発売から2年以上経ってまだ一体もだから正直ほんとにいるのかも怪しいって言ってる人もいる。種族名、実名共に分からないことだらけの謎の塊なんだよねそいつらって。名称がないと不便だからある分野の頂点に立つっていうっていう文言からレコードってのが産まれてそっから称号持ちのモンスターってことでレコードホルダーになったの。」
「......そいつは、楽しみだな」
強敵と戦えると思い少しにやける司を見て庵は少し微笑み話を続けた。
「レコードホルダーの存在は古い文献に記されてたんだよね。セレスティアルモードの最前線のトッププレイヤー達が見つけた廃都の図書館っていう場所に一冊だけ台座の上に本が置いてあったの。その本を取ろうとして近づいた時にあるページが開かれた、それがこれとこれ」
そういい指を指した先には羊皮紙の紙が映し出されていた。紙の端には所々傷や破れた跡があったが文章自体に支障は無さそうだ。左のページにはこう書かれていた。
【十一種の創世王よ汝らは御のが信じる道の頂点に至る超越者。王を穿つ者汝の為我は開かれる】
「これがレコードホルダーと呼ばれる所以か?」
「そう、最後の文から容易に読み取れるんだけど多分この本は次のページに書かれてる奴を倒さないと次に進めない。」
「ん?次に進めないって何がさ」
「まあまあ、その話は次のを読んだあとね」
【汝虚栄の王よ汝強き信念に敗れ果てる。汝虚栄の心よ真実の愛に包まれるであろう。汝誇り高き美しき花よ蒼断は世界を断ち理をも断つ】
「なるほど、これがその本の内容.....本ってことは他のページもあるんだろ?この感じを見るに他のレコードホルダーについても書かれてそうだけど。」
「多分そうだね。でもね?開けないの」
「....は?」




