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狼よ獲物を見誤り噛み付く先は獅子であった其の四

『まずい、非常にマズイ状況になった。クローウルフを追いかけてみたらこの状況、しかも何十匹もいやがる上に明らかにボスみたいな奴もいるんだよな、あの狼絶対今戦う相手じゃないだろ.....』


【エリートウルフ】

(クローウルフの親玉であり統率に長けている。エリートウルフの指揮下に置かれているクローウルフは戦闘に大きな恩恵が与えられる。指揮下にあるクローウルフの数だけエリートウルフにも戦闘に大きな恩恵が与えられる。)


『見た目は白ベースの毛皮にところどころ赤色の毛の模様が入っている凛々しい狼って感じだな。足に着いてんのはなんだ?枷?みたいな、ファンタジー物とかで見るような厚手の手錠だな。』


「いやー、それにしてもさ、俺のレベル知ってるか??3だぞ?3」


そんなことは知る由もないクローウルフ達はガンマに対して威嚇を続ける。


「一旦レベルが上がった時に貰ったステータスポイントを振って、っとえっと?1レベルごとに5ポイントねはいはい、っとおぉぉぉ?!」


完全に戦闘態勢のモンスターの目の前で呑気にステータスをいじれる訳もなくステータスウィンドウを閉じ武器を脳内操作で武器を取り出す。


「そりゃそうだ、そんな悠長なことしてる暇はねぇーよな!!うぉら!」


飛びかかってくるクローウルフを盾とメイスを使い防ぎ、払い攻撃する。そういったとこを繰り返せば繰り返すほどに理解する。一体一体の性能が跳ね上がっているということを。


『くそ、さっきよりも明らかにつえーな、恐らくあのエリートウルフとかいう奴の効果だな、根本的なステータスもだが統率力が高ぇ、誰かの隙を他の誰かが埋める。たった1フレームのズレだけで殺られかねねーな、しかもこの身のこなし、当たる直前で衝撃を和らげてくる。クリティカルを出すのは俺にとっちゃ大変でもないんだが、』


「火力がたんねーな」


どれだけ攻撃を加えようが四天王形式のように更に次のクローウルフが現れる。しかも1V1という訳でもないため圧倒的に火力が足りない。


「俺の勝ち筋は多分、“あいつ”をやることだけだな。」


ガンマの目線の先にはエリートウルフが石の上に足を折りたたみながら座っていた。


「はっ、戦闘する気はねーみたいだな。子分だけで片が着くと思ってやがる、が。俺はそこらのあまちゃんとは一味も二味もちげーからな?」


今まで以上に目を見開きエリートウルフを戦いながら見下ろす。それでも依然として座り続けるエリートウルフに少し笑みを浮かべた。


「やっぱゲームは楽しまなきゃな!」


噛み付いてきたクローウルフの口に小盾を突っ込み盾を無理やり噛ませる。


「捕まえた、まず1匹!!!!」


噛み付いて離れないクローウルフの脳天目掛けて大振りのメイスを叩きつけた。


「うし、次」


*******

「今のは、」


「団長?どーしたの?」


「ん〜?今空気が揺らいだなって思っただけだよ。」


「えー?何それ、てか空気は揺れてるでしょ!」


「いや、そういう事じゃなくて〜どっかの誰かさんが派手な戦闘を繰り広げてるんだろうな〜って事だよ。見に行ってみる?その派手な戦闘」


「え?!いいのかな、勝手にそういうのって....」


「ははは、別に漁夫ろうって訳じゃないんだしさそれに手助けもするつもりは無い。ただ、」


「ただ?」


「ただ、本物かどうか確認するためだよ。“レコードホルダー”と戦うためには圧倒的なプレイヤースキルがないと話にならないからね〜。」


【レコードホルダー】

(リベリオン・オンラインのメインモンスターでありメインストーリーの中核を成す11体のモンスター。)


「この前言ってたやつ?」


「そ、レコードホルダー。このゲームがリリースされてから早2年、未だに一体も討伐されていない最強のモンスターのことだよ。」


「そんな最強のモンスターと戦うための切り札が今戦ってる人ってこと?」


「そ!だいせいか〜い。ただまぁ、レベルは低すぎるからあげてもらわないとだけどね〜」


「そんなにレベル低いのになんで切り札になるの?」


「さっきも言った通り勝つために必要なのは“プレイヤースキル”。勿論、レベルがカンストしてて悪いことは無いよ?というかカンストしてたら最高だね〜。でも、どれだけレベルをあげようが誰追いつけない程の力を持っているって、とても魅力的じゃない?」


「まあー、そんな力があるなら最強だけど...そんなのないじゃん?」


「だからさっきも言ったでしょ〜?プレイヤースキルだって。急ご、下手したら一瞬で片付いちゃうかも。」


******


「3匹目!!!!」


クローウルフの横顎にメイスによるフルスイングを喰らわせスタンをさせる。スタンにより動けなくなったクローウルフの頭をメイスで攻撃し処理する。この動きを安定させ始めてからかなり楽になっていた。


「おいおい、統率力が上がった上にステータスまで上がってその程度か?!こっちは統率力の究極隊と何年も殺りあってんだ!そんじょそこらの連携が通用するわけねーだろが!」


クローウルフ達は喉を鳴らし威嚇し続けているが初めほどの圧を感じない。クローウルフ達も気がついているのだ自分たちが噛みついた相手が最上位の存在であること、それも自分が忠誠を違う主よりも。


「ビビってんならこっちから行くぞ!!」


自分たちが狩る側ではなく、狩られる側であると、理解してしまった。


「アオーーーーーン!!」


突然エリートウルフが身体を起こし遠吠えをした。その瞬間クローウルフからガンマに対して少しづつ湧き出ていた恐怖心が消え去り狩狼(かりゅうど)として、それは理屈ではなく狩る側としてのプライドをその遠吠えによって蘇らせた。


「おっと、第2フェーズってことでいいんだな」


クローウルフは先程とは別物のような動きでガンマに揺さぶりをかける。中には考える猶予を与えないよう複数体かけて飛びかかり近接戦闘をもちかけてくる(クローウルフ)もいた。


「チッ、なるほど、たいそう立派な連携だな!」


ガンマのメイスを身を呈して受ける盾役もいたりガンマに小盾を使い続けさせるよう立ち回っている者もいる。


「ただまぁ、回復したわけじゃねぇ。今までのダメージは着実に蓄積されているし、プライド頼りの意地と意地をぶつけた連携、だけどな?そういう理論的に組まれていない連携は、」


“リズムを崩すことを1番嫌がる”


ガンマは突然武器をインベントリにしまい素手の状態になった。それは勿論降伏ではない、武器が使えないわけでもない。ただ、ただ一瞬の隙を作るために武器をしまったのだ。


「おいおいお前ら、そこにはもう“お前の噛み付く物はねーよ”」


今までメイスや小盾を使わせ隙を作る役割として動いていたクローウルフは目の前から目標物が消え去り一瞬の困惑。そして何より、そこにはもう何も無いのだ。


「2匹まとめて始末してやんよ!!」


両手共に武器に噛み付いてきたクローウルフ達の頭をつかみ地面に押し込むようにして叩きつけた。


「武器のリーチを完璧に理解した上での最も理屈に沿った陽動の動き、こいつらがいちばん強かったな。」


2匹のクローウルフは地面にめり込まされたのと同時に粒子状になり消えていった。


「こいつらが居なくなったって事はだ。後はただの流れ作業だな。」


エリートウルフはこちらを忌むような目線で睨みつける。


「どんどんかかって来いよ!クローウルフ!まさかビビってるわけじゃねーだろうな!」


ガンマの野次が気に触ったのか今までとは違い怒りが目に現れ始めた。




戦況が変わり始める訳ではない。戦闘において怒りは重要なトリガーにもなりうる、が。実力に明確な差があるものに対しては逆に手玉に取られてしまうだけなのである。


「オラオラどうした!!さっきまでの勢いがねーな!お宅の鉄砲玉はもう弾切れか?!そんなところでふんぞり返ってないでそろそろかかって来いよ!エリートウルフ!」


エリートウルフも先程までの余裕は何処へやら。それもそのはず、数分で片が付くと思っていた相手は武器はボロボロになりつつあるが身体はまるで傷を負っていない。自分の配下達が次々と粒子状に消え始めエリートウルフにも焦りがあるのだ....すると。


「お?ついに来たな?ボス戦!」


戦闘が始まってこのかた遠吠えをあげる程度で動くことのなかったエリートウルフは体を起こし4本足でガンマに向かって少しづつ歩みを進めた。クローウルフの体長は一般的な狼と大差なくただの爪が更に鋭くなった狼といった印象であったが、エリートウルフは人よりもかなりの大きさであった。。


「でけー犬だな、きっちりお前を倒して!素材にしてやるからよ!!行くぜ!」


クローウルフなどには目もくれずエリートウルフに襲いかかった。エリートウルフは飛びかかってくるガンマに対して右前脚によるよる大ぶりの攻撃で迎え撃つ。


「あっぶ、!なるほど、クローウルフ戦は完全に茶番って訳だな。お前も倒して俺は経験値をガッポガッポ稼ぐんだよ!大人しく倒れやがれ!」


ガンマはエリートウルフの攻撃をまともに食らってしまえば即死するということを理解しギリギリのところでメイスを使い攻撃を流した。


「くそっ、ギリギリ流せたとは言えかなり武器にガタがきてる。それにあの枷武器の耐久をビビるほど削ってくる、」


『今俺に出せる最大打点はスタンからのラッシュ、武器が壊れるまではorスタン時間が切れるまでの間ボコせるから最優先はスタンを狙うこと。この武器を使ってきてわかったのはやっぱり顎が1番スタンする。腹とかにもドデカイのが入ってもスタンはするが、やっぱり顎が1番コスパがいい、でもそのためには最も集中しなきゃなんねぇ。』


そんなことを考えている間にもクローウルフはガンマに臆することなく攻撃の手を緩めない。それをできるだけ武器を使わずに躱すガンマ。


『しゃーない、』


『“沈むか”』


メイスを使い全てのクローウルフを弾き大きく距離を取った。すると?ガンマは大きく深呼吸をし目を瞑った。


「ゆらりゆらりと溶けていくように....」


ガンマが何かを呟き始めた。だがそんなことはモンスター達にとってはどうでもいい。今この場で仕留める千載一遇のチャンス。


「この世界に沈んでいくんだ。」


段々と空気が重くなっていくのを感じるエリートウルフ。


「神威は我に宿る、」


ガンマ対して“臆する”ことが無くなったクローウルフはこの空気感に気がつける訳もなく目の前の“無防備な獲物”に対して噛み付きかかる(クローウルフ)や飛びかかる(クローウルフ)。そうして、クローウルフによる狩りは終幕を迎えた。


「君は今」


“世界そのものだ”


ゆっくりと目を開けたその先に映るのは、既に粒子状になったクローウルフの群れとそれを傍観するエリートウルフだけだった。


「ふぅー、」


軽く息を吐く呼吸を整える。全てを飲み込んでしまいそうなその目には光すら薄っすらと照らすことしか出来なかった。


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