狼よ獲物を見誤り噛み付く先は獅子であった其の三
「しっかしまぁ連戦に次ぐ連戦だったな、レベルはどんだけ上がってんのかな、っと..........?」
ステータスウィンドウを出し自分のレベルを確認、確認したのだが。
「えーっと、可笑しいよな?いや、可笑しくないのか?俺が新参者だからこんな反応になってんのか???」
段々と自分が知らないだけで可笑しくないと思い込み始めたが考えれば考えるほど可笑しな話になってくる。
「あれだけ戦って、レベル3ってことあるか???!」
頭の中を空っぽにして考えてみたが、原因は1つしか思い浮かばなかった。
「このゲームモード、経験値にも下降補正がかかってんのな、」
『多分他のゲームだったらあんだけ連戦とかしてれば多分10近くなっててもおかしくない、まぁあのヘビとクソドリをやってたらかなりレベル上がりそうだけど....』
今までの経験と知識から割り出される体感の経験値量を算出する。
「体感4分の1くらいかな?モンスターによってはその制限が無いやつだっていると思うし、モンスター1種族事に経験値が違うのかもな」
否。8分の1である。他にも色んな制限はあるが大体はノーマルモードの8分の1に抑えられている、他のモードでもそうだが戦闘時の被ダメージ量など様々な要素が参照されて戦闘経験値となる。今回はノーダメージに加えてクリティカルも当たり前のように出していたため取得経験値は大幅に増加されていたその結果の4分の1である。
「それに....なるほど、行動によってスキルも貰えたりするのか、今貰ったスキルが【マルチバトル】か、複数のモンスターと戦う時に補正がかかるのか。これはいずれ使うだろうな。んじゃ、始まっちまうな、地獄のスキル集めとレベル上げがよ」
ガンマは案外戦闘狂ではない、とも言い切れないが、作業などの単純作業を好んでするプレイヤーではある。好きな人は好き、だけど向いていない人には蕁麻疹が出るとまで言われている伝説のVRゲーム“アストロン・イーター”を完クリまでやったのだ。
【アストロン・イーター】
初めは地球から始まり様々なアイテムを採掘し次の星に向かうシンプルなゲーム、かと思いきや大間違えである。初めにやることが土を掘ってたまに出てくる鉱石でお金を稼ぎスコップを強化することだ。ちなみに目当てのアイテムは地中のどこかに“ランダム”で埋まっている。
「アストロン・イーターは酷かったな、全部やったけど泣きそうになったわ.....なんだよあれ、最終盤で星の中核に目標物がバグで入り込んで詰んだ時は布団から出てこれなかったわ。もう二度とやりたくない、なんであのゲームのRTAとかあんだよ、頭イカれてんだろ...」
考えているだけでも腹が立ってくるものである。作業は好きだが作業厨にはなりたくない、と言うかなれないと思い知った作品であってメンタルが地の底まで叩きつけられたゲームでもあるのだから。
「思い出しただけでストレス溜まってきたんだけど?これはレベル上げついでに発散させに行くかな!うーし!そうと決まったらモンスター狩りじゃー!っと、その前にか。」
自分の武器に目をやるとあと3度ほど振るうだけで破壊してしまうほどにボロボロになったメイスがあった。
「まずは武器をどうにかしなきゃ始まんねーか。よし!一先ず帰還だ帰還!アイテム売ったらあのスキルブック買えんのかな〜クリティカル出すだけでスタン効果に補正がかかんのは俺にとっちゃ最高峰の代物だからな!」
道中モンスターが襲ってきたりもしたが........全力で逃げた。というか逃げている。1度抵抗したが武器が粉砕して手元には片手に盾を持ったひ弱?な聖職者が一人。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!なんも!なんも持ってねーよ俺!」
必死に走る。盾をしまい腕を全力で振って逃げる。始まりの街に向かって一直線、寄り道などせず何も考えずに走る。跳ぶ。躱す。そんな無力な僧侶が走り続けて数分。
「や、やっと見えてきた!!!!!うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「ん?なんだ?」
「そ、そこのお姉さん!」
「ん、?あぁ!ソロでやってる人!」
身軽な赤色の防具に赤髪のポニーテールで背中に長剣を携えていて今からレベル上げに行くのだろうという装備のお姉さんに大きな声で助けを求めた。
「う、後ろのやつ、どうにかしてくれぇぇぇぇぇ!」
「んぇ?って、はぁー?!ちょ、ちょちょちょちょっと待ってよ!まだ私もレベル低いんだよ?!そんな数!」
「たぁすけてくださぁい!」
「いやぁぁぁぁ!こっち来ないで!」
傍から見ればかなりの量のモンスターを従え街を侵略しようとしている者にしか見えない、が。それしか助かる手立てがないのだから仕方がない。
「仕方ない、このまま街に入ってやるぜ!!」
「い、イカレてんじゃないの?!!!」
「うぉぉぉぉ!」
「ちょ、ちょま!だ、団長〜!!早く来てぇ!」
リーダーと叫んで助けを呼んでいるプレイヤーの後ろでチッチッと弓を引きガンマを狙う男がいた。ガンマもそれに気が付き躊躇うことなく街の門まで翔る。
[月流波]
白銀の光と夜空を彷彿とさせる碧色の光が矢に纏いながら放たれる。とてつもない威力でモンスターは一匹残らず消し飛んでしまった。
「ふぅ、危なかった〜どこの誰か知らないけど、助かった!ありがとう」
「ちょっと!めっちゃ怖かったんですけど?!」
「うっ、それは申し訳ないと思う。」
「まぁまぁ、いいじゃん?被害も何も無かったんだしさ〜」
「そうやって!私団長みたく“レベルカンスト”してないんですよ?!」
「それもそっか、ごめんね」
「あ、あのぉ、」
痴話喧嘩?に割り込ん話し始めた。
「さっきも言ったけどありがとう。俺はガンマって名前でやってる者です。」
「もぉ、怖かったんだからね?!私はテルテラ、みんなからはてらって呼ばれてるのよろしくね」
「俺はペンタゴンって言うんだ〜リーダーとか団長って呼ばれてるんだ〜よろしくね“ガンマ”君?」
黒髪で後ろ髪を三つ編みに編んでいて喋り方がおっとりとしている。防具は初心者に合わせてなのか狩人の初期防具を着ている明らかな高レベルプレイヤー。
『ん、なんか含みがあった気が.....てかペンタゴンって、』
「てかさっきサラッと言ってたけど、“カンスト勢”なのか?あんた」
「ん?そうだよ〜?今はうちのメンバーのレベル上げと攻略を手伝ってんだ〜」
「へぇー、“クラン所属”なんだ!」
「そ!私は団長のクラン“月神”のメンバー!団長とは幼馴染なんだ〜」
「って訳で始めたばっかだからレベル上げのお手伝いでここまで帰ってきたってわけなんだ〜」
「仲良いんだな!」
「ガンマさんは一人でやってるの?」
「その通り。俺はメインの息抜きでやり始めたんだ」
『なんのゲームかは絶対に言わないけど...』
「え、息抜きでやってんだ....」
「え?そうだけど」
「まぁー、このゲームでソロは殆ど存在しないかな?」
『そんな珍しいんだな、ん?、てか存在しないまで行くレベルなの?なんも調べずに始めたからな、後で調べとくか』
「って、こんなことしてる場合じゃねーや、じゃあーな!助かった!2人とも!」
「今度遊ぼうねー!」
「またね〜」
2人に手を振りながら鍛冶屋兼武器屋に直行した。
『んー、あれ本物っぽいな、』
と、一人心の中でつぶやくガンマであった
***
「ほんとに一人でやってたね!」
「ね〜?まぁ、だろうとは思ってたけどさ」
「え、そうなの?」
「始めたての初心者に俺の矢が避けられてたまるか、てか名前隠してなかったし....」
『弓矢の最高火力であるインパクトの瞬間、矢を寸前まで引き付けて薄皮1枚かすらず完璧に回避した、俺が見てきた中で一番の化け物と同一人物。』
「んぇ?有名人?」
「どーだろうね〜、まぁ、とにかく予想通りの本物の化け物だったね」
「んー、必死に逃げてる初心者にしか見えなかったけどなー、」
「まぁ、一人でやってるって言ってたし少なくともあのチュートリアルを一人でクリアしたのは確定だけどね〜」
「あぁ!そっか!え?!あれってひとりで出来んの?!」
「出来るよ?俺も1人だったし」
「えぇ、初耳なんですけど、」
「まぁ、数日掛かったけどね」
「まぁ、団長より強いってことは無いでしょ!なんたってあの“ペンタゴン”だもん!」
「んー、レベル差がすんごい離れてたら、勝てる.....かな?」
「自信なさすぎじゃな〜い?」
「ははっ、」
スタン・アルスフォード。
プレイヤー名 ペンタゴン。
クラン月神の団長を務めて居る。ガンマの相方ルーキー・にぃつと肩を並べるNWOのプロゲーマーである。
『にぃつも始めるのかな始めてくれたら嬉しんだけどな〜戦でしか燃えないこの心に火をつけてくれるんだからさ、』
「現に、少し燃えて来てるんだよね、」
「ん?なんか言った?」
「いーや、なんでもないよ。」
ボソッといつものおっとりとした口調ではなくキリッとした声を発した。
***
「素材の売却完了っと、フッフッフッフッフッ、かなりいいゴールド稼ぎになったぜ、あのスキルブックだって買えるんだけど、流石に武器もなしで買うアホはいないよな、下手したら詰むわ、パーティーメンバーも居ねーしな」
鍛冶屋、と呼ぶよりかは手前で武具の売買を行い店の鉄の扉の奥で武器を作っている。
「えーっと?今の所持金は、」
ガンマ 所持 23890G
「大体24000Gか、なんかいいの有るかな〜っと、」
『うーん高い、初期の街だから期待はしてなかったし仕方ないけど、』
「これ高い初期装備だろ....まぁ〜耐久が上がったのは最高だな!初めなんてこんなもんだろ!」
ガンマはアイアンメイスという至ってシンプルな武器を購入し店を後にした。
「今の有り金じゃスキルブック買えないしな....また森に行ってくっか」
新たなる相棒であるアイアンメイスを携えユグドラシアの森へと向かった。
森に入ってから数十秒の地点にて、
「ん?あいつは、」
それはガンマが一番最初に相手したクローウルフだった。
「よっしゃきた!もう逃がさねーかんな!」
武器もインベントリ内に仕舞い込み腕を降って全力で追いかける。
「ハッハー!狼たる者がそんな逃げてばっかでいいのかよ!」
『あと5m、』
「このまま追いついて素材にしてやるぜー!」
『あと3m、』
「うぉぉぉぉ!」
『あと2m!』
「そこだ!」
武器を取りだし振り被ろうとした瞬間クローウルフは急激な反転をしガンマに噛み付いてきた。
「うぉ!」
ガンマは瞬時にアイアンメイスを盾にして防御をした。
『 こいつ、後ろにも目がついてんのか?それとも、』
「声か!」
『テンション上がってて喋りすぎたけど、モンスターにそんなAIまで積んでんのか、俺の取り出しモーション中に反転しての攻撃とは、』
「はっ!こういうのだよな!戦いは!」
クローウルフを振り払い体制を整えてクローウルフに向き合う。
「仕切り直だ!クローウルフ!」
その声に呼応したのか、はたまた別の理由か。クローウルフは天に向かって遠吠えをあげた。
「気張ってくか!」
クローウルフとの1v1.....という訳には行かなかった。
「.......さっきの遠吠え、」
クローウルフの大群が木の影か草むらの中から続々と出現する。
「仲間呼んでんじゃねーかー!」




