虚栄の心に勇気を届けて其の六
「頼んだぞシグマ!」
『連れて来た者の義務として、私が勝たせる。』
「うぉら!」
長剣とメイスのぶつかるり耳鳴りのような甲高いが戦場に響き渡る。
何度も言うが今戦線が保たれているのは作って貰った装備のお陰だ。花弁は盾で対処、他の攻撃は基本的にメイスで受け流す、ジャストやクリティカルを100%取るのも異次元の技術だがそれも全て装備のおかげだ。今後トゥーシューガンとシグマには頭が上がらない。
「パルスカウンター!」
――ジャストを取った攻撃を一時使用不可にする。CTが極端に長い為一度の戦闘中にCTが上がることは無い、を使い茎の攻撃を凌いだ。
「チッこんな所で使うようなスキルじゃなかったんだけどな.......」
正直ジリ貧だ、ペンタゴンが攻撃の隙を縫って強力な一撃を放ったとしても多少怯む程度、やはりこいつは倒すことの出来ないモンスターであくまでもエーデルワイスの琥珀が鍵を握っていると考えを再認識する必要があるだろう。
『シグマが戻ってくるまで俺が受け続けなきゃなんねぇ、パルスカウンターはかなり奥の手の防御手段だったにも関わらずこんな序盤に吐かされた、レベルがカンストだったら今の何倍も役に立ったろうな......無い物ねだりしても仕方無い、もっと集中する他無いか、』
ガンマは猛攻の中にも関わらず深く息を吐き始めた。それはいずれ肺の空気を全て吐き出し言葉すら発することが出来なかった。そうこれは儀式、己に深く沈み込む為のガンマ特有のルーティン。
息を大きく吸い呼吸を整える。
目の前から飛来してきた花弁を武器を使わず体の動きだけで避けた。
何故そこまで本気になれるのか、ガンマにとってもこの戦い特別な意味を持っていた。何せ今のガンマはあの世界のガンマではない。プレイヤースキルは変わらないが結局のところこれはゲームだ、レベルが及ぼす影響は大きい。それでも俺を誘ってくれたのはシグマが俺を信じてくれているからだからだ、だからヘマなんて出来ない。今はプロではなく1プレイヤーとして全てを使い切るだけだ。
「お?始まったか?」
「.........」
いつも感じていた気配にゆぃつとカゲツが気づく。2人はガンマが持っている特別な意味と同じような物を抱えている、2人もより一層深く沈み込んでいく。
──────────
「カゲツ」
周りへの援護をしながらゆぃつがカゲツに話しかけた。カゲツも動き回って援護しているため悠長に話をしている時間などないが.......
「俺はあっちの援護に行く、ダメージ食らってもいいから全域カバーしろ、頼んだぞ」
「御意」
カゲツはアマリリスが召喚した騎士達に向き直り己の使命を果たすべく大きく踏み込んだ。
『王や団長でもステータスの影響は大きいはず、ここ一帯の援護を俺に一任するということはこのあと起こる事象に対応するため、俺の仕事は無理をしてでもプレイヤーの頭数を減らさず騎士を減らし続けること。』
カゲツは認識を改めた。今戦っているプレイヤー達は仲間ではない、王を守る為に使われる忠実な盾、カゲツは目的のためならば何処までも非情になれるプレイヤーなのだ。
『非情になれ、プレイヤーではなく物として扱い、この戦況を維持する。背中を預けてもらう喜びを噛み締めろ。』
戦場を走り回り戦況の確認、プレイヤー一人が幾つの騎士の対処が可能なのか、頭の中で綺麗に整理し援護する優先順位を確立した。
『ベータ様はダガータイプの軽装近接タイプ、身のこなしから見ても油断した程度で死ぬようなプレイヤーではない、が。』
他のプレイヤーも同じかと問われればそれは否だ。伝令神は情報クラン、戦闘民族とは真反対に位置するプレイヤー達であってカンスト勢だろうがステータスが高いだけに過ぎない人もいた。それに当たり前だが前衛の数が圧倒的に負けている。魔法使いや弓使いを守る為の盾が足りていないように見える。つまり、カゲツは前衛が足りていない穴を埋めるしかない。
「ヘイスト」
苛烈さが増す戦場、あまり使いたくなかった移動スキルを惜しまないことを決めた。低レベルの今ではAGIが足りない、無理やりにでも届く範囲を伸ばす判断だ。
「こんっの!」
無理やり騎士を引き剥がそうとしたことによって体制が崩れてしまったプレイヤーが尻もちを着き今にも騎士に袈裟に斬られそうになっていた。
カゲツは無理やり目の前に割り込み騎士の長剣が加速し切る前の振り上げ動作に盾を押し込み次手を完全封殺し、騎士の左肩から右腰に掛けて斬り下ろした。
「た、助かった、ありがとう。」
「死ぬまで戦ってください。戦線離脱は許されない、俺は援護はできても結局のところ低レベルです、火力は高レベルプレイヤーの皆さんが頼りです。」
そう言い残し別のプレイヤーの援護へと向かった。今の戦闘もそうだがあのプレイヤーが削ってくれていたから一撃で仕留められたに過ぎない。今のカゲツのステータスはVIT HP重視の重戦士ビルド、STRは武器で補る為あまり高くしていない。その代わりAGIをあげている。ガンマの援護となると必然的にAGIが必要になるからだ。結果としてAGIが高めに設定してあるカゲツなら援護の範囲は戦場全域に及ぶだろう。
「わ、わかった!みんなを頼んだ!」
カゲツが助けたプレイヤーも自分が大型クランの幹部である自覚と覚悟を持って挑んでるようだ、とても良い目をしている。武器をしっかりと両手で握り目の前の敵に集中している。
「次」




