虚栄の心に勇気を届けて其の一
「報酬は後でゆっくり見るとして、ひとまず何とか間に合ったな」
「短い付き合いだったけど世話になったなオセロ!お前がいなかったらここまで来れなかった、幸せに生きろよ」
ガンマはオセロ達に背を向け神樹の階段を降り始めた。実際仲良くなってたからかなり寂しい、という気持ちも無くはない。正直ここからテイムイベントとかになってくれても良かったじゃん、とも思っている。こういうのは後になってあのゲシゲシが恋しくなるものだ。
「オセロがいなくなっちゃったらTPも無くなっちゃうからここにも二度と来れなくなるのか?.......てことはこの数日間でここ探索し切らなきゃ行けねぇの?!こうしちゃいられねぇ!とっとと探索に行くぞ!」
「みゃあーー!」
聞きなれた鳴き声がしたと気がして後ろを振り向くと顔面にオセロが張り付いてきた。
「ング!!ンーーー!」
オセロがTPの時と同じように青色に光り始めた。クソ眩しい。数時間寝た後に真っ暗な部屋で付けた明るさMAXのスマホより眩しい。フラッシュで気分が悪くなるって事件はほんとに起きるんだ、ってレベルの光がゼロ距離で浴びせられて悶えるガンマ。プロゲーマーとして数年戦ってきたガンマだが膝を着くのなんて初めてであった。
「目がぁぁぁぁ!オセロ、それ二度とやるなよ........って、お前何してんだよ、折角帰れたんだから親の元に居てやれって、ん?」
───────────────
《召喚術──オセロ》
女神の花園【蟲】のみで使える召喚術。
───────────────
「これがあればオセロを呼び寄せることができるってことは、」
「にゃあ」
「.......また遊びに来てやるよ」
「にゃあ!」
これで心残りも焦る必要もなくなった。オセロをいつでも呼び寄せられるってことはジュマンジュも他のエリアもアマリリス戦が終わったあとに探索すればいい。
「花園でのクエストは完了したし、残った時間は全てレベル上げに費やす!残り4日と少し、目指すは60レベル。寝ずにレベル上げ開始じゃーー!!」
───────────────
4日後
「久しぶりだねガンマ」
「フッフッフ、数日前の俺とは一味も二味も違う。例えばそう、」
「その変な例え言おうとするのやめてくんない?いつもよくわかんないからさ......」
「お?着いてたんだ、にぃつ」
「ここではゆぃつな?」
いつも通りのテンションで話しかけてきたのは爆速でこの街までやってきたにぃつとこのクランの団長であるシグマ・レイブンであった。
「ほとんど変わってねぇじゃねぇか」
「お前はまんまだけどな」
ここは伝令神のクランハウス、前に伝令神の幹部連中と話していた会議室である。会議室には今回の作戦に参加するであろうプレイヤーが集まっていた。中には見覚えのある顔もちらほらとあった。
「お久しぶりです我が君。」
「よっ!大会ぶりだな!カナ」
ガンマに跪きながら話しかけてきたプレイヤー。カナと呼ばれ満足気なその高身長のプレイヤーはガンマの右腕にして最強の援護プレイヤーのKanadeことカゲツであった。
「この世界ではカゲツと名乗っております。」
「じゃーカゲか?よく来てくれたな」
「俺は当たり前なのか?少しは感謝しろ?お前が居なくなってから俺達で回してんだからな?」
「二人とも!頼りにしてる!!」
「その一言だけで私は頑張れそうです。」
「信者を利用するのやめて貰えますか?」
これが不色王の日常風景だ。圧倒的トップの武闘派クランだが大会以外は大体エンタメにフルスロットルなためギャップが凄まじいことになっている。
「イチャイチャはそこら辺にして頂こうか?役者は君で最後だったんだ、話を始めようか。」
───────────────
「我々は今から約3時間後に創世生物の討伐に向かう。ここには私が個人的に招集したプレイヤーに集まってもらっている。私が信頼している者だけを集めたつもりだ。」
情報を扱うクランの団長。情報とは何にも変え難い武器となる。それを振り回せばゲームとしての均衡は崩れ大衆に向けたゲームが一気に作業ゲーとかしてしまってもおかしくは無い。それだけの情報量を管理しているプレイヤーからの信頼それはとても名誉なことであるのと同時に拘束力となっていた。
「創世生物に繋がるシークレットクエストは受注者である私達がシークレットNPCアヤメに紹介することで受注可能となる。伝令神は既に受注は終えている為君達の受注をまずしておきたい。」
「今回の作戦はシグマがリーダーだ。命令には忠実に、それが俺達のモットーだからななんの問題も無い。」
「俺達も従うよ〜?シグマが居なかったらこの場も無かったわけだし」
そういうのはペンタゴンであった。隣には確かテルテラ?という名のプレイヤーを置いていた。
「この前はどうも〜君達のせいで万年2位のペンタゴンで〜す。」
「お前らのおかげで万年1位で〜す」
「今だったら勝てる気がするからPVPしない?」
「お前、ついに卑怯な手に染め始めるのか.....」
「今のレベル差で負けたら引退するわ〜」
はっきり言ってバチバチのライバル関係の2クラン。一位と二位というのはそういう関係になるのも仕方がないだろう。しかし今はいがみ合っている時間ではない。というかお互いリスペクトし合っていてのこの関係性なため特に悪い雰囲気という訳でもなかった。
「この前5位だった私達が惨めに思えてくるからその辺にしてもらおうか、それはさておいてだ。返事はYESということで君達をアヤメの元へ連れて行こうじゃないか。」




