不可侵の絶対領域
「天は二物を与えず?ふざけんじゃねぇって言ってやりてーわ」
〝最速攻略〟そんなことを気軽に言えるゲームではない、たった数分の肉薄でそれを理解するトッププロ。
いつも戦っているシステム、否。それ以上の高性能システムに感心していた。
カゲツはこのゲームに対する理解を更新し、この騎士達への警戒度を対プレイヤー相当まで引き上げた。
『所詮はAI、システムに動かされているだけの人形......かと思ってたんだが、こいつらは人間と同等レベルの知能を持っている、思った以上に手強いな。』
とカゲツは心の中で呟いた。
『Kanadeですらこれか。一人でも問題なく勝てるだろうけど、改めて見るとえぐいAI積んでんな、難易度一つ違うだけで数倍は強い。こりゃ、ソロでやるゲームじゃねーな。』
数多のゲームをプレイしてきたゆぃつですらこの反応だ。
『モンスターの行動パターンが確立されてなく、その時、その状況にあった最適解を導き出して行動している。つまり今この場において必要な行動は、』
「俺も前出るか」
『状況に変化をつけること』
ゆぃつは弓を構えながらカゲツと同じライン、否さらに前へ飛び出した。
カゲツもその行動を理解したのだろう今度はゆぃつがベイトとなり騎士達の背後を取り着実に処理し始めた。
「自由にさせてやる。減らせ」
団長の言葉には行動で返す、それこそが不色王での返事となる。
カゲツはさらにペースを上げ背中を袈裟斬りするのではなく針の穴を通すかの様な甲冑の隙間を次々と通し首をはねていった。
すると。
「ん?」
ゆぃつの真後ろ。つまり入口の真反対側から極大の青白い魔法が飛翔していた。
それをゆぃつは後ろを振り向き確認した。
ステータスは皆平等。いくらトッププロと言えどステータス的にはまだ1レベルの赤子。攻撃を喰らえば一撃で飛ぶようなHPしか保有していない。しかも今回の攻撃に関しては見るからにやばそうな一撃。ゆぃつはこれに思考を巡らせた。
『食らったら死ぬよな。これが追尾型だったらカゲツに張ってもらうのが正解だけど今回は、』
「避ける一択」
後ろ向きに跳んでいたが即座に床に足をつけゆぃつから見て右側の本棚へと退避した。
カゲツは騎士達を巻き込むように騎士達の位置を調整して避けた。
騎士達は床材と共に吹き飛びそのまま粒子状になって消えていった。
騎士が一掃され奥が良く見えるようになった。そこには他とは雰囲気からして違う魔法使いがいた。
先の曲がった布製の帽子にローブを身にまとった魔法使い。手には身の丈以上の大きさをした杖を持っていた。
「あれがボスかな?」
「ですね。他とは明らかに違います」
「カゲツはこのまま終わると思う?」
「魔法というコンセプトに沿っているのであればあの騎士達も魔法で作られた人形でしょう。」
「だろうな、てことは?」
「魔法の使用に制限がないと仮定すれば、無限湧きと考えていいかと。」
「だな。ということで、動物園連れてってやるから突っ込んでこーい」
「言質、頂きました。」
カゲツはゆぃつの言う通りボスの元へと駆け始めた。武器すら取り出さずに全力でその魔法使いへと向かった。
だがそれを阻むように先程よりも多い数の騎士を召喚した。床や本棚、空中に魔法陣が書かれそこから騎士が続々と湧き続ける。
が、カゲツはお構い無しに騎士達を踏み越えて行った。武器は使わずとも体を上手く使い何者も近寄らせなかった。
魔法使いもこれには少し焦りカゲツを囲むように360度囲むように魔法陣を展開させ騎士を召喚した。その間モブの方の魔法使いから細めの青白い魔法が飛んできたりもしたがそれはゆぃつが矢で的確に撃ち落としながら倒していた。
魔法陣に囲まれたカゲツはここで武器を取り出した。360度騎士に囲まれているカゲツだがこれを難無く引き剥がしまたもや武器を仕舞い走り出した。
「本当に、特攻させると最強だな」
カゲツことKanadeが最強の援護プレイヤーである所以。
それは〝圧倒的なまでのエリア保持性能〟にあった。
恵まれた体格を駆使し迫り来るプレイヤーを近寄らせない。一見地味な力だがこれはガンマの様な力を持つプレイヤーにとっては最高の能力に変わる。
どんな状況になろうとも安置が一つある。それだけで圧倒的なまでのプレイヤースキルにさらにプラスして安定感の底上げを実現したのだ。
そんなプレイヤー相手にモンスター如きがエリアの奪取など叶うはずもなく、カゲツの特攻を未だに防げずにいた。
焦った魔法使いは足の踏み場すら与えないような数の騎士を召喚した。モブの魔法使いも大量に召喚しだし本格的にカゲツを叩き潰そうとし始めたのだが、
「?!」
射撃戦の主導権は既に移っている。
魔法の発動前、または発動直後に杖ごと射抜かれていた。
ゆぃつは弓矢を引くのと同時に矢を捻り始めた。
「これは現実じゃなくて仮想だ、なんだってできるのがいい所だろ?......良い子は真似しないでね。」
捻り放った矢は高速に回転しながらまるでドリルの様に魔法使いへと向かった。
魔法使いは障壁を展開しその矢をギリギリのところで防いだ。
魔法使いにとって確かにゆぃつは警戒すべき対象なのだが、今はそれどころではない。
騎士が全ての兵を薙ぎ倒して目の前まで迫ってきていた。
魔法使いは不意に一歩下がってしまい自分は今恐れているということを自覚してしまった。
「内の重戦車に恐慄いたかー?ただ、そいつより俺の方が強いよ?」
ゆぃつは捻り放った矢と同位置に矢を命中させた。今刺さった矢が裂かれる様に同位置に命中した。それも何度も。寸分のブレもなく刺さった矢を放った矢が上書きするかのように。
バキン!!
障壁が割れるように砕け散った。
魔法使いは砕かれる障壁に意識を割いてしまった。
それに気が付き正面に目をやると剣先が眼前に迫っていた。
魔法使いは咄嗟に魔法で騎士達を束ね盾にした。
カゲツはその束になった騎士を袈裟に切り下ろした。
魔法使いは遂にカゲツの猛攻を凌いだ、と思ったが、
「スイッチ」
その言葉と同時にカゲツ後ろからゆぃつが飛び出してきたのだ。
ゆぃつは魔法使いの両肩を足場にし弓を最大まで引き絞った。
「これでお開きだな」
ゼロ距離から放たれたゆぃつの矢は魔法使いの頭を貫き粒子状に変えた。
「うし、こっからが本番だからな?数時間走り続けるぞ」
「とっとと追い着きましょう。」




