か弱き命に導かれて其の九
「爆速で片付けて俺は空島に行く!!数分で叩き潰してやんよ!デカ石三兄弟!!」
ガンマは目下の障害ゴーレム三兄弟を攻略することができるのか。
「スキル───ヘイスト!」
自身のステータスAGIに補正をかけた。
地面を蹴る度に加速して行きゴーレム三兄弟に向かって迷わず突っ込んで行った。
「でかいヤツとの戦い方は嫌という程やってんだ!定石通り足を貰っていく!」
標的は三体の中でも最も前のめりになっている───巨岩の重化身だ。見上げるほどに大きいゴーレムだがこういった鈍重なモンスターは足元がお留守になることが多い。
それを今までの経験から理解し挨拶がわりに検証も含めて飛び込んだ。
「うぉら!」
ヘイストの加速に体重を乗せその勢いのまま巨岩の重化身の左足へメイスによる突きをお見舞いした。
確かに強力な一撃ではあるがその一撃は巨岩の重化身の足を少し削る程度に治まった。
「チッ、さすがに歯が立たねーか、」
これは予想通りである。リソースもほとんど使わずやつの防御力を測ることができた。それだけでもファーストインパクトの成果としては上出来だろう。
見た目通りの硬さ。巨岩の重化身だけでも手こずりそうなものだがこれと同等レベルのモンスターが追加で2体居る。それにここから更に増えてしまうということも可能性としては十分有り得るだろう。
「とっとと女神像に触らせろ!門番三体衆!」
ゴツゴツとした岩が擦れる音が響き一歩歩みを進め始めた。それに続くように〝地上にあるような岩〟ではなく〝深層岩のような〟さらに硬く重々しい音と木が軋むような音を響かせ一歩踏み出してきた。
巨岩の重化身が埃を巻き上げながらアームハンマーのように巨大な右腕を振り上げガンマ目掛けて振り下ろされた。轟音と共に土や砂埃が風圧に押し出さガンマの視界を酷く奪う。それはまるで〝簡易的な飛び道具〟としてガンマのHPを少しづつ減らして行った。
「くっ、瞬間的とは言えスリップダメージは相当ダルいな。HPが低めの俺にとってたった1ダメージだとしてもいずれ削り切られる。」
敵の防御力を考慮し長期戦を見据えての立ち回りを思考していたが、これは考えを改める必要がありそうだ。
ゲームにおいて最も嫌われるものを知っているだろうか。それは〝高耐久〟〝スリップダメージ〟だ。ここに回復が加わるとさらに酷いことになる。時間制限があればこれだけで勝つことだってあるだろう。
特にこの手の戦術〝ガンマメタ〟として有名だ。低体力高速アタッカーにとってガチガチに固められたプレイヤーを崩すことはそれなりに難しい。更にそこに毒などが付与されると無理に攻めずらくなる。そういったプレイヤーに対しては隙を縫って瞬殺するかKanadeに叩き潰してもらっていた為明確なアンチモンスターであるのは変わりはなかった。
攻めずらそうにするガンマだがこんなことで日和るタマじゃない。即座に次手を組み立て始める。
ガンマの考えの根幹にあるのは「とりあえず一体減らす」だ。超耐久のモンスター三体によるサイクル戦になってしまえば──土·砂埃ブリザード~のみでポーションを全て消費させられそのまま削り倒されてしまうだろう。そのためにも現状ほんの少しだが情報が開示されている上に実害の出ている巨岩の重化身の討伐を最優先として考え始めた。
『正直ほかの二体の情報が欲しいところだけど、贅沢は言ってられねーんだよな、削り合いじゃまず勝ち目がない、となれば瞬間火力で一体持ってく方が後を考えれば安心できる。』
そんな事を考えている間にも重化身達の攻撃は止まない。
厳密に言えば巨岩の重化身が交戦に出て他の二体がサポートに徹していた。
思考しながらも重化身達の攻撃を躱しながら致命的な一撃を入れるチャンスを伺っていた。が?
「くっそ、隙がねぇ!」
巨岩の重化身の攻撃は大胆で〝破壊力〟に重きを置いており、隙を晒すことなどお構い無しの捨て身っぷりで、この攻めの姿勢は本来なら攻撃の隙を咎めらて痛手を負ってしまうだろう。だが、ここで活きてくるのが他二体の重化身だ。
英霊の重化身は近付けさせないように風属性の魔法を使い牽制。それに加えてその魔法を纏った拳にはノックバック効果が付与されており迂闊に反撃所か近付くことすら許されていなかった。
方や鉱石の重化身は時折生じる綻びのカバーに入っていた。〝英霊の重化身〟の牽制は有効とはいえ、ガンマが反撃に出れないなど有り得なく、牽制を掻い潜った先で巨岩の重化身の攻撃の隙を狩ろうとしていたが、そこで活きるてくるのが鉱石の重化身だった。〝鉱石の重化身〟が地面を踏みしめるとクリスタルのような棘が地面から突き刺してきてガンマを襲い始める。そのクリスタルは攻撃を受け止めるという面においても優秀でメイスによる打撃も弾いていた。
『 一見その重量を生かした破壊力と岩特有の防御力が売りに見えるが本質はこのカバー力。レベルが低いとはいえ俺を牽制し続けるとは、チームプレイ専用AIでここまで厄介に出来んのかよ、難易度調整ミスってんだろ!』
心の中で状況の整理をしてゲーム難易度に少しキレながらもこの高性能AI技術には正直脱帽だった。色んなフルダイブ型VRゲームをやってきたがここまでの高性能AIは珍しい。というかバグが無いという時点で正直意味がわからない。これだけ優れたゲームがあるということを最近まで知らなかったことが非常に恥ずかしい限りだ。
「っと、言ってもだ。見えてきたぜ?勝ち筋!反撃開始だ」
「グオングオングオングオン!!」
巨岩の重化身が声を上げるのと同時に左腕のストレートがガンマを襲う。
「おっと!それはもう見切ってんだよ!」
それをジャンプで躱し左腕の上を駆け上がり始めた。
『今までは懐に入ることに固執していたが、やっていて気づいたことがある。こいつらはFFを気にしている!つまり!』
「友達の腕はもげねーよな!!」
二体とも動こうとしているが本能がそれを制止する。
「こんな単純なことだとはな!ありがたく叩き壊してやるよ!」
ガンマはスキル
──ヘイスト
──ガードブレイカー
──ビルドアップ
を同時がけし始めた。
「俺の持てる最大火力!そのオレンジ色の宝石!叩き壊してやるよ!!」
ガンマが巨岩の重化身の頭上に飛び上がった。ガンマが離れたことによって他二体がカバーに入ろうとするが、時既に遅し。トドメの一撃は最も集中しなければいけない時、ガンマがその期を逃すはずがない。
「砕け散れ!冥府の魂撃!!」
とてつもない勢いで巨岩の重化身の頭にメイスが叩きつけられた。額にあったオレンジ色の宝石ごと頭が砕け散り巨岩の重化身が撃破された..............と思っていたら。
「うし、まず一体.......?」
キュイーーーーーーーン!!!!
「え?」
激しい光が巨岩の重化身の亡骸から放たれ始めた。
「おいおいおい!!嘘だろ?!!!」
咄嗟に頭があった位置から飛び降り離れようとしたが、これもまた時既に遅し。巨岩の重化身の最後の足掻きがやり返しの形で他のゴーレムとガンマを巻き込みながら爆ぜた。
【リスポーンしますか?】
YES NO
「................やってくれたな???石ころ野郎がァァァァ!!!!!!」
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「よし。とっとと追いつくぞ?カゲツ」
「とっとと蹴散らして王に追いつきましょう」
「今日中に追いついて、レベル上げはそっからだ。」
「とりあえず一番でかいランドマークに行けば良いっすかね?」
「その方針でいい。いつも通り前は頼んだよ?」
「御意」




