か弱き命に導かれて其の一
前回のあらすじ
雷の如く速度で飛翔するカブトムシでレベル上げをしていた先に見えたのはなんと女神の石像だった!女神像から託された女神の心を集めるためにガンマは森の中へと切り込んだ。
丘の上から見た時の感想は陽の光も差し込めない程の密度の森、だったがかなり勘違いだったようだ。陽の光は森の中を照らすように差し込み全体的に神秘的な雰囲気を醸し出している。
「さっきの草原といいこの森といい、ここに来れば心の底から浄化される気分になるな。モンスターの気配は.....無いか、」
このままモンスターが現れないなんてことは無いだろうが、レベル上げという観点からしたらかなりマイナスであるのは間違いないな。
「これだったらあの雷カブト狩りしてた方がレベル上げにはなるんだけど、」
俺は森の中を着々とマッピングをしていき既に2割ほどマッピングを進めていた。このまま何も無いまま女神の心を集めて終わりとかであって欲しくない。
この状況、考えられるパターンは3つ。
1つ目 ── 単純にチュートリアル的な場所で宝探し感覚のエリア。
2つ目 ── プレイヤーを疲れさせるためだけに作られた滅茶苦茶広い森。ダンジョンの第一階層二階層みたいなやつ?
3つ目 ── バカ強いやつが狩り尽くした。
現状考えられるのはこの3つだろう。単純な思考だがあまり深く考えてもあまり意味の無いことだろう。
「レベル上げって観点からしたら激マズだが、クエスト報酬は絶対に欲しいからな!サクッとマッピングも済ませて空へ向かう!」
マッピングを開始して3割程度。あるとんでもない光景を目にすることになった。
「な、なんだこれ.....」
何かにへし折られた様に倒れ込む木々の数々まるで何か強大な力が木々ごと吹き飛ばした様な、そんな跡が残っていた。そこだけ葉を介してではなく直接光が差し込みぽっかりと森が抜けたようになっていた。
マッピングをするだけの攻略なんぞ何も面白くない。どんな装備がドロップするのか、どんなエリアが広がってるのか.....全部大切だけどやっぱり攻略の醍醐味といえば。
「強敵相手に苦戦する!それも楽しみの一つだろ!」
新たな出会いを求めてガンマは森の奥に更に足を歩み始めた。
再び歩き始めてから僅か数分の事。
「ん?なんだ?今の声」
さっきまで葉擦れや枝が擦れる音しかしていなかった森の中に微かに響くか弱い鳴き声。その声の主がいるのはここより少し進んだ先、辿り着くににはまだ数分かかってしまうが、その間にこの声が消えないことを願うことしか出来なかった。
「今にも消えてしまいそうなか細い声、俺が着くまで持ってくれよ」
俺は必死に走るしかできなかった。今自分に出来ることは最速でその声の元へ行くこと。もしこれが賢いモンスターが仕組んだトラップだとしたら素直に腹が立つ.......が。あんなか細い声を聞いてしまって無視できるはずもないだろ.....騙されたっていいという気持ちを胸に声の元へと駆けつけた。そこに居たのは......
「なんだ?こいつ、」
そこに居たのは小さくて可愛い子猫だった。
「まさかこの森で初めて会うモンスターが子猫だとは........流石に切れん。ていうかほんとにモンスターか?フレーバーテキストがでねーってことはただの猫の説も.....」
何にせよこんなか弱い子を1人しておけないので安全な場所まで連れていくことにした。首根っこを掴み頭の上に乗せると案外素直で滅茶苦茶可愛かった。このままお持ち帰りしたいところだが、そうもいかない。
「お前1人なのか〜?親は?友達は?」
子猫はガンマの頭の上でぐでっとなりつつもガンマの頭を何処か行きたい方向に向かせようとしてきた。
「お、おぉ。お前結構力あるな、なんだ?こっちになんかあるのか?」
子猫が指定した方角に進んでいくとそこにはこの森の中では最大のサイズであろう巨大な木を見つけた。木の幹には何やら隙間があるようでそこからひょっこり顔を出してきたのがこれまた小さなリスだった。
「今度はリス?モンスターって訳ではねーのか。ってかこんなところがあったんだな、丘の上から見た時はこんなところにこんなでかい木なんて無かったのに......これも空島と同じ理由か?」
恐らくだが魔法が掛けられてたんだ。この女神の加護には隠蔽魔法の看破が付いてるのか?もし本当にそうだったらここを知られた瞬間アサシンの価値が大下落するに違いない。アサシン系は透明化やAGIの高さを生かし*フランカーとして後衛潰しだったり妨害したりヘイトを稼いだりとかなり優秀なんだが、結局は透明化が生命線でもあるからな。それが効かないとなればこの情報は死んでも漏らせない。
「それはさておき、この木の中に行けってことか?」
子猫はその言葉を肯定するかのように小さな前足でガンマの頭を優しく叩き始めた。
「わかったわかった。許可を貰ったってことで、」
ひょっこりとこちらを見ているリスはガンマに敵意が無いことがわかっているのか、こちらに駆け寄ってきて足元にピッタリと着いてきた、と思ったら1匹だけじゃなく続々と小動物が木の中から出てきてガンマを迎え入れてくれた。
「お前ら〜俺が敵だったらどうすんだ?」
敵じゃないと確信しているのだろう肩に昇ってくる子や脚にしがみついてくる子までいる。小動物ってこともあるがステータスのおかげかしがみつかれても動きずらさとかをあまり感じない。その子達に導かれるまま木の中に入ってみるとそこには今着いてきた子達よりもはるかに多い動物達の群れが住んでいた。
隠しエリア ──動物たちの唯一の憩い
「唯一の憩いか、ってことはだ、ここは天敵から身を守るためのシェルターって訳か?隠しエリア内の隠しエリア。なにかねー方が不自然だな。」
小動物たちと触れ合う大きなくまや小さな池から水を飲む鹿など小動物以外にも色んな動物が住んでいた。動物達は皆温厚で突然やってきたプレイヤーにも動じることなく迎え入れてくれた。
「動物好きにとっての天国!色んな生物と触れ合える!とんでも空間じゃねぇか!」
ガンマも動物は人並に好きなためこの空間はかなり幸せだった。
「あいつにだけは絶対に連れてこないようにしよう......情報も落とさないようにしないとな......」
あいつとはガンマのチームメンバーであるKanadeのことだ。重度の動物狂いでもふもふを求めて不色王の幹部まで登り詰めてしまった化け物。私利私欲を叶えるためにイカれたレベルで強くなり私欲の為に不色王に入ったというとんでもないやつだ。奴にここの情報を渡してしまえばアマリリスやコスモまで蹴散らし兼ねない、
「うん、絶対にダメだな」
そんなどうでもいいことを考えていると頭の上に乗っていた子猫が飛び降りガンマを見上げるように見つめ始めた。黒と白の体を持つその子にはなにか不思議な力があるのだろうか、さっきまでは無かったが子猫とは思えないほどに強い気配がする。
「お?今度はなんだ〜?そんな見つめても何も出ねーぞ?」
ガンマは子猫の目の前で屈んで頭を撫でようとした。するとそれを阻止するかのようにフレーバーテキストが現れた。
「.....俺がなにか出すんじゃなくて、お前が俺に出すのかよ」
クエスト ── 迷子のお届け
クエスト ── 白き猛邪を穿て
前回のあらすじを書くことにした!これからもよろしく〜




