心を集めて
「ライトニングビートルの経験値効率はかなりいいな、15匹くらい狩れば1つは上がる。そんで正直レベルより重要なのがこの角!強敵と戦うことを想定すると遠距離攻撃が欲しいからな、これで矢でも槍でもなんだって作ってやるぜ」
ここ、隠しエリア女神の花園【蟲】は伝令神にしては珍しく情報を公開していないエリアらしい。だから広めるのは勘弁して欲しい......とベータから連絡が入っていた。
「確かにどこにも教えたくないわな。序盤のモンスターですら使えそうな素材を落とすんだからな。他に流すにしてもそれ相応の対価がねーと損するだけだからな」
新たなエリアに見たことの無いモンスター、言うならば宝探し。この先何が起きるか想像がつかない、それがゲームの醍醐味の一つであろう。
「このまま草原エリアを制覇していくか!バラバラに埋めてくより区画ごとの方がやり易いだろうしな」
言葉通り草原の散策を継続し始めたが、辺りを見渡しても特に何も無くただの草原だった。モンスターの気配も特にない。なんならただの牛や鶏が歩いてるくらいにはのどかだ。ピクニックに来たの?と言われればなんの反論もできないであろう。
「何しに来たか忘れそうになるな.....ん?なんだあれ」
動物が伸び伸びと暮らしている平原。かなり遠目ではあるが、そんな平原黄昏ている俺の目に映るのは湖のど真ん中に立っている石像だった。
「あれは.......はて、どっかで見た気が......」
俺は石像の正体を知るべく湖までやってきた。かなり近くまで来たが、思い出せそうで思い出せない。こうなれば触れれるくらい近づいちまえ!という結論に至り湖の中に飛び込んだ。
「噴水の時はあんまり感じなかったけど....気持ち悪いな、リアルすぎだろ。なんだろうな、まじで着衣水泳の気分だわ」
子供の頃は楽しかった着衣水泳。大人になってくると気づき始める面倒くささと気持ち悪さ、それがリアルに再現されていた。なんなら浸かった瞬間に【水浴び】というエフェクトが付いていた。勿論デバフだ。
「行動制限かよ、なるほど。このゲームは自然にもバフデバフがあんのな。もう水には近づきたくねーな」
行動制限、つまり移動関連のスキルやステータスに下降補正とかがかかると言うこと。レベルが低い現状+行動制限=死。という方程式が容易に成り立つだろう。そんな【水浴び】になっているが、腰ほどの深さまでしか無かった湖の中を歩き目的である石像に辿り着いた。
「これって、入口にあった石像か?」
そこにあったのは入口に彫刻されていた女神の像だった。サイズはかなり縮小されているが何やら妙な力を感じる。
「かなり小さくなったが、妙に惹かれるな」
俺は気になり石像に触れてみた。するとウィンドウが目の前に現れてクエストを表示してきた。
クエスト── 散った女神の心
クリア条件── 離れ離れになってしまった女神の心を5つ集める。
集めた女神の心 1/5
「クエスト、そういやこの世界に来てからほとんどやってなかったな。まぁとんでもないの持ってはいるけど......」
今まで受けてきたクエストは錬鉱のメイスを作った時とシークレットクエスト【あの日の夜を君に】のみである。
「アマリリスの件は一旦置いといても、これで3つ目のクエストか、なんかレアそうだしテンション上がるな!無論、受けるだろ」
クエストを承諾すると女神像から何やら緑色の光が湧き出てきた。その光はガンマを包み込むように覆ってきた。ただ不思議と悪い気はしないし、寧ろ安心感があった。
「なんだ?これ」
ガンマに吸収されるかのように光が消えた。周囲を見渡してもなんの変わりもない、が。
俺の体には多少なりとも違和感を感じた。多少だが明らかな違い、
「少し軽いか?」
その違いはステータスを見れば一目瞭然で、バフが新しく追加されている
女神の加護 ── 1/5
「女神の加護か、ほとんど気づけねーくらいの補助的役割の永続バフ.....なるほどな?良いもんあげるんだからしっかり働けってことな?了解了解」
確かに一般プレイヤーがこれを貰っても感じることは殆ど無いだろう。5つ全て集めた後に実感できるくらいのバフなんだろうが、俺はそうじゃない。寸分の一秒が運命を分ける状況に常に置かれていたからこそこの永続バフはなんとしてでも手にしなければならない、そう感じていた。
「俺のメインウェポンが完成するまでの間に済ましてやるよ」
手始めに爆速で草原を駆け回り何も無いか入念にチェックし始めた。女神の加護レベル1の影響力のテストも兼ねているが、単純に時短するためだろう。
「うぉぉぉぉぉお!どけ牛ぃ!」
モォォォォォオと声を上げて轢き倒されてしまったが1つ気がついてしまった.........
「え?レベルアップ??」
めちゃくちゃ経験値が美味いことに。
「牛狩りじゃあ!!」
爆速マッピングランニングに追加で爆速通り魔辻斬り編ver.牛も始まってしまった。鳥や豚も倒してみたがお肉とかが落ちるくらいで経験値は殆ど手に入らなかった、ということは必然的に。
「牛ぃ!そこかぁ!」
こうなる。体力もさほど多くない、というかモンスターじゃないのだから当たり前だ。偶にレアそうな牛も居たがそいつは通常個体よりも更に経験値を落とすらしい。無論対象牛だ。
走り回ること数十分
「この草原かなり広かったな、途中ライトニングビートルの雨が降ってきた時は死を覚悟したが、何とか埋め終えたな。」
これで次に進める。草原には何も無いということが判明した、それだけでも十分な成果だろう。
「女神像は無し、となれば。残りは予想通りか?」
俺の予想はこうだ。残り4つの配分は森の中と崖の上そして、雲の上。女神バフを貰ってから見えるようになったんだが、空に島が浮かんでいた。おそらく魔法かなんかで隠蔽されていたんだろう。
「どうやって行くのかは皆目見当もつかない、が。進めて行けば何とかなるだろ。まずは目の前の森を突き進むことだけを考える!」
陽の光が差し込み緑鮮やかに輝く森に俺は足を踏み入れた。




