推しの私物何物にも代え難し
「集めるのは俺じゃない。」
明らかに何かを企んでいる悪魔の顔。目の奥に浮かぶのは邪悪そのもの。使える者はなんでも使う。
「いるじゃあ〜ないか。協力してくれるトッププレイヤーが。」
「はぁ?何を言って..........ガンマ、お前まさか........」
1人だけ置いていかれているベータ。2人に追いつくために必死に思考していると、ある一つの選択肢を見つけてしまった。
「あっ、え?嘘でしょ???」
「俺に協力してくれるって言ったんだ、勿論覚悟はしてんだろうな?お前らの親玉はよ」
使える者。そんなの決まっている。シグマ・レイブンだ。
「いよーーーっし!早速シグマに集りに行ってくるわ!」
「げ、外道だ.......」
ガンマは勢いよく鍛冶場から飛び出し団長の居る部屋へと走っていった。実はさっきここに来る途中に教えて貰っていたのだ。
「私に用がある時はここに来るいい。大体この部屋で作業をしているから。何時来てくれても構わない。」
優しさというものは漬け込むためにあるものだ。ゲーム内の一色 司はそう考えていた。
「ハッハッハーー!!外道だろうが邪道だろうが国道だろうが知った事かぁ!! 俺は俺の道を走ってやるぜ!!」
廊下を走りシグマの居る部屋に無作法に突撃した。
「たのもー!!」
「どうかしたかい?武具の制作の話し合いがそう簡単に終わるとも考えづらいが....」
寸分も驚くことなく淡々と状況を整理し始めるシグマに向かってとんでもない要求を押し付けた。
「いやぁ〜シグマさんに少々お願いがごさいましてぇ〜」
「嫌な予感しかしないが......言ってみてくれ。」
何かを感じとったのだろう。目の前の胡散臭いプレイヤーからは明らかに不穏な気配しかしない。
「協力してくれるんでしょ?」
ニコニコでそんなことを言うガンマ。机にある物が差し出された。それは羊皮紙でそこにはハイレートな素材ばかり記されていた。
「.......これが、どうしたんだい、?」
「ください?」
「.....................まじか」
聡明な印象からはかけ離れた一言。まじかが出てしまうほどにイカれた要求。安上がりで済んだ?前言撤回。金より面倒臭いものを要求された。
「勿論!タダでとは言わない!!協力してもらうとはいえそこまですがる訳にもいかない。そこである物を贈呈すると約束しよう!」
「そのある物とは?物によってはこの素材は私が出そう。」
持っていること自体凄いのだが、そんなことはどうでもいい。ガンマがシグマに渡せる唯一の物、それは。
「あっちの世界の俺の元メイン武器をやるよ。お下がりになるけどな」
「乗った」
即答。それもそのはずプロが使ってた武器や防具は時折オークションなどに出品されることもあるがガンマは一度も世に出していない。つまり真の一点物ということになる。シグマは今までの考えをまたまた撤回し結果的にはシグマの大プラスになったのだ。
「約束は必ず守るからよ。今度あっちの世界でも遊ぼうぜ!」
表には出さないが震えるほど嬉しい物と言葉を受け取ってしまった。
「あぁ。楽しみにしているよ。」
シグマは記された素材を全て譲渡し、ガンマの背中を見送った。声の届く範囲に人が居ないことを確認してから珍しく大きな声で叫んだシグマであった。
──
───
────
─────
「こ、これは.......」
「そんじゃ!作ってもらおうか?最高の武器を!」
「.........お前、本当に集ってきたのか?」
「対価は渡したからなWinWinってもんだ」
「これらの対価って........命とかか?」
「そこまで重くねーよ......」
「じゃ〜何渡したの〜?」
「あっちの世界での元メイン武器」
「うわぁ、えげつな」
「そりゃあ許可するか、」
これは二人の取引、この二人には関係ない。お互いより良い利益を受け取ったまでだ。
「それで?出来るんだろ?」
「当たり前だろ?我に任せておけ。」
「いつ頃出来そうだ?」
「こんだけの作業だ。5日で終わらす。決戦の日には間に合わせるから安心しろ」
「それじゃぁ俺は5日間レベル上げだな。攻略は暫し休憩だ。いお....ベータ手伝え」
「口滑らせたらご飯抜きね」
「肝に銘じときます....」
「じゃ〜ここ行きな」
そういいベータはとあるマップ情報とメモを渡してきた。
「ここは?」
「経験値が美味しい隠しエリアだよ。いくらレベルあっても足りないとはいえギリギリまでレベル上げしてもらわないとね?」
「おぉぉ!こいつは助かる!じゃー早速!!.......あ」
「ん?どうしたの?」
既に一歩鍛冶場の外に出てたが最も重要なことを思い出し踏みとどまった。
「トゥーシューガァン......」
「なんだ。我は既に忙しいのだが?」
「いや〜その、なんだ。当初の目的を忘れてたって言うか.....俺、武器1本もねーから来たんだったわ」
なんなら1番大切な要件を忘れていたことにトゥーシューガァンとベータは少々呆れている様子だが、仕方ないだろう。いきなり創世生物の攻略に協力しろだのどんな武器でも作ってやるだのシグマに会うだの.....色々濃すぎる1日だったのだから。
「まぁ内容的にも濃かったからな、仕方ないっちゃ仕方ないな。メイスと小盾だろ?適当に持ってっていいぞ」
「あと防具もです.......」
申し訳なさそうに申し出るとベータが武器と防具を見繕ってくれた。
「はい。料金は団長持ちだからちょっと高いのにしといた。武器の必要ステータスにも足りるように防具見繕ったからこれで大丈夫なはず」
渡された武具を装備してみると違和感もなくかなり動きやすいかった。流石は妹、兄がどんな装備を好むのか熟知しているようだった。
「このフィット感.....かなり良い!さすがベータ!頼りになるぜ!」
「フフ〜ン何年の付き合いだと?それにしても打撃武器とか初めてじゃない?どうして急に?」
「何となく」
「そんなことだと思ったけど......」
ガンマは装備の感覚を掴むために少々体を動かしてみたり可動域の確認も慎重に行った。やはりかなり馴染んでいたためいつも通りのプレイが出来ると踏んでいた。
「んじゃ早速向かってみるわ。ベータもトゥーシューガァンもありがとう!頼んだ!」
ガンマが足早鍛冶場を飛び出した。
「決戦は現実世界で6日後!分かった?!」
前を向きながら背後にいるベータに手を振り伝令神クランハウスから外に出た。




