無茶振りはトップに押し付ければ解決
「我の名前はトゥーシューガァンだ!よろしく頼むガンマ」
「こちらこそ、よろしく頼むよ。最高の装備を仕立てて貰うからな?覚悟しとけ!」
「受けて立とう」
トゥーシューガァンはかなり気さくなやつだった。誰にでも分け隔てなく話せて誰に対しても平等なタイプ。ガンマがかなりやり易いタイプだった。
ガンマ達はシグマに着いていくように鍛冶場へと向かった。トゥーシューガァンの装備をよく見てみると腰に金槌や手袋が下がっていた。少しすす汚れていて一目で職人のそれと判断できる代物だった。
「ここが私達の鍛冶場だよ。」
部屋に入るとパッと明るくなり、辺りを見渡してみると石造りの部屋に炉や金床、これまでに作ってきたであろう武器や防具の数々が飾ってあった。アーマースタンドに飾ってある武器や防具を見るだけで作った人の技量が信用に値すると直感できる。それほどまでに精巧な出来だった。
「さぞ、優れた鍛冶師が使ってるんだな.....」
「あとは頼んだよ?トゥーシューガァン。」
シグマはトゥーシューガァンを信用しているようだ、後のことは全て預け鍛冶場を後にした。トゥーシューガァンはこの時を待っていたと言わんばかりの顔をしてガンマに向き直った。
「我が君の命令だ。ガンマさんの期待には全て答えよう!この最上位鍛冶師トゥーシューガァンがな!」
トゥーシューガァンが腕を組みながらガンマに真剣な眼差しを向けた。その目からはワクワクが伺える。
「そりゃ頼もしいな!金の心配ないんだったらよぉ.......遠慮なんてしねーからな??」
「安心したまえ、ウチのクランは金持ちだ。最近大金を支払いまくったが。まだまだ潤沢だ。それとウチの団長は......ビビるほど溜め込んでる」
トッププレイヤーがビビるほどと言うくらいには懐が豊からしい。そんな言葉を聞いてガンマが大人しい額で済ませるはずもない。悪い顔をするガンマとその意図を理解している自分の私欲を満たそうとする悪餓鬼。可能な限りしゃぶり尽くそうとする邪悪コンビが完成してしまった。それを眺めかなり引いているベータであった。
「さぁ!何をご所望だ?なんでも作りあげてみせよう」
「そこまで言うんだったら、依頼はこうだ」
ガンマはここ数日で集めた素材を入口近くにあった机の上にゴロゴロと出し始めた。
「聖職者だけど聖職者っぽくなくて全然いい。動きやすさを優先してくれると助かる。欲を言うんだったらスタミナが減りずらいとかになったらかなり助かる。防具に関してはそんなもんで大丈夫だ。」
「素材もかなり良い、始めて数日のプレイヤーとは思えないな。」
「私もここまで速いとは思わなかったよ、どんな攻略の仕方してんの??」
2人からの率直な疑問。ガンマが答えられることはひとつしかない。
「突き進んでったらこうなった。」
常識外れの所業でもガンマという名だけで納得しかけてしまうのがズルいところだ。
「そう言えばお兄ちゃんって誰とパーティー組んでるの?」
「パーティー?組んでないけど?」
ここまで超特急で進んできて、この最序盤でかなり良い素材をたんまり所持しておいてソロのはずが無い.....そう思い込んでいたが。
「え?!今日はたまたまひとりの日って訳じゃないの?!!」
「なんだそのお前らにとって都合が良すぎる日.....初めっから一人でやってるよ、にぃつで誘っとくべきだったか??」
「正直、ソロでできるんだったら皆ソロでやるだろうな。経験値の山分けとか素材の山分け、旨味に関してはソロが最高効率だろうな。というか、なんでお前は知らねーんだよ、兄妹だろ?」
「い、いやぁ〜、このゲームソロでやる人いる???相当なバカでしょ....てっきりにぃつさんとかKanadeさんとかとやってるものかと......」
「ん?ソロってそんなに珍しいのか??ゲームなんだからソロもいっぱい居るだろ?」
庵は自分の兄のことを知った気になっていた。今その情報が完全に更新した。
「ここまでミリ知らだとは思わなかった........」
「あ?なんだよ。このゲームってパーティー推奨だったりするのか?」
呆れて言葉も出ないベータに代わってトゥーシューガァンが補足をした。
「このゲームは10人単位のパーティー推奨のゲームなんだ。このゲームが超難易度神ゲーとか超難易度クソゲーって呼ばれてる所以だね。ネットでクソゲーって言ってる人達の言い分は友達が居ないと出来ないとか人と喋れないから出来ないとか...........悲しいコメントばっかりだよ。」
「1人でやれば問題なんかない神ゲーなんだがな、もったいねーな。今のところ水鳥とか言うやつが1番てこずったな」
「あいつに関してはパーティー推奨って出てたでしょ.....」
「覚えてねーな」
「そんなことはさておきだ。そろそろ本命の話をようか」
話し合いを断つようにトゥーシューガァンが話を鍛冶に戻した。
「それもそうだな。」
「防具に関しちゃ何の問題も無い。できるだけ搾り取ろうって魂胆なんだろ?聞かせろよ、本命をよ」
「俺の本命は勿論武器にある。要求はこうだ。」
── クリティカルダメージに補正
──ジャストパリィになれば耐久値回復。譲歩して耐久値の消耗5割カット以上
──STR高め
──耐久値高め
──ステータスにデバフが掛からない
──汎用性が高い
──バフ効果が上乗せ
etc
「こんなもんかな」
頭が悪いと言わざる負えない程のてんこ盛り具合。さすがのトゥーシューガァンもこれには頭を抱えることに.......
「なるほど、かなり我儘なようだ。」
「遠慮なんてしないって言ったからな!要求ってだけで出来ない部分もあると思うが、言えるだけ言っておいた。ただ耐久値に関してはどうしても欲しいんだ」
「やり遂げてやるよ。その代わりお前にも働いてもらうけどな?」
頭を抱えるなんて事するはずもない。最高の武器を作るためにこの職業に就いた。俄然燃えるといったものだ。
「俺の要求が通るんだったら今度は逆に俺がなんでもしてやるよ」
「よく言ってくれた。まずは素材だ。序盤じゃとれねーような素材だが取ってきてもらう。今のレベルで」
新大陸に向かってもらう
「え?!無理でしょ!」
ベータが横から止めようとするが2人は止まることを知らない。
「こんだけの効果を織り込んだ武器だったらこっちの大陸じゃ力不足だ。せめて西大陸の素材が必要だ.....だから」
「いいや、」
まさかの拒否。思いもよらなかった返答にトゥーシューガァンも少し固まってしまった。ハッと我に返りトゥーシューガァンはガンマに聞き返した。
「理由を聞いても?」
すぐに諦めるようなタマじゃないとトゥーシューガァンは分かっている。傲慢な要求を提示してきておいそれと引き下がるとは到底思えなかった。
「理由は単純。もっと楽な方法がある」
「もっと楽な方法......?」
「まぁー見てろって。もっと簡単により良い素材を仕入れてきてやるからよ!」
トゥーシューガァンもベータも首を傾げる。南大陸で西大陸の素材を手に入れるなんて無理だ。それをもっと簡単に手に入ると言っているのだ。どんな方法か気になるであろう。
「トゥーシューガァン、この武器を作るにあたって必要な素材を全てリストにしてくれねーか?」
「ちょっと待ってろ?」
トゥーシューガァンはインベントリから羊皮紙を取り出しそこに必要素材を書き始めた。それは一種のクエストの様になっていた。
「こんなものだ。考えうる中で最高の組み合わせだ。これらが揃えばお眼鏡にかなうしなが作れる...が。これは現状の最前線級の素材だ。エリアボスのレアドロップなんかも含まれている。これを集められると?」
トゥーシューガァンはかなり疑っているようだ。ベータも素材の一覧を見て引いてるようだった。2人の反応からしてかなりのトップレアリティなのだろう。最前線のトッププレイヤーしか持っていないようなアイテム。初めて数日のプレイヤーに用意出来るはずもない......そう。初めて数日じゃないプレイヤーに頼めばいいのだ。
「集めるのは俺じゃない。」
ニヤニヤと悪い顔を浮かべたガンマであった。




