伝令神の思惑
「ヘルメス、?!」
フェイは自信満々な表情でそう答えるがこのゲームを始めてまだ数日のプレイヤーにそんなことが分かるはずもなく.....
「へ、へるめす?......って、なんだ?」
思ってもいなかった返事が返ってきて硬直するフェイ。それもそうであろう。このゲームをやっていれば誰しもが通る道である攻略サイトなども彼女ら伝令神達が柱となって情報を提供しているのだから。
「知らない人も.....いるわよね。」
逆に怪しいような戸惑った返事しか返せず更に怪しまれるフェイ。ガンマの視線がだんだんキツくなってくるのがビシビシと伝わってくる。
「伝令神は簡単に言えばこのゲーム最大の考察クランよ。調べれば直ぐに出てくるわ」
ガンマの視線がパッと和らぎ雰囲気も若干話しやすくなった。考察クランはどんなゲームでも重宝される。プレイングがきっかけにストーリーやシナリオが発生するゲームにおいては尚更。その事はガンマが一番分かっていたため話はスルスルと進んで行った。話の内容はこうだ。
フェイの話
── 単純にオーダーメイド武器はプレイヤーに作ってもらうのが1番いい。
── お金が溜まってきた頃に詐欺られるのは可哀想
── 知り合いが顧客を確保したかったから。
だそうだ。
「なるほどな、そういうことだったら紹介してもらおっかな。こっちにも事情があって武器も防具も全壊しちまってたからさ。」
ガンマも信用に値すると感じたのだろう。フェイが嘘をついているようには見えなかった為素直に甘えることにした。
「それじゃぁ、今から行く?」
フェイが親指で外を指しながら気軽にそんなことを提案する
「このままじゃ何もできねーし、行ってみるか!」
「おっけ〜!そんじゃ着いてきて?」
フェイに連れられ街中を歩くこと数分。初めに見た大使館のような場所に着いた。かなり大きな建物でこの街の中心となるような建物だった。建物内へと続く道には伝令神のエンブレムが記された旗が連なっていた。建物の入口にもそのエンブレムが飾っていた為この建物が伝令神のクランで間違いないだろう。
「で、でけぇ〜.....」
このゲームをプレイして始めてみる大型クランのホーム。ガンマからしてみればどれだけのお金があればこんなもの建てられるんだって話だ。少なくともガンマの所持金など雀の涙だろう。そんな呆気にとられているガンマを横目に確認し少し自信気にホームの扉を開いた。
「......って、え?!なんで中に入ってんだ?!鍛冶師を紹介してくれるって.........」
「そうだよ?その鍛冶師もここのクランメンバーだもん」
一気に表情か憂鬱になってきたガンマ。確かに騙されてはいない、が。何やら変な予感がしてきた。
「ま、まさか俺をこのクランに取り入ろうってんじゃ......」
「ん〜?ハハッないない!安心してよ!」
「言っておくが、俺はソロだ!クランには属さん!」
自分の勘を信じて来たガンマは警戒心を強めた。それすら無視するかのように二股に分かれている湾曲した階段を上り廊下を歩き始めた。嘘は言っていないようだが信用は出来ない。何か裏があると直感する。警戒心を強めたとしても不運なことに武器を一つも持ち合わせていない。*PK*に襲われたとしても対処出来る術がない、ガンマからしたら珍しく抜かった判断をしてしまったと言えるだろう。長い長い廊下の先連れてこられたのは門のような扉の前だった。そこには姿勢を崩さず槍を握った騎士が立っていた。
「仰々しいおで迎えじゃねーか....鍛冶師が居るようには、見えねーな?」
「まぁまぁ、入りな?」
騎士達が槍を構えてガンマに睨みをきかせ始めた。
「嫌だと言ったら?」
「さぁ〜?どうなるでしょう」
この圧倒的不利状況だとしても自分を貫き通す。そして対人戦において自分の右に出るものはいないと自負しているからこそのこの態度。ただ、不利なことに変わりはない。ここは大人しく従う事にした。圧をかけられたフェイの額にはうっすらと冷や汗が流れていた。門を開けるとそこには長机を囲むように座るプレイヤー達が居た。そのプレイヤー達の目線がガンマ1人に注がれる。
「フェイご苦労だったな。」
「お易い御用ですよ。」
フェイも空いている席に座った。遂に立っているプレイヤーはガンマ一人になり異様な空気が立ち込めている。その中でも異彩な気配を放つ者。またしっている気配が2人ほどいることに気がついた。
「鍛冶師を求めてここまで来たんだが....騙されたってことでいいのか?」
単純な疑問を机に座る中で明らかにトップのプレイヤーに声をかけた。
「いいや?鍛冶師は紹介するさ。ただし、条件を飲んでくれたら、だがな?」
そう答えた聡明なプレイヤーの名はシグマ・レイブン。このクランの団長である
「私の名前はシグマ・レイブンこのクラン伝令神の団長だ。始めまして、かな?ガンマ」
「......そういう事かよ、」
ボソッとそんなことを呟き気持ちを切り替え言葉を発する。
「初めましてだ??何言ってんだお前。何度も殺りあってんだろ?俺が忘れてるとでも思ってんのか?」
シグマは驚いたような顔を露わにした。ガンマはシグマにとって憧れの存在で自分など取るに足らない存在だと思っていたが、そんなプレイヤーから認知されていた、それだけで気分は上々という物だ。
「.......そうか。私を知っていたのか.....」
「ほーら、だから言ったのに。」
シグマの近くに座っていたベータがボソッとそんなことをシグマに言った。シグマは嬉しい気持ちを無理やり押し殺して言葉を続ける。
「すまない、訂正しよう。久しぶりじゃないか。ガンマ」
「この前ぶりだけどな。まさかお前のクランだとはな、シグマ・レイブン」
「っ、」
呼び捨てが他のプレイヤーにとって失礼と受け取られたのかあまりいい待遇とは言えなかった。
「出来ればシグマと呼んでくれ。ただ君に憧れを抱いている考察好きの1プレイヤーだ。」
「じゃー言っとくぞシグマ、生憎俺は今休止中の身だPVPはお断りだぞ?」
「それは....」
「さっきから聞いてりゃー、てめぇ、」
ガンマの言葉に納得ができなかったのか体験を背負った大柄のプレイヤーがシグマの言葉を遮るようにガンマに突っかかった。
「てめぇ、この状況がわかっていねーのか?」
やはり良い印象は1ミリたりとも無いらしい。
「初期装備の初心者にわざわざ話し合いを設けてやってんだ、言葉には気をつけろ。」
冷静を装っているが胸の内にはふつふつとした信念が湧き上がっていた。そのプレイヤーの名前は【タロン】というらしい。
「鍛冶師に会わせてくれるって言うからついて来たんだ。用事はそれで終わりなんだよ。」
「てめぇ、」
「まった。タロン、その辺にしてくれ。」
まったをかけたのはシグマだった。シグマの言葉には従順なのか感情を押し留め口を塞いだ。
「先程も言ったが鍛冶師は紹介するさ。ただし、条件を飲んでくれるなら、だけどね?」




