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夜を統べる帝、月明かりを我が物に

「いざ出陣!」


ガンマは数時間前まで歯が立たなかったユグドラシアの森最深部に進み始めた。


「フッフッフ〜あの時の俺とは一味違うぞ?あの時の俺を例えるならばそう!ピザソースのかかっていなピザ!ソースのかかった俺は無敵!」


少し不可解なことを話しながらもユグドラシアの森を進み続ける。


「お、早速来たなァ?あの時はボス戦並に時間かかったけどよ、火力増し増しの俺に敵うかな?!」


石の斧に鉄の装備を所々に身につけた【コボルト】というモンスターと戦闘を開始した。


「早速使ってくぜ!ビルドアップ!」


一時的に攻撃力をアップさせる魔法を使用しコボルトを力任せに殴る。するとこボルトは受け流せずに吹っ飛ばされた。


「え?!めっちゃ強いじゃねーか.....STRにステ振りしたとはいえなんで今までバフ使わなかったんだよ...しかもINT20ごときで2回も使える!現状最高のスペル!残りのステータスポイントもSTRに振っとこ〜一旦火力振りにしとかなきゃ痛い目見るからな、」


目の前で粒子状に消えていくコボルトを見ながら数時間前の記憶を遡る。


「にしても、少しづつとは言えレベルも上がってきたしスキルも増えてきたな!使えたもんじゃねーけど....行動によってスキルの獲得ができるとかあったけど明らかに購入したヤツの方が高性能なんだよな〜使えるのはこの【クイックステップ】ってやつだけ、」


【クイックステップ】

回避に補正がかかる


「今ん所これすら使ってないし、パリィが便利すぎるんだよな〜俺にとっちゃほぼ無敵だし....」


プレイヤースキルで勝ち進んできたガンマにとっては【パリィ】というギミックは半無敵と言わざるおえなかった。 産まれ持った天賦の才能。その秘密は()()()()。集中する度合いによって変化は生じるものの、動きが少しづつ遅くなっていくのだ。その分体力と集中力はものすごい速度で減ってしまうがそれを差し引いても圧倒的対面性能を有していた。


「でもまぁ、今の段階でこのレベルの強さの敵が出てくんだ!ほぼ無敵くらいがちょうどいいだろ!」


なんて考えはその日のうちに消え去ってしまった


*

いつも通りの月()真っ赤な月が浮かぶ不思議な夜。2つの月あかりに照らされる1人のプレイヤー。そのプレイヤーの目線の先にいるは夜帝。


「ハハッ、これだよこれ、これがしたくてゲームやってんだ。ほぼ無敵でちょうどいいだ?腑抜けたこと考えてんじゃねぇよ、()()()()くらいねーと割に合わねーな......」


【リスポーンしますか?】

YES NO


──

───

────

─────

──────

───────

────────


数時間前。


「つ、遂に!!!!遂に抜けたぞ!ユグドラシアの森を!!」


正確にはまだ奥には繋がっているが、少なくともガンマのいる場所【双月の岩山】の周辺には木など生えていない。


「ずっと同じ景色で飽きてたんだよな〜。マップ的には他にも色んな場所あるっぽいんだけど真っ直ぐにしか進んでねーから後で遊び行かなきゃな!」


ガンマの攻略速度は()()()()()()()と言われても仕方が無いほどであった。パーティーを組んでいるのなら()()()()()という程でソロの場合異次元としか言いようがなかった。そんなことは微塵も知らないプロゲーマー(妹にガセネタを掴まされているエアプ)。であった。


「早速行ってみっか!登山開始!」


双月の岩山にはかなり強力なモンスターやレアな資源も豊富に有り、途中途中でツルハシを使い鉱物の採取や沼のような池を見つけそこでも採取&採掘。道中武具を整えたゴブリンや金属製の盾を体の正面に身に着けた正面の防御力だけ高いスライムなどの様々なモンスターが現れた。


「お、こいつはレアモンスターだな、」


目の前で鉱物をむしゃむしゃと食べているのは【マインリザード】というモンスターであった。


【マインリザード】

石や鉱石を主に食べる。食べた鉱石はマインリザードの体内で鉱脈として生成される。体は石のように固く生半可な攻撃を防いでしまう。体表には所々生成した鉱石が浮き出ており採取も可能である。


「おー、いかにも素材って感じするな....あの飛び出てる鉱石とかも取れるのか?お金(ゴールド)の匂いがプンプンするぜ。」


ガンマは悪い顔を浮かべてマインリザードを眺める。その目にはマインリザードが素材か金にしか見えていないのであろう。ツルハシを両手に握りマインリザードを討伐(採掘)する気満々な様子。息を殺しマインリザードが食べるであろう鉱石の岩陰に隠れその時を待つ。


『ヒッヒッヒ.....さぁ、こい!俺の糧となりやがれ!』


心中でそんな外道な事を考えながらさらに数分...


『き、キター!!』


ガンマが隠れている鉱石にマインリザードが食いつき始めてさらに数十秒。無我夢中に鉱石を食べ進めている最中にこっそり背後に周りツルハシでボコボコにしばきはじめた。ガシンガシンと体表に現れている鉱石を採掘しつつ着実にダメージを積み重ねる。マインリザードは何が起きているのか分からないかのように声を上げながらバタバタと抵抗し始める....が。クリティカルとガードブレイクが重なった攻撃をくらい続けて耐えられる訳もなく......


「しゃーーー!苦節10分弱!!遂に討伐成功だぜ!!」


討伐....?否。ただの暴行である。食事中にタコ殴り.....可哀想としかいいようがない。


「ふぅ、実にやりがいのあるサイレントミッションだぜ、お陰でかなり素材も集まったな」


不意打ちでボコボコに殴ったおかげでドロップアイテムはたんまり集まったのである。


【マインリザードの鱗鉱石(りんこうせき)

──マインリザードの鱗と食べた鉱石が合わさってできた特殊な鉱石。


【マインリザードの鉱皮鉱皮(こうひ)

── マインリザードの皮膚。鉱石を食べていれば食べているほど品質も高くかなりの強度を誇る。


【マッド クリスタル 大】

── 沼の中に極小量だけできる希少な鉱物。マインリザードの体内で成長し見事な大きさと品質になった。


「おー!こいつの中で育ったやつは品質とかも向上するのか!....フッフッフ、こいつの値段によっちゃァ、新たな金策エリアの爆誕だぜ、ヘッヘッヘ、」


否。運だけ小僧の再来である。


「この調子で狩って掘って取りまくるぞ!!」


数時間のファームをしガンマのインベントリには大量の鉱石やらドロップアイテムが収納されていた。ゲーム内の時刻はすっかり日も落ち辺りが真っ暗になっていた。大地を照らすは()()()()()()()()であった。


「大量大量!これで新しい装備も作れんだろ!にしても今日の月は不気味だな....今まで赤い月なんか出てなかっただろ....せっかくだし一番高いところで見て見るか?庵にも見せてやろーっと。」


ガンマは惹かれるように岩山の山頂、というより岩山の先端によじ登り月明かりを誰よりも近くで浴び始めた。


「不気味っちゃ不気味だけど、これはこれでありだな!月が2つあるくらいゲームだったら有り得んだ、ろ。」


ガンマは自分の目を疑った。圧倒的信頼を寄せる自分の目を疑うという考えられない行動に出てしまった.....それ程までに信じられない光景が浮かんでいた。月明かりを遮るように巨大な生物が目先に羽ばたいていた。


「んだよ、あれ....」


呆気にとられていた時。その巨大な生物がさらに大きく羽を広げ、赤色の月明かりと月明かり、白の光と赤の光を吸収し光を凝縮し始めた。ガンマの混乱など吹き飛ばす程の威圧感。今までのモンスターなどモンスターと言っていいのかすら疑ってしまう、それ程までに格が違う存在感だった。


「そうかよ.....お前が....」


()()()()()()()()か!


その言葉と同時に赤と白の光が混同したようなレーザーがガンマに向かって放たれた。


「っ!!()()()!」


小盾とメイスを瞬時に取り出しレーザーに対してパリィを繰り出した。


「.......くっそ、!!」


かろうじてパリィを成功させたが武器が完全に砕かれてしまった。


「はァ?!」


『パリィの補正で耐久値は削れずらくなってるはず、しかも耐久値にはまだまだ余裕があった。それなのに盾も武器も全損....この攻撃、』


武器破壊(ウェポンブレイカー)かよ!?冗談じゃねぇ!」


文句を言っている隙などあるはずもなくそのモンスターはガンマの目の前まで瞬間移動かと疑う程の速度で襲いかかってきた。


「うぉら!!!」


かろうじてドロップアイテムの武器を取り出し攻撃を弾いた。


「ハハッ、!一般プレイヤーだと思うなよ?!こちとら勝ち続けてるプライドがあんだよ!」


そのモンスターを近くで見るとよくわかる。このモンスターは現状()()()()ということを。見た目は巨大なコウモリ。口や鼻はなく、それは影そのものと言えるほどの漆黒のコウモリ....その名も。


創世生物(アーティア)()() ()()()...?」


そのコウモリの頭の上にテキストが出現しコウモリの名・二つ名・種族名示した。ガンマは疑わなかった。こいつこそがレコードホルダーと呼ばれている11種の最強のモンスターであると。


「お前だな?レコードホルダーってのは.....勝負しようぜ?夜帝、今夜でお前の席下ろしてやるよ!」


あっという間であった。瞬きをしたその数瞬、開幕に放たれた月明かりの光線がノーモーションで放たれた......ドロップアイテムの武器、それもコボルトの斧そんなもので夜帝の一撃を防げるはずもなく、一瞬だけパリィを成功させた直後に耐久値が全損してしまった。その光線を防げなかったためガンマにも致命的な一撃が叩き込まれた。


「ハハッ、これだよこれ、これがしたくてゲームやってんだ。ほぼ無敵でちょうどいいだ?腑抜けたこと考えてんじゃねぇよ、()()()()くらいねーと割に合わねーな、......おい。待ってろよ、ぜってー叩き落としてやっからな、高みの見物でもしてろ........!」


最後の悪あがき、コスモに向かって自分の思いの内をぶちまける。


【リスポーンしますか?】

YES NO


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