第8話 予想外
翌日
「ん?う~ん…ん?前が見えない?真っ暗だ、お先真っ暗だ…あ、これ夢か!」
視界が真っ暗で、声がこもってるしちょっと息が苦しい。
「……レオ、あんた起きてるのかい?」
アザレアの声が聞こえてきた。
「おお、すげえ…夢の中なのにめっちゃくっきり聞こえる」
「何言ってんだい、あんた今うつ伏せだよ」
「ぅえ?」
「寝ぼけてないで…そろそろ起き、な!」
「≪小指型耳栓≫!あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
突然轟音が鳴り響いたが、スキル≪小指型耳栓≫+叫ぶことで軽減した。
「ゔわあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」
「ザンザが驚いてるけど…どうだい?」
「う~ん、小指型耳栓+叫びで防げるくらいだとそんなに効果は期待できな」
そう言いながら体を起こすと、目の前に太陽があった。
「目が、目があ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
「あっはっはっはっは!」
俺はすぐうつ伏せになった。
「あ゙あ゙あ゙、ぐっ…うう……あ、アザレア…これなら…十分効果が期待できると…思う…」
「その反応見たら分かるよ。あ、ちなみにさっきの轟音弾は前のやつだから、新作はあれの5倍とか10倍だよ」
「なら大丈夫だな」
俺は体を起こした。
「さてと…行くか」
「ああ、分かった」
俺らは会議室に向かった。
会議室
俺らは今から作戦会議だ。陽栄軍は毎月1回、全国に攻めてくる。理由は2つ。高頻度で攻めることで精神的に追いやるためと、厄災の前兆を殺すための2つだ。陽栄軍は厄災の前兆を引き渡せば毎月1回の攻撃をやめると言っている(代わりに殺すも可)。そんなクソみたいな要求もあるせいで俺は差別されてるし、ちょいちょい攻撃が飛んでくる。一応迷惑かけてるし、ちょっとした罪滅ぼしのために陽栄軍の撃退は手伝っている。
「よし、皆集まったな。まずは昨日から立て続けで忙しくしたことを謝っとく、すまん」
「そんなん別にいいって」
「謝るなら今日の事を考えないで予定した俺です」
「そうだ、レオが責任を感じることはない」
「…やっぱ、お前らといると心が楽になるな」
「ありがとな」
「ああ…そろそろ始めようぜ?アザレアの装置説明聞いたりとかルートと訓練とか早く寝たいとかいろいろあるんだし…」
「最後のは願望じゃねえか」
「分かった。じゃあ始めようか」
「いつも通りよろしくな、隊長」
「はいはい…さてと、じゃあ早速陽栄軍の方から決めていこうか。作戦はいつも通り圧縮爆破型兼追尾拡散型全属性砲台、一滅砲を使った後に俺、ソラ、ラー、ザンザ、ルートが前線に出て、アザレア、ガリヤードが壁の装置で援護。余裕があるなら別のところも支援。一滅砲は合図を出してから使う。そして、やばかったら無理しないで仲間に任せて休む。それでいいか?」
「最後のは例外があるのを忘れてないか?」
「お前らは俺がやばくなったら無理してでも助けることだろ?」
「忘れてないならいい」
「まあ、そんなことは無いと思うけどな」
「レオは強すぎるんですよ。何でもうリラードさんを超えてるんですか…」
「レオの想いに制限は無いのさ」
「それがおかしいんですって」
「ああ…続けてええ?」
「おけ」
「うい。じゃあ次、7月8日…つまり5日後のヤマタノオロチ討伐についてだな」
ヤマタノオロチとは、8つの頭と尾を持つ巨大なドラゴンだ。
「ああそれについてなんだがな、頼みがある」
「何だ?」
「校長が勉強と勉強意欲向上になることをやってくれと言われてな、2年2組はヤマタノオロチ討伐戦に連れていきたい」
「ああ…分かった。じゃあそれも含めて作戦を決める」
「助かる」
「ぬぬぬぬぬ………じゃあ俺がヤマタノオロチの分身を1体作るからそれを本体としてお前らは戦っといて。俺は本体をやる。ガリヤードとアザレアは生徒たちを守り、できれば援護射撃。これでいいか?」
「いや…まず、そんなことできるのか?」
「俺のスキルに虚の宴っていう嘘を操るスキルがある。それでお前らと生徒になんかそれっぽいのを見せればいい。あ、魔法で形作ってガチガチに攻撃するから訓練だとでも思って」
「そんなことせずとも、全員でヤマタノオロチを倒せばいいだろ」
「はっはっは!あんちゃんバカ言っちゃいけねぇ。いいか?今の俺は隊長である前に、厄災の前兆だぞ?そんな俺がかの有名な英雄隊と共闘してたらどうなる?クソみたいな噂が広がるだけだ。俺は隊長として、英雄隊の評価を下げたくない」
「そのくらい擁護でき」
「できると思うか?酷い時は一滅砲使って俺を殺そうとしてたんだぞ?」
「…無理はするな…」
「その時の俺に言え」
「…」
「じゃあ会議は終わったし、とりあえず皆お疲れ。解散!」
「…よし、ラー!訓練だ!」
「今日こそ引き分け地獄から抜け出してやる!」
「さてと、次は忘れないように言わないとな…メモするか」
「さ~てと…やるぞ、ルート」
「はい!」
「あたしは装置の開発と試運転でもするかね」
「俺は体鍛えるか、早く本気に慣れないと…あ、ガリヤード!少しでも鍛えたいからひと段落してから学校行っていいか?」
「…いいぞ」
「あややっす!」
「何て言った?」
「ありがとうございますが訛りに訛った言葉。気分でえいっす!とかやっす!とかあ!になるな」
「最後のはもはや分かんねえだろ」
「いや意外とノリでわかるんだな~これが」
「それ、自由研究で使えそうだな」
「ふふ…そうだな。じゃ」
俺は家に帰った。
家
俺の家は厄災の前兆の問題があるせいでクルス王国から5㎞くらい離れている。今では10kmくらいもっと離せばよかったかもと思ったりする。
「ただいま~。ぱく~、今日も疲れた~。はぁ…もう少し頑張ってくるね。大丈夫だって、寝る時はいつも一緒だ」
俺の家族は1年前に親は死んで、家は全焼したから家を作る羽目になった。今は俺の家には俺とぱく(ぬいぐるみ)だけが住んでる。
「さてと…少しでも早く本気に慣れんとな…」
家の後ろは森にで、体を鍛える時は隊服+真眼でその森の中を何分か全力ダッシュしたり、イメージトレーニングをしたりしている。
「…よし、やるぞ」
そうして、俺は鍛え始めた。