第42話 近くで貴方の帰りを待つ
5カ月後
「レオ!お姉ちゃんと一緒にご飯食べよ!」
「…うん」
「今日はえび天うどんだって!やったね!」
「…うん」
ここは、神様がいる天界の天国(天界には地獄、天国、狭間、戦場の3つの場所がある)。ここで私たちは平和に…とはいかないけど、仲良く暮らしてる。
「あんたたち!ご飯だよ!」
「は~い!アザレアさんが呼んでる。行こ!」
「…分かった」
天国に来た瞬間から、お兄ちゃんは壊れた。精神崩壊と記憶喪失を患って、最初の1ヶ月くらいは人形になったのかなってくらい何も喋らなくなった。それからしつこいくらいお兄ちゃんと接して、なんとか普通に話せるくらいになるまで英雄隊の皆で頑張った。だけど…それからは誰とも仲良くしたくなさそうにしてる。リラードさんは「記憶は無くても…どこかに、あの時の皆から離れないとっていうのがあるんじゃないかな」って言ってた(天界に来たら心を含む全ての傷が治るはずなのに、お兄ちゃんの目の傷だけは治ってない。体の心配をしないで真眼を発動して治さないようにしてるせいで、精神崩壊と記憶喪失を患ったんだと思う)。その理由を聞いて私たちは、これまで以上にしつこく優しく接してきた。そうすれば、いつか人間恐怖症も記憶喪失も治ると信じて。
「ん~!レオ、美味しいね」
「うん」
「ほんとかい?よかったよ」
「う~ん…アザレアのご飯ってここまで美味しくなかったような…」
「リラード?あんまりそういうことは言わないんだよ」
「嘘つきは泥棒の始まり!」
「知らぬが仏だよ」
「うっ…ごめん…」
「別に構わいやしないけどね」
「はは。なんか茶番劇でも見てる気分になりますね」
「だいたい日常はリラードとザンザがいれば漫才か茶番劇になるからな」
「仕方ない」
「飽きないから別にいいがな」
「…ご馳走様。おやすみなさい」
「ソラさん…せめて布団の中で寝てください。あと、食べた直後に寝ないでください。太りますよ」
「別にいいだろ?迷惑かけてないし」
「…深夜に棚の中を確認したらカップラーメンが無くなっていました。貴方ですね?」
「………ごめんなさ」
「ふん」
「いてっ」
「今はデコピンで済ましますが…次はつねりますよ」
「分かったって…」
「ふふ、なんか子供みたい」
「俺、一応27なんだが…」
「え?そうだったんですね。俺21なんですけど…年下に叱られてるの変じゃありません?」
「ごめんって……母さん」
「誰が母さんですか」
「俺とラーは20歳だぞ!」
「あんまり人の年齢を言うなよ。アホに見えるぞ」
「俺は57だな」
「俺は29歳!心は18歳!」
「あたしは……乙女の秘密だよ♡」
「おとめえ⁉はっはっは!アザレア、三十路で乙女は笑っちま」
「乙女の秘密だよ‼」
「ぐはっ⁉なんでえ⁉」
「へ~アザレアさんって30代なんだ」
「ルルちゃ~ん?」
「は~い!」
「何が好き~?って、歌ってるわけじゃないよ」
「ははは!ほら皆、早く食べないと冷めちゃうよ」
「そうだった!じゃあもう1回いただきま~す!」
30分後
「ごちそうさま!じゃあレオ、何しよっか?」
「…ルル、そろそろ」
「え?なんか早くない?…こんなもんか」
「…姉さん…また…行くの?」
「心配してくれるの?ありがとう、優しいね。でも心配しなくて大丈夫!お姉ちゃんは強いんだよ!またすぐに帰るから、帰って来たら一緒にまた話そ?」
「…分かった…」
「じゃあ行って来ます!」
「…行ってらっしゃい」
ルルたちは渦の中に消えた。
戦場
天界では、天国と地獄の人たちが月に1回争ってる。何でかって言うと…地獄を率いてる魔王が他を争わせてそれを見るのが趣味のせいで、最初は毎日争ってたらしい(死んだ後も戦わなければいけないことを皮肉って、定戦と呼ばれてる)。最近は天国を率いてる聖王が頑張って、力で月に1回に抑えてる(魔王はこの戦いへの意欲向上の為に、勝った方は生き返れるという嘘を言っている)。戦うときは、時間になると渦が出てきて戦う為だけの場所(戦場)に出される(少し時間差があるため、開戦の合図は魔王がする)。戦いたいかどうかは選べるけど、そのせいで地獄の方が数は多い(天国側は歴代の英雄がいたりするから質で戦ってる。もちろん地獄側にも英雄はいる)。ちなみに、戦いが終わるとすぐに怪我は治る。天界でいう死は定戦が終わるまで動けなくなるだけ。
「…ルル、今更だけど本当にいいのか?無理せずレオと一緒にいてもいいんだよ?」
「ただでさえ少ないんだから、少しでも戦力は欲しいでしょ?それに…こんどは私がお兄ちゃんを護る番だから!」
「ほおう、流石はレオの彼女さんだ」
「ちょっと恥ずかしいけど…でしょ?」
「たぶんだけど、レオは甘やかしてくれる年上が好きだろうからね…ルルはドストライクだろうさ」
私は天国に来た時から凄い早さで身長が伸びた(出会ったときが120㎝くらいで、死んだときは150㎝くらいだったのに、今は170㎝くらい)。聖王に聞いて、実は16歳だったことが分かった。
「ほんと?やった!」
「でもアザレア、あいつたしか彼女は作らんし結婚はしないって言ってたぞ」
「ザンザ…あたしらもサポートするんだよ」
「なるほどなあ!」
「…皆。そろそろだよ」
地獄側と天国側、両方とも揃っていた。
〚お前ら。いいぞ、いつからでも始めろ〛
〚…皆…頑張って〛
魔王と聖王が声をかけた。
「…さてと………武器を持て‼」
すると、一斉に武器を持った。
「この引き分け続きももう終わりだ‼帰る場所を守る為に、今日こそは勝つぞ‼俺に続け‼」
天国側と地獄側は一斉に進軍し、戦いを始めた。