第19話 強制を実力と呼ぶか
「先制攻撃!!」
俺は間合いまで走り、リラードを斬った…はずだったが、片目のせいで上手く距離感が掴めずにリラードより少し手前を斬っていた。
「うぅわ距離感むず⁉」
俺は刃が地面につく前に逆手持ちして地面に手をつき、前転して地面を腕で押して逆立ちみたいな体勢でリラードを蹴ろうとしたが体を反らして避けられ、俺は着地後すぐに刀を投げて走った。リラードがこっちに跳ね返してきた刀を取って勢いを殺さないように回転しながらリラードを斬ろうとしたが
「これ、こうしたらさ」
「あ」
少し横に避けてしゃがまれたせいでそのまま回転しながら地面に激突した。
「ぐはあ゙!!」
地面に刀が叩きつけられたせいで刃が折れてザンザの顔へ飛んでった。
「うおあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!?」
ザンザは避けて、刃はそのまま壁に突き刺さった。
「あ、悪い」
俺は突き刺さった刃を取って反対にして鞘に入れた。
「よし…第2ラウンド!!」
「急に⁉」
俺は走って近づいて縦に斬ろうとし、リラードが剣を横にして防御した。両手が塞がったことを確認して俺は左手で鞘を取り出してリラードにぶつけようとしたが、リラードは左手で鞘を掴んで止めた。その時、鞘から折れた刃が飛び出して、左手を突き抜けてリラードの腹に刺さった。
「うっ⁉」
「今なら!!」
俺は一瞬弱ったリラードの力を逃さず、防御されていた刀をそのまま力で振り下ろして胴体を斬ろうとしたが、数ミリ斬って止めた。
「…流石にもうよくね?」
「ご、ごめん…舐めプしすぎちゃった…」
「何やってんだ…アザレアさん!リラードが右肩に斬り傷!左手と腹に刺し傷!」
「はぁ…リラード?手加減も程々にね。ほら、回復薬」
「ごめん…ありがとう」
俺は刀を鞘に入れた。
「いやぁ、まさかここまで動けるとは思わなかったなぁ」
(なんなら両目の時より強かった気がするけど…裏で鍛えてたからかな?)
「片目になったらそれに合わせればいいだけやしな」
「いや、そんな簡単に適応できないから」
「リラードはもう少し痛みに適応しないと」
「うぅ…だって痛いじゃん…」
「そりゃそうだけど、戦いに痛みは無いわけなくない?」
「…よし、次いこう!」
「あ、逃げた。まぁ、本気で戦えばリラードの圧勝だろうけど」
「そうそう!もし俺が教えきれずに死んだらあの遺跡に来てね」
「前に言ってたやつ?場所は覚えてるし…行けたら行くわ」
「行かないやつじゃん!」
「はっはっはっはっは!」
「もう…まあいっか。さてと…ええっと…片目でも十分に戦えることは分かったし…どうしよ」
「次いこうっつってたやん」
「う~ん…帰るか」
「蛙化?てかここが帰る場所だし」
「そうだ!ケイソレイ、何か欲しいものある?今なら贅沢可能!」
「ああ…」
(そう言われても流石に贅沢は言えないし…欲しいもの…生活必需品?いや、だいたいっていうか全部無くてもどうにかなることを吾輩は家出により知っておるし…ま、大丈夫か)
「何もいらん」
「本当に?」
「我が心と行動に一点の曇りなし………!全てが『本心』だ」
「嘘だッ!!」
「冬にひぐらしは鳴いてねえよ」
「たしかに本心だろうけど、こういう時っていっつも我慢してるじゃん」
「キッショ、なんで分かるんだよ。リラードと会って…ええっと…まだ12ヶ月だぞ?」
「まだじゃない、もう12ヶ月だ。あと分かりにくいから1年って言って」
「たしかに」
「わざとじゃなかったんだ……あ、やば!!」
「どしたん?話ぃ聞こか?」
「護衛任務あるの忘れてた!!」
「また忘れたん?ああ、空いてる日でいいからって感じだったのね、ちなみに護衛するの誰?」
「ボルスとアーレルド」
「……それ、いつ頼まれた?」
「…1週間前」
「これまで空いてた日は?」
「…空いてる日しかない」
「はっはっは…それは俺含めた英雄隊8人で行くのか?」
「…うん」
「…」
「あ、ええっと…け、ケイソレイさん?」
「歯、食いしばれ。そんな大人、修正してやる!!」
「え、ちょ、ま⁉」
「≪スーパーアルティメットハイパーウルトラオマエラマジユルサンゾグチャグチャニシテヤルホウリツナンカシルカコノエイユウサマのコブシヲクラエパアンチ!!!≫」
「いったあい!!」
「…はぁ…はぁ…次からメモでもしとけ?」
「うぅ…はい…」
「たく…今日はもう時間無いだろうし、明日皆に言いに行こう」
「分かった」
翌日 朝
「し…死ぬぅ…」
「たく…何で急に言うんですか」
「眠気が覚めたんだが?」
「だって~」
護衛任務のことをすっかり忘れていたリラードは、英雄隊全員からボコボコにされいた。
(何で俺、明日報告しようって言ったんだろ……まあ…バレなきゃ犯罪じゃないか)
「忘れやすいんだしメモする癖を付けるといいかもね。ね?英雄様?」
「うぐ…すみません…」
「じゃあ早く行こう。あっちはもう待ちくたびれてるぞ」
「痺れを切らしてもう来てたりしてな」
その時、皆のもとへ2人が向かって来た。
「お~い」
「?…あ」
「噂をすれば…か」
その2人は王と王子だった。
「そろそろヤバいからこっちから来たんだが…まだ空いてる日は無いか?」
「…うちの英雄が忘れてました」
「は?」
「…すみませんでしたあ゙あ゙‼」
「……後で飯奢れ」
「…はい…」
「じゃあ行くぞ」
「…リラード、大丈夫?いける?」
「ケイソレイ…ありがとう、いける」
「悪いのはお前だけどな」
「うぐっ……い、行こうか」
「はいはい」
俺らはすぐに準備をして、クルス王国を出た。