第14話 逃げた先で歩み出す
「あ、あの…」
「ああごめんごめん!今治すね」
「い、いや…大丈夫…です。め、迷惑は……かけちゃ…だ…駄目だから……」
女の子は怯えてるようだった。
(≪虚の宴≫)
「いや、俺が好きでやってるだけだから気にしないで」
「え…」
俺は《真眼・劣》で女の子の怪我を治し、ついでに汚れも取った。
「…これでよし!どうかな?」
「…あ、ありがとうございます…」
「…これから、どこ行くの?」
「…好きな…所…」
「方角的にクルス王国かな?どうしてあそこに?」
「…前…助けてくれた…人に…」
(…リラードか……)
「…どうやって会うつもり?」
「…」
「…その人は…帰ってこないよ」
「ッ!そん…な………」
「《真眼》」
(…そうか…)
「…帰りたくない?」
「え?」
「…ちょっと汚いけど…俺の家に来る?」
「え!?いや、そんな…」
「…大丈夫、俺たちは君を殴ったり雑に扱ったりしない」
「で、でも…」
「このお兄ちゃんに任せとけ!家事全般ならできるし、衣食住もしっかりあるぞ!」
「い、いやでも」
(…あの時みたいだな…)
「う~ん…あ、迷惑だと思ってる?家に花が咲くし、そんなこと本当に無いから安心して」
「な…何で…」
「友達が増えることが迷惑なわけないし、むしろ大歓迎だからな」
「……何で…」
「そりゃあ目の前に困ってる人がいるからに決まってるじゃん」
「い、いや…」
「ああ……キル、翻訳頼む」
「俺?う~ん…たぶん信憑性かな?」
「ああそういうこと?う~ん…友達増えるからとか?足りない?」
「流石にそれだけだと信用しづらいかな」
「ええっと…人助けして俺優しい!っていう自己満足したいのもあるかな」
「うわ~判断難し…分からないからもうちょっと」
「………一目惚れって言えばいい?」
「え⁉ああ…ええっと…頑張ったな?」
「ああもう!言いたくなかった!!告白なんかしたくなかった!!恥ずかしい!!これで振られたらお前を殴る!!」
「俺⁉」
「…ああ…これで理由は大丈夫かな?」
「う、うん…」
「どうかな?もし受け入れてくれたら、俺は好きな女性を幸せにできる、君は俺を使って充実した生活を送れる。もちろん無理やりはしない、決めるのは君だ。どうする?」
「………じゃあ…いいです」
「ぅおらあ゙!!」
「いったあ⁉俺に非は無いだろ!!」
「うるせえ!もう1発殴らせ」
「あ、いや、受け入れるって意味で…」
「え?あ…」
「…ぅおらあ゙!!」
「いってえ!俺に非がある!!」
「あ、ええっと…」
「あ、ごめんごめん…じゃあこれからよろしくね。絶対に幸せにするから」
「う、うん…」
(…まだ孤独が抜けてないな…)
「…」
俺は抱きしめて頭を撫でた。
「ッ⁉」
「…どう?安心する?俺は好きだな、この暖かさ」
「あ、あの…」
「君はもう1人じゃない」
「ッ!」
「これまで辛かったな…俺も1人だった頃があるからよく分かる。でも、これからは俺がついてる。君が死んでも寂しい思いはさせない」
「う…ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙ん!!」
女の子は泣き出した。
「おおよしよし…」
女の子を落ち着かせた後、俺らは俺の家に向かった。
レオの家
「着いた!ここが俺の家だ!ボロくて悪いな、遠慮なく入って」
「お、お邪魔します」
「いらっしゃい!さてと…どうしよ」
「…あ、あの」
その時!……女の子のお腹が咆哮を放った。
「おお、咆哮大だ」
「食べ物ある?無いなら持って来るけど」
「あるけど…あいつらにこの事言うついでに持ってきて。食材尽きそう」
「分かった。じゃあ行って来る」
「行ってら~」
キルは王国に向かった。
「よ~し!作るぞー!1番何が好き?」
「……分かり…ません…」
「ほおう?おまかせコースか…いいね!やってやる!」
(身長的に…7歳くらいか?よし、ならば無難に…あれだな)
俺はご飯を作り始めた。
10分後
「…よし、完成!おかわりもあるからたくさん食べて!」
「…これは?」
「パルマカレーと揚げパン。美味しいから、騙されたと思って食べてみて」
「………」
「どう?」
「…美味しい…です…」
涙を流しながら、凄い勢いで食べていた。
「…ご飯は逃げないし、ゆっくり食べていいからね」
20分後
「…美味しかった…です」
「よかった」
「…あ、あの…」
「どした?」
「代償は…仕事は、無いんですか?」
「え!?いいの?」
「…それは…はい…」
「じゃあ…5秒間失礼する」
「?」
俺は………少女のほっぺを触るという大罪を5秒間『も』犯した。
「…すまん、ありがとう」
「な、何してた…んですか?」
「合法犯罪だよ。いつかきっと分かる」
「ええっと……これだけでいいんですか?」
「今ので君を一生幸せにしようと思えるくらいには大満足だし、いいや」
「え…でも…」
「うむ。じゃあ休んでて。それが仕事」
「え?」
「君はこれまですごく頑張ったんだから、次は俺らが頑張らないとな!それに、休むのもちゃんとした仕事だよ?」
「…ありがとう…ございます」
「ああ堅っ苦しい!敬語はいらぬう!ため口で喋りなさいな!」
「え?え?…ええっと、じゃあ…ありがとう……あの、名前は何て言うんで……言うの?」
「ああそういえば言ってなかったな。…俺はレオ・アルラード!レオとか、兄さんとか…まあ好きなように呼んでくれたらいいよ」
「わ、分かった。えっと…レオお兄ちゃん」
「ぐはっ!」
「レオお兄ちゃん⁉」
(い、いや、最初見た時から可愛いとは思ってたけど…無理だって!かわい゙い゙!元から女性の耐性は無いんだよ!…ん?じゃあアザレアさんは何なんだって?ああ、美人だけど子供同士じゃないからけっこう大丈夫。16歳くらいから下は無理)
「ごめんけど、できればレオお兄ちゃん以外で…」
「じゃ、じゃあ…お兄ちゃん」
「うぐっ…あ、ありがとう」
(…レオお兄ちゃん…か……あいつ、元気かな…)
「う、うん、大丈夫」
「……あのさ」
「?」
「…君、名前が無い?」