第11話 自分を変えて君の隣に
「レオ!!」
「あ…ああ…すまん、すまない…レオ…」
「ラーさんは悪くありません!!それにレオはまだ生きてます!!レオのしぶとさを忘れないでください!!」
「ラー、水飲みな」
「ああ………ありがとう、落ち着いた。アザレアとソラとザンザは?」
「あたしはギリギリ動ける。ソラは応急処置をして今は眠ってるよ。ザンザはとりあえず止血だけしておいた。切断を治せるのは…残念だけどレオしかいないからね。さて…レオをどうするか…」
「まずは安全な場所に避難させましょう」
「…どうやら、まずは生き残ることを考えないといけないらしい」
英雄隊は、既に陽栄軍に囲まれていた。
「お前ら、覚悟は?」
「言われなくとも!」
「レオの応急処置が終わるまで持ちこたえな!」
「レオとソラさんを守り抜く」
「ここでやられたら英雄隊の名が廃る」
「その意気だ。よし、やるぞ‼!」
英雄隊が覚悟を決めた時、陽栄軍に魔法が飛んできた。
「これは…一滅砲?」
「魔討隊は魔法をためるのが遅すぎやしないのかい?…よし、応急処置完了」
「アザレアさんの魔力が異常なんですよ。…え、応急処置早すぎません?」
「あたしじゃない…レオの真眼が発動してる」
「…眠ってる時も休めないのか……」
「アザレア、一滅砲で残りの陽栄軍をどれくらい倒せる?」
「一滅砲の名前の由来を忘れたかい?」
「一回で全滅させる砲台」
「そう、全滅さ」
「アザレアはすげえな」
「まあ、ただの努力だから誰だってできるけどね」
「その努力量が凄いんですよ」
「…嬉しいね」
「さてと、2人を運ぶか」
その時、城から魔討隊が出て来た。
「救助しに来たな」
「は~良かった~」
「レオ…終わったよ…」
「…ところで…」
「どうした?」
「皆…動けるか?」
「「「「「無理」」」」」
「だよなあ」
「おーい!魔討隊!すまんが俺らを運んでくれないか?もう動けないんだ」
「英雄隊⁉分かりました。今すぐに………て、何でそこに厄災の前兆がいるんですか…」
「…同じ人間が困っていた」
「厄災の前兆は人じゃありません!そいつに人権は無いんです!知らないわけじゃないでしょう!」
「世界はそう言ってるな…だが、君はこいつが人に見えないのか?」
「ぐっ……厄災の前兆を殺せば、出世が保証されているんですよね…」
「馬鹿野郎!人を殺す気か⁉」
「あなたたちみたいに強い人はいいですよね…俺らは弱くて出世に必死なんです!この機会を逃すわけにはいけないんだ!うおおおおお!!」
その時
「やめろ!!!」
「ッ!」
キルが止めに入った。
「よかった…間に合った…」
「な、何だお前は!」
「ああそうだった、ちょっと待ってろ」
キルは顔を掴むと、顔が取れて、素顔を出した。
「改めて自己紹介する。私の名はアーレルド・クルス!このクルス王国の王子だ!!」
「なっ!?」
「…まじか…じゃあ親子揃って仲間かよ…」
「よ、用件は何でしょうか?」
「レオを殺すのをやめろ」
「はっ⁉しかし…」
「たしかに、人の世では厄災の前兆は人じゃなければ人権も無い。だが!!レオを殺せば私は、俺は!!お前を許さない!!レオは、この俺の命の恩人だ!!!」
「な、なんと………くっ…分かり…ました…やめます…」
「ああ、その者に危害を加えなければそれでいい。英雄隊をよろしく頼む」
「…はい…」
魔討隊は英雄隊を城の病室へ運んだ。
城の病室
「…ラー」
「どうした?」
「今更なんだが…俺のクラスに王子様がいると思うと…怖くなってくる」
「逆に考えるんだ…指導できる俺すげえ!…って」
「なるほど…ところで、キr…アーレルド様?」
「いつも通りため口で、名前は親しみやすいだろうしキルでいいですよ」
「そうか…じゃあキル」
「はい、何でしょうか」
「妙にレオを気にかけてる気がするんだが…何があったか聞いていいか?」
「逆に聞きますけど、そちらのへっぽこ英雄が1週間も忘れてた護衛任務を覚えてますか?」
「その節はこっちのポンコツがすまんかった」
「あれの途中で俺がはぐれたじゃないですか」
「…ああ、あったな」
「俺が迷ってると、5~6体の魔人が出てきたんですよ。魔人が襲ってきた時、ケイソr…レオが助けてくれました」
「…なるほどな、それがあったから変えられずに済んだのか」
「あいつが1番に気付いたからな、そりゃあそうなるか」
「……聞いていいですか」
「何をだ」
「レオの…ケイソレイの…名前について」
「…分かった」
話し終了後
「…そこまで抱え込んでて、何でケイソレイは正気でいられてるんだ…」
「いや、大丈夫な感じに見せかけてるだけだ。あれから口調は変わる、話す時はずっと怯える、それを補う感じ妙に笑う頻度が増える、誰も信じれてない、好きな事をやらない、俺らが見えないところで嘔吐や自傷行為、スキルで無理やり泣こうとするなどなど…よく観察すればいくらでも見つかった」
「そんな…あれ、でもそんなに笑ってなかったような…」
「おそらく…笑えない程精神的に限界が来てる。疲れで一時はずっと猫背だった。最近は鳩胸になったが、体制を変える頻度が高くなっている」
「…ケイソレイ…」
「だけど、それをレオに言うと人違いだって…何でか分かるか?」
「…」
「それをやってるのはケイソレイであり、話しかけたのはレオだからだ」
「ッ!」
「過去を消す為にもあいつは…レオ・アルラードになった」
「それを…俺と同じ14歳が…」
「逃げたかったんだろうな。ちなみに、さっきのが見つかった理由は…おそらく本当は見つけてほしいから。本気で隠そうと思えばスキルで完全に隠せるからな。名前の由来は、あいつが書いてた小説の主人公の名前だ」
「小説?」
「ああ。あいつ、あの事件まで趣味で小説書いてたんだ。今考えると…理想の自分を描きたかったから書いてたのかもな」
「…ありがとう…ございました」
「いや、レオのことを知ってくれてありがとう」
「いえ…」
「…じゃあ、俺は寝る」
「…お疲れ様でした」