第9話 ヤマタノオロチ討伐戦
5日後 東部外壁
「さてと、8時はそろそろだな…おお、早いな」
東部外壁の入り口あたりに2年2組が既に全員集合!していた。
「?あ、あれ…厄災か?」
「いやいやいやそんなわけ…あいつだ…」
「え…うわ、ホントじゃん何であれで生きてんの?」
「さっさと死ねばよかったのに」
「何で生きてんだよ」
「…レオ…」
(…今は護衛対象か…)
「さてと…ガリヤード!カス共全員来たぞ」
「…早いな、分かった」
「皆、挨拶だ」
英雄隊を集めて、ガリヤードは生徒たちに挨拶を始めた。
「よおし、皆集まったな。今日は事前に話した通り、ヤマタノオロチ討伐戦を見学するんだがまず、俺ら英雄隊のたい」
〚…ガリヤード…〛
俺は《真眼・劣》で脳内に直接ガリヤードに言った。
〚今更なんだが、俺を隊長とするのはまずくないか〛
〚…少しでもお前の印象は良くしたほうがいい〛
〚そうか…〛
俺は真眼・劣を解除し、生徒らを威圧した。
「皆久しぶり、改めて自己紹介させてもらう。英雄隊隊長、レオ・アルラードだ。英雄隊は右からソラ・ヴァリアブル、ラー・エルレイド、ザンザ・グラス、アザレア・ランシス、ルート・マサ、ガリヤード・グレイブだ。この方々が大丈夫な時に質問しろ。安全面は大丈夫だ、アザレアとガリヤードが護ってくれる。今日はこの皆を見て楽しんだり学んだりするといい、以上」
生徒は俺の威圧で少し血を出している者もいた。
「おい、レオ」
「お前はこれが人間に見えるのか?命に見えるのか?これまでは英雄隊やキルとかの意思を尊重して殺してないだけだ。傷付けるなというのは無理だな。俺はお前の生徒を護れと言われた。こいつらはお前の生徒じゃない」
「…だが…人だ…」
「この快楽の道化がか?」
「…」
「ほら、挨拶は終わった。行くぞ」
「…ああ…」
俺らは隊服を着た。
「ガリヤード、それに乗せてやれ」
「…分かった。皆、じゃあそれに乗ってくれ」
ガリヤードは生徒を俺が作った馬車に乗せた。
「ガリヤード、お前も乗れ」
「いや、衰えた分頑張らないといけないだろう」
「はぁ…それは自分を削ってあいつを助けた結果だろ?その怪我や衰えを誇れ。それは決して恥じゃない、誉だ。もう…ゆっくりしろ。無理することをあいつは望んでない」
「…ありがとう」
「その言葉は…それまで頑張った自分に言え」
ガリヤードは馬車に乗った。
「よし…行くぞ」
俺らは東部外壁を出た。道中はアザレアが生徒の相手をしてくれていた。
「…大丈夫かい?」
「少し…慣れてますから…」
「悪いね…」
「いや、あれは仕方ないので大丈夫ですけど…」
「?…ああ、ガリヤードとあたしは質問大丈夫だよ」
「ありがとうございます。まず、レオは大丈夫なんですか?」
「?…怪我はもう無いし大丈夫だよ。あの子は異常に回復が早いからね」
「そうですか、なら良かった。遠慮せずに聞きますが、レオは隊長なんですよね?一体どうやって…」
「単純に1番強いってのもあるよ。…今は言えないけど、別の理由もあってね」
「そうか…早く英雄に戻るといいですね」
「ッ!…君、英雄のこと好きだろ?」
「もちろん。この世界を救ってくれる人ですから」
「…まじか…」
「さて、他に質問はあるかい?別の人でもいいよ」
「「…」」
「…まだ怪我が治ってないか…」
「じゃああと1ついいですか?」
「いいよ」
「今回討伐するヤマタノオロチですが、何故討伐するんですか?」
「…とある村の子供が、陽栄軍の襲撃で親が殺されたのを目の前で見ちゃってね…そのまま暴走してヤマタノオロチに顕現して村ごと陽栄軍を壊滅。これ以上被害を出さない為に討伐を国から依頼されたんだ」
「それは…スキルの暴走…?」
「その村の住人は、先代の村長がやった契約でドラゴンや龍に1部だけなれるらしいんだ。その村が守っていた神器を守るためにね」
「…暴走してドラゴンそのものになってしまったのか……神器?」
「たしか…あそこは刀の神器、布都御魂を守っていたはずだよ」
「…もしそうなら、もっと警備が厳重なのでは?」
「…それを上回ってきたのさ」
「…陽栄軍は…あの1ヶ月でどれだけ強く…」
「契約を使ったのもあるかもしれないね」
「…やはり契約か…」
「…しんみりさせちゃったね」
「和ませるのはザンザとお前の得意だろ?」
「そうだったね。じゃあ、ソラの睡眠時間とかザンザとラーの引き分決戦とかいつもの馬鹿騒ぎを話そっか!まずはねえ…」
生徒たちはアザレアのおかげで道中は暇しなかったらしい。
1時間後
「そろそろ、隊長」
ヤマタノオロチが間合いに入った。
「分かってる。戦闘準備!」
全員武器を取った。
「おっと、じゃあ話はまた後だね」
「久しぶりの戦闘だ」
「よっしゃ!いっちょやってやらあ!」
「俺らの連携を見せてやる!」
「せめて、役目分は!」
「…よし…できるだけあいつが分かりやすい動きを…」
「迷惑かけるな、1人でやれ。…《真眼》」
俺は自分に言い聞かせた。
「行くぞ!」
俺はヤマタノオロチへ、その他は俺が作った偽ヤマタノオロチへ向かった。
「あたしらは援護射撃だね。銃はいる?」
「いや、斬撃を飛ばす」
「分かった。さーて、皆も楽しんで学びな!」
ガリヤードたちは戦闘を始めた。
「…」
その頃、俺は既に戦闘を始め、ヤマタノオロチのブレスを手で防いでいた。
「真眼ならこの程度は大丈夫か…さてと、いろいろ調べんとな」
俺は近づいて、ヤマタノオロチの体に乗った。
「…なんか君強くない?ドラゴンの中でも結構上位に来るぞ?どこにそんな強さが…え?」
俺の足元から炎が噴き出すのに気付き、すぐに離れた。
「君そんなことできたのか…いやいやいやいや…いや、こんな強いことあるか?さっきからおかしい…あの火力といい反応速度といい…特殊な村人と聞いたが、元は子供だろ?なんかだんだん強くなってるし…どこに原因が…」
ブレスを避けながら考えていると
「ゔっ…何だ…?」
突然、頭痛が俺を襲った。
〚パパ‼ママ‼皆どこに行っちゃったの‼僕を1人にしないでよお゙‼もう…皆嫌いだあ゙あ゙あ゙あ゙‼‼ゔあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙‼‼〛
「ッ!これは…あの子の…?理性があるのに…この数日間ずっと……1人で……ゔっまたッ…」
〚おいで、ナイト。今日もよく頑張ったね。今日はオムライスだよ〛
〚よ~し、ナイト!今日もパパとどっちが食べるのが早いか競争だ!〛
「これは………いや、でも、急に何で……光ってる…?」
ヤマタノオロチの体の一部がほんの少し光っているように見えた。
「………神器…?」
動物(龍なども含む)は強い生物や物を食べると、それに応じて強くなったりする。
「…なるほど…村にあった神器を食べたのか………分かった。≪虚の宴≫」
俺はゆっくり近づき、ヤマタノオロチの頭にそっと触れ、ゆっくり撫でた。すると、暴れまわっていたヤマタノオロチの動きが止まった。
「…ナイト。いままでよく頑張ったね。美味しいご飯作っておいたよ」
〚ッ!〛
「ナイト!今日もご飯競争しよう!今日はパパ、負けないぞ~!」
〚…パパ…ママ…〛
「「ほら、おいで」」
〚ッ!…うん!〛
すると、ヤマタノオロチの体が消えた。その様はまるで開放されたかのように…消えるその瞬間、その顔は無邪気に笑うように見えた。
「…楽しんでな…」
地面に降りた後、俺は
「ゔお゙え゙…げほっげほっ………親になりきるのは気色悪いな……。吐血か、前よりはマシか…いや、体力を全て戻せば結構使えるか…?」
俺は嘔吐と吐血をした。吐瀉物は《真眼・劣》で消し、血を袖で拭いてから血の付いた部分を引きちぎって、別の場所を薄くして縫い直した。
「さてと…あっちは…」
その頃、皆は既に帰っていた。
「よし、指示通りだな」
俺はあいつらに「俺が作る分身はいい感じに必殺技やったら壊れるようになってるから。終わったら先に帰っといて」と指示しておいた。
「さ~てっと、俺も帰るか。あ、その前に」
俺はヤマタノオロチが開放された所へ近づくと、1本の刀があった。
「…この刀…折れてるし、錆びてる…嘘だろ?原因がこれ?神器ちゃうんかい…まあ、他に見当たらないし…ちょっと調べてみるか」
俺は刀を≪総黒渦≫に入れて家に帰り、刀を調べた後に寝た。