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黒の僧侶  作者: 吉田何某


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第九十六話 一刀入魂

勇者一行が見守る中、ガンテツは仕上げの研磨を終え、ついにその時が来た。


「………完成じゃ」


四人の方へと振り返るガンテツの手には、眩い光を放つ一本の剣。


刀身は澄み渡る空を映したように、透き通る青銀色に輝き、その稜線は凛とした光を放っている。

柄には鮮やかな紅が差し込まれ、そして鍔は、竜を象った見事な意匠が施されていた。

鍔の中央には、竜の頭が威嚇するように口を開け、そこに宝玉が嵌め込まれ、燃え盛る瞳のように輝いていた。

竜の尾と鱗が精緻に絡み合い、刃の根元を巻き付くように守り、見る者に畏怖の念を抱かせる。

切っ先は鋭く、まるで天をも裂き、大地を貫くような威風を漂わせている。

見惚れるほどの美しさと、ただならぬ気迫が、その刀から溢れ出していた。


その刃を見た四人は、息を呑み、言葉を失った。


ガンテツはゆっくりとムサシに歩み寄り、その刀を手渡す。


「最高の素材に、わしの全てを注いだ。小細工は一切ない。切れ味を極限まで追究した刀じゃ。名前は決めとらん。好きに付けよ」


ムサシは、刀を握りしめた瞬間、悟った。

村政宗のような軽さはない。

しかし、この刀は——


次元が違う。


「……あんたの名前を入れてぇ」


「……好きにせぇ」


「“ガンテツ”って、そのままでも刀の名前として普通にカッコいいと思う!」

とバーバラが乗ると、


「確かに!私の頭にパッと浮かんだ”リュウキチ”よりも、その刀に相応しいと思うわ!」

と、真顔で言うアリシア。


(アリシアちゃんて、とりあえず"キチ"が好きなんだね。そのうちクリスくんのことも「クリキチ」とか呼ぶのかしら……)

バーバラは心の中で苦笑した。


「確かに、僕の思いついた”ザ・ソウル・オブ・ガンテツ〜切り尽くすこと鬼の如し”よりも相応しいと思います」

クリスも真顔で語り出す。


(だからさ……なんで毎回副題まで考えるのよ……クリキチくん、マジキチです)

バーバラは額を押さえた。


「……なるほどな……」

ムサシが呟くと、


(え?いやいや、影響されないでよダーリン!)

「そしたら、“ガンテツ”に竜っぽさも加えたら良いんじゃない!?」

バーバラは慌てて軌道修正する。


ムサシは真剣な表情で呟いた。


「………竜巌徹」


「うん!良いと思う!」

「素晴らしい名前です!」

「決まりね!」


一行が口々に称賛する中、ガンテツはゆっくりと頷いた。


「……うむ」


そして、ムサシの目をじっと見据え、


「頼んだぞ」


とだけ告げた。


ムサシは瞳に感謝と誇りを宿し、黙って頷いた。


そして、これまでずっと使い続けてきた愛刀「虎鉄」を鞘ごと腰から抜き取った。


「こいつを、預かっといてくれねぇか?俺の大切な刀だ。大魔王を倒し、必ずこいつを迎えに来る。その誓いだ」


コジーロは黙って刀を受け取り、静かに一言だけ告げた。


「………受け取った」


「ありがとよ。さて、んじゃ行くか」

ムサシが仲間の方へ振り返ろうとしたその時、


「待たんかい。このまま帰すとでも思うか?」

コジーロが声を張った。


「ん?まだなんかあるのか?」


「………飲みにいくに決まっとるじゃろが!!こんな一世一代の大仕事を片付けたのじゃ……わし、疲れた!お主ら、付き合わんなど言わせぬぞ?老人を労うのじゃ!!」


「あぁ、そういうことか。それもそうだな」


「もちろんです!今言おうと思ってました!」

アリシアが慌てて声を上げる。


「是非お供させてください、ガンテツさん」

クリスも真面目に応じる。


「行きましょ行きましょー!行きつけのお店とかあるんですか?」

バーバラもノリノリだ。


「うむ!ついてこい!!」

ガンテツは胸を張り、家の外へと足を進めた。



外はすっかり日が暮れていた。

道中、ガンテツに気づいた里の住民たちがざわめき出す。


「……え?ガンテツさん!?なんで!?」

「おい!ガンテツさんだ!ガンテツさんが帰ってきたぞ〜!!」

「うそ!?刀、打ってください!!パンツ見せますから!!」


「元気にしとったか〜お主ら!心配かけてすまんかったの〜!話はまた今度ゆっくりさせてくれ〜!」

ガンテツは大声で応えつつ、止まらず進んでいく。


「凄い、本当に人気者なのね……」

アリシアが感心した声を漏らす。


「当たり前じゃ。わしを誰じゃと思っとる」

ガンテツはドヤ顔で胸を張る。


(さっき”パンツ見せますから”って聞こえたの、気のせいかしら……)

バーバラは心の中で呟く。


やがて一行は、「ヴィーナス」という店に到着した。


カランコロンッ——


ガンテツが扉を開けると、店内から厚化粧にムッチリとした体型でピチピチのドレスを纏った若い女店員が出迎えた。


「いらっしゃいませ〜」


──そこは、我々の世界で言う、"キャバクラ"であった。


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