第九十四話 恋と友情
橋の上でキスを続けるムサシとバーバラ。
「………そろそろ、行かないとだよね………アリシアちゃん、心配だし」
「そうだな……」
「じゃあ、もう一回だけ……」
二人は、再び深い口づけを交わす。
(……あぁっ……もう、ダメ………)
長いキスを終え、二人は名残惜しそうに宿屋へ向かった。
*
宿屋に入ると、ロビーの待合席にアリシアとクリスが座っていた。
「アリシアちゃん!大丈夫なの!?」
バーバラが駆け寄る。
「うん……」
と、アリシアは立ち上がるやいなや、
「ごめんなさい!!」
と、バーバラとムサシに頭を下げた。
「……どうしたってんだ?」
ムサシが困惑しながら尋ねる。
「実は……体調悪くなったっていうのは嘘で……本当は……クリスに嫌われちゃったんじゃないかって、ずっとモヤモヤしてて……その、なんて言えばいいのかな……」
珍しく端切れの悪いアリシア。
「………」
バーバラは察した。
「らしくねぇな。ハッキリ言えよ」
ムサシが促す。
「……本当に、勇者として、パーティのリーダーとして……失格だと思うんだけど……私…………
クリスのことが好きなの!」
バーバラとムサシは目を見開いた。
クリスも覚悟を決めて立ち上がる。
「僕も、同じです。アリシア様のことが、好きだ。大魔王を倒す旅をする聖職者の在り方としては………不適切だと思います。しかし、この気持ちはもう……どうすることもできない……!」
「…………」
ムサシとバーバラは、興奮を抑えながら、最後まで黙って聞く。
「ですので……これからも旅を共にするお二人には、隠すのではなく、やはりきちんと伝えるべきだと思い……アリシア様と、ここでお待ちしておりました」
「……そういう、わけなの……」
アリシアは顔を赤くして言った。
しばしの沈黙。
そして——
バーバラとムサシは目を合わせ、笑った。
二人の意外な反応に困惑するアリシアとクリス。
「俺たちもだ」
「………え?」
呆気に取られるアリシア。
「さっき、バーバラに告白した。んで、オッケーもらった」
バーバラは顔を真っ赤にしながら、幸せそうに微笑む。
「………な、なんと!!」
クリスが叫ぶ。
「もう、本当に……一生分の幸せもらっちゃいました……」バーバラが頬を染める。
「ふざけんな。もっと幸せにしてやるよ」
ムサシが堂々と言う。
バーバラは上目遣いでムサシを見ながら、
「じゃあ……毎日チューしてね」
と、愛らしく言った。
「お、おう!あたりめぇだ!」
ムサシは顔を真っ赤にして答えた。
アリシアの顔は一気に晴れ、
「あっはは!!もう……本当に最高ね、あなた達って!おめでとう!!やった〜〜!!」
と、大喜びした。
クリスはその場に膝をつき、手を組み、目を閉じた。
(主よ……全てに……感謝致します)
「アリシアちゃんとクリスくんも、おめでとう!!あ、そうだ、お好み焼き、二人の分も包んでもらったの!良かったら部屋で食べて!」
バーバラが笑顔で手渡した。
アリシアはバーバラに抱きつき、
「バーバラ……本当に、大好き!!一生友達よ!!」
と涙を滲ませた。
「こっちのセリフ。私他に友達いないんだから、絶対見捨てないでよね!」
バーバラも涙を浮かべる。
ムサシは頬を釣り上げながらクリスに拳を差し出した。
クリスは微笑し、その拳に自分の拳を当てた。
こうして——
勇者一行は、二組の若いカップルという新たなる側面を得て、宿屋の一室へと向かっていった。




