第八十七話 洞窟事変
「あ!あそこ、きっと洞窟の入り口だわ!」
遠方に見える洞穴を指さし、アリシアが声を上げる。
「本当ですね。ムサシさんとバーバラさんにもお声がけしましょう」
アリシアはワクワクした顔で頷き、二人に声をかける。
「ムサシー!バーバラー!洞窟行くわよ〜!!」
呼ばれた二人は、ちょうど駆逐劇がひと段落ついたところで──
「洞窟だ?面白そうじゃねぇか!」
「行こ行こ〜!」
ノリノリで返事をした。
一行は洞窟の入り口へと向かう。
そこは山肌にぽっかり空いた穴で、微かな熱気が漏れていた。周囲には倒れた石柱やツタ、そして「この先、危険」と書かれた古い石碑があった。
「みんな!「この先、危険』だって!」
嬉しそうに報告するアリシアに──
「そうか!面白そうだな!早く行こうぜ!」
ムサシが少年のように胸を躍らせる。
(ムサシさんのこういう時のわんぱく少年感、可愛くて好きぃ〜。ま、全部好きだけども!)
バーバラが心の中で盛り上がる。
(主よ…洞窟の危険から、アリシア様をお守りください)
クリスは静かに祈る。
一行はゴツゴツした一本道を、襲いかかるコウモリの魔物を瞬殺しながら進む。
やがて小さな分かれ道にたどり着いた。右は下り坂、左は上り坂で風が通る。
「どっち行こっかー?」
「んなもん、下に決まってんだろ。上行ったら外に出ちまいそうじゃねぇか」
「賛成ですムサシさん!こっちは風がびゅーびゅー吹き抜けてるし……」
バーバラはスカートをそっと押さえながら言った。
クリスはその意味を即座に察し、顔を赤くしながら
「……では、下に行きましょう、アリシア様」
と言う。
「はーい」
冷たく返すアリシアを見て、クリスは焦る。
(あ!まずい……)
下り坂を抜けると、地熱の高い空間に出る。
硫黄臭が立ち上り、足元はぬかるんでいた。
ムサシとバーバラが魔物を蹴散らしている隙に、クリスが弁解を始める。
「あの、アリシア様!先ほどのは、その……誤解です!」
「何のこと?」
「いえ…ですから、その……」
「別に気にしてないよーだ。どうせ男なんてみんなスケベなんだから。可愛い女の子のなんて見たくて当然よ」
「ですから!それが誤解なのです!!僕は——」
と、クリスが何かを言いかけた時——
「きゃあ!」
バーバラがぬかるみに滑り、ピンク地に白のハート柄のパンティを大っぴらに晒して尻餅をついた。
クリスの顔は溶岩のように赤くなった。
「……もう、知らない!!」
アリシアはぷりぷりしながら早歩きでクリスを置いていく。
「ア、アリシア様ぁ!!」
クリスは走り出し、ずっこけ、ぬかるみをヘッドスライディングしていく。
「何よ!?」
振り返ったアリシアの脚に、勢いよく滑り込む。
「きゃっ!!」
アリシアはクリスの顔前に尻餅をつき、純白のパンティを見せつけた。
お洒落な刺繍までバッチリと。
その時──
ムサシの立っていた足元、岩場の割れ目から、ボコッと何かがせり上がる。
「なんだ?」
ムサシが足元を見ると、そこからマグマ魔人の腕が生えてきて、地面を割って体を持ち上げてくる。
「おお、やっと強そうなの来たな!」
ムサシは剣を構えたが、その瞬間──
ズバーン!!
後ろから放たれた黒い閃光が、魔物を消し飛ばした。
ムサシは黒いクリスを見てぼやく。
「なんだよ、そんなピンチでもねぇだろ……てか…きったねぇな、あいつ」
バーバラは魔法でスカートをクリーニングしながら
(これでよし!汚い服でムサシさんの横歩けないもの!)
と杖で飛ぼうとした瞬間──
「バーバラ!私のもお願い!!」
スカートの汚れたアリシアが駆け寄る。
「はーい!」
バーバラはアリシアのスカートをクリーニングする。
「ありがとう!バーバラ!」
その瞬間、泥に塗れたミイラの魔物がアリシアとバーバラに襲いかかる。
バーバラはすかさず攻撃魔法の詠唱に入る。
「シビ・レロ——」
「バーバラ様〜!!僕にもお願いします〜!!」
ミイラの正体は覚醒の解けたクリスだった。
「え、クリスくん!?わかったから!ストップ!!」
バーバラが泥んこミイラを止め、クリーニングを施す。
(ったくもう……。だけど、今回は……忘れてくれて本当によかったわ!)
アリシアは、クリスの顔の真ん前でM字開脚したことを思い出し、顔を真っ赤にしながら安堵するのだった。




