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黒の僧侶  作者: ヨシダール


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第八十三話 宴(メインからデザートまで)

「テリオス、水を飲みなさい」

モルガンの声に、テリオスは

「ハイ!お母サマ!」

と、勢いよく水を飲んだ。


モルガンは宙に浮かせた椅子を、バーバラとアリシアの間(ややバーバラ寄り)に置き、


スタンスタンスタンスタンッ!


と、テーブルに料理とグラスを並べると、ドヤ顔で腰を下ろした。


「ねえ、ママ……普通に給仕の人達に運んでもらえば良いじゃん……」

バーバラの呟きに、モルガンは鼻を鳴らす。


「ふん、私は酔っていても魔法を完璧に使えるのよ。そろそろ母を敬う時が来たようね、バーバラ」

女王は確かに酔っていた。


「は?そんなん私だってできるし。ほおら」

バーバラも皿とグラスを宙に浮かせ、さらに反転させて中身をこぼさずに制御してみせた。


「危ない危ない!怖い怖い!」

アリシアが叫ぶ。


「ぐぬぬぬ……また減らず口を……」


「バーバラ!やっぱりキミは飲み足りないんダヨ!さあさあ飲むがイイ!」


「いいからあなたは水を飲んでなさい!!」

バーバラとモルガンが同時に叫ぶ。


「ヒィっ!!」

テリオスは水を飲んだ。


モルガンが皆に向き直る。

「料理の味はどうだ?」


「ホンっっっとに、美味しいです!!」

「大変美味しく頂いております、モルガン様」

「うめぇし食い放題だし、最高だぜ!もぐもぐ」


「それは何よりだ」


そう言うと、モルガンは娘に視線を送る。


「バーバラも、久しぶりの家庭の味はどうかしら?」


(か、家庭の味……)

アリシアは心の中でつぶやく。


「まあ、前よりは美味しく感じるわね」

バーバラが少し頬を赤らめて答える。


(……よし、いいぞ……シェフ!)

「そうかい。ふふふっ。ならば次のメインで、度肝を抜いてやろうではないか——給仕長!この円卓に、最高の赤ワインを用意せよ!!」


「かしこまりました!モルガン様!」


やがて、熟成された牛フィレ肉と最高級フォアグラが抱き合わせのローストとして運ばれ、ヴィンテージの赤ワインがグラスに注がれた。


「さあ、召し上がれ」


一同が口に運ぶ。


「あぁ……」

アリシアは天井を見上げ、目を閉じる。

「……おぉ、主よ……」

クリスは、神に感謝を捧げた。

「なんじゃこりゃあああ!!」

ムサシは叫び、二口目で食べ終えた。


「ムサシサン!ボクのも〜、食べますカ!?」

「お前も食え!こいつは食ったら強くなるに違いねぇ!」

「エッ!?ナント!デハ、イタダキマス!!」


完全に赤ワインに飲まれたテリオス。


モルガンは息子を諦め、娘に集中する。


「バーバラ、どうかしら?」


「うん……これは本当に美味しい!」


「そうでしょう!?」


「うん。でもママが作ったわけじゃないんだから、そんなドヤらないでくれる?」


モルガンの心にグサッ!こめかみがブチッ!

最高級の赤ワインを一気飲み干し——


「……ママは忙しいのよ!!ママだって、時間があればこれくらいできるんだから!!」


「………え?」アリシア、

「………おや?」クリス、

「モグモグモグ」ムサシ。


「オーイ!サイラス〜!イツモノケンカハジマリソウダ〜!」テリオス。


サイラスは兵士たちに向かい

「お前達!飲み足りないから混乱魔法にかかったのだ!飲めぃ!」

と、パワハラ発動中。


「そんな簡単に作れるわけないでしょ!シェフに失礼ね!」

「あなたって…ホントに可愛くないわね!!」

「しょうがないじゃん、ママの娘なんだから!!」

これが、アルコールの力により制御が解かれたモルガンの真の姿だった。


アリシアとクリスが呆然と親子喧嘩を眺める中、

ムサシがグラスを置いて口を開く。


「おい、バーバラ。母ちゃんはお前に喜んでもらいてぇんだ。そんな言い方すんなよ」


「……ム、ムサシ……」モルガンの瞳に涙がにじむ。


(ホント、たまに急に良いこと言い出すから憎めないのよね…)

アリシアが心中で呟く。


クリスはムサシを尊敬の眼差しで見つめる。


バーバラは、焦る。


(やってしまった……計画が……でも、まだ間に合う!)


「……ごめんなさい。つい」


そしてモルガンを見て、震える声で告げる。


「ママ……ごめんなさい。……ママには、本当に感謝してるの……私を強くしてくれて……みんなと仲間でいられるような人間に育ててくれて……」


最初は芝居のつもりだった。

しかし、言葉は心からの想いに変わり、バーバラは泣き出した。


「……バーバラ……」

モルガンの涙が溢れる。


そして、デザートが運ばれてきた。


「私……本当に幸せよ!!生まれ変わっても……またママの娘が良いんだから!!」


モルガン、ついに号泣。

威厳は消え、ただ一人の母親の姿がそこにあった。


「……バーバラ……僕もだ!!ハグをしてくれ!!」


「ちょっとテリオス!鼻水ついてる!」

と言いながらも、バーバラは優しく弟の背中を抱き返した。


(……こんな日が……こんな日がくるなんて……!神様……ありがとうございます!……)

モルガンの心は震えた。


アリシアも涙を流した。


クリスは静かに祈る。

(……主よ……やはりあなたは、本人には想像もつかないような仕方で……人を救いに導いてくださるのですね……)


ムサシは三人の家族を見つめ、微笑を浮かべる。


「うおおおお〜!!このサイラス、感涙が止まりませぬ!!モルガン様!バーバラ様!テリオス殿!あなた方に忠誠を誓ったこの命こそ、我が誇りであります!!」


兵士たちも涙を流し、明日からまたアヴァロットのために尽力する気持ちを新たにした。


こうして、様々な愛と、とろけるようなデザートの甘さに包まれ、宴会は幕を閉じた。


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