表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の僧侶  作者: ヨシダール


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/89

第八十話 剣士、暴走する

「さてと!もう日も暮れてきたことだし、モルガン様、明日改めて謁見させて頂いてもよろしいですか?」


アリシアがそう言うと、


「何を言っている。そなた達にはこの城で最高のディナーと寝室を用意するに決まっておろう。帰るなど、私が許さぬ!」


再び堂々たる女王口調に戻ったモルガン。


「え!?良いんですか!?やった〜!!」

「ありがとうございます。モルガン様」

「っしゃあ!たらふく食うぜ!!」

「城のご飯、久しぶりだ〜。あんまり好きじゃなかったけど、今なら美味しく感じるかも」


(……うぅ……)


バーバラの一言が、思いのほか母の心を抉った。


だが、モルガンは咳払いひとつで切り替え、語調を整える。


「うむ、楽しみにしておれ。──だがその前に、やらねばならぬことがある」


彼女は振り返り、重々しく命じる。


「サイラス。テリオスの処分について議会を開く。テリオスが戻り次第始めるゆえ、準備を進めよ」


「……はっ!」


「そなた達も参加してくれぬか?いや、してくれ。しなさい!」


「は、はいっ!」


「承知いたしました」


「ああ、そういやアイツのことぶっ殺すって約束したの忘れてたわ」


「ちょっと!脳筋は城では黙ってなさい!!外でも!!」


「んだとコラ!?」


(え!?ムサシさんもしかして……私を刺そうとした弟への復讐的な!?きゃ〜!!……って、喜んでる場合か!!)


「はい、そこまで。シャラップ」

と、いつも通りにクリス先生が絞める。


「……くっ……くっふっふっ!!なんと愉快なパーティよ!!深刻な話の最中に漫才とは……そうでなければ、世界など救えんか!!あっはっは!!」


「……ママ……素が出てる、素が」


モルガンは照れたように咳払いをして、


「ゴホン……失礼。とにかく、同席してくれたまえ」



やがて、テリオスがママさんの店から帰還。


城の評議の間では、女王直属の幹部たちと、アリシア一行による議会が開かれた。


議長が席を正し、口火を切る。


「では、まず当時の様子を、当事者の皆さまにお伺いします」


テリオスが重く口を開いた。


「僕は……敵から混乱魔法を受け……目が覚めたら、女王を刺していました……」


サイラスが補足する。


「しかし他の兵士たちは、“勇者をやれ”という指令を受け、全員がアリシア様に襲いかかったのです」


バーバラが言葉を選びながら、告白する。


「……私は、ママと一緒に空中でエルギーノと戦っていた時……背中に爆撃を受けました………テリオスから」


テリオスは俯いたまま、言葉を発さない。


「つまり、テリオス様だけが“勇者”ではなく“バーバラ様”を狙ったと。なぜですか?」


張り詰めた空気を裂くように、モルガンが低く呟く。


「混乱魔法を受けた者は、通常、術者の指令に従う……だが、強い私怨があれば、目の前にその対象がいた場合、命令を無視して襲うこともある」


「……え?……それって、つまり……」


アリシアが堪えきれず声を漏らす。

クリスとムサシは黙ったまま見守っていた。


テリオスが、静かに下を向く。

「……そういうこと、なんでしょうね」


「……テリオス?」

バーバラが、呆けたように言う。


「……なら、仕方がないかもしれません」


「……どういう、こと……?」


「僕は……バーバラが……その才能が……ずっと疎ましかったんだ!!物心ついた頃から、ずっとだ!!」


「は!?なんでよ!?あなたの方が優秀だったじゃない!ママにも褒められてばかりで……私の方が羨ましかった!!」


「うるさい!黙れ!!……お母様が僕に優しかったのは、姉さんほど厳しくする“価値”がなかったからだ!」


「テリオス、それは──!」


モルガンが割り込もうとするも、彼は振り切るように言い放った。


「いいんです。お母様は、正しいことをしたまで。バーバラは、あなたを超えた……僧侶の力まで使える至高の魔法使いとなった。……それが、すべてです」


バーバラの目から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。


「……そんな……っ」


アリシアは目を潤ませ、

クリスは目を閉じる。

ムサシの目だけが、怒りで鋭く光っていた。


議長が静かに口を開く。


「……話を戻させて頂きます。その後の経緯は?」


「バーバラが攻撃を受けたことに気を取られた私が、魔王から一撃を受け、落下。そして、テリオスの目を見て“危険”を感じ、バーバラの前へ走り、そして………」


モルガンの声には、かすかな震えが混じっていた。


テリオスは、堪えきれず涙をこぼす。


「……わかりました。これより、テリオス様の処分について議論を──」


「──その必要はねぇよ」


低く、はっきりとした声が議場を貫いた。


静かに立ち上がるムサシ。


会場がざわめく。


「ム、ムサシさん……?」


「ちょっと!?何考えてるのよ!!」


「君!下がりなさい!!」


「うるせぇ!!」


その一喝に、場の空気が一瞬凍る。


ムサシはテリオスに近づき、睨みつけながら言い放つ。


「おい。お前のこと、ぶっ殺してやるって言ったよな。面貸せや」


テリオスも睨み返す。


「……殺すなら、さっさとやれよ!!」


「フン。ただ殺すだけじゃつまんねぇ。勝負だ。俺と真剣勝負しろ」


「……なに?」


「いい加減に──!」


「アリシア様。……少し、様子を見ましょう」


クリスの落ち着いた声が割って入り、アリシアが驚いた顔で息を飲む。


「おい、稽古場あんだろ? 案内しろよ、女王」


「貴様ッ!無礼な──!」


「……良い」


「モルガン様!?」


「……良いのだ。案内しよう。──着いてこい」



道中──


「あぁ……胃が痛い。クリス、回復お願い……」


「……申し訳ありません、アリシア様。胃に効く魔法は……存在しません……」


(ムサシさん……私のために。でも、弟を……殺さないで……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ