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黒の僧侶  作者: ヨシダール


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第七十五話 混乱の戦場

「さあみんな!ぶっ飛ばすわよ!!」


アリシアは魔剣アルファ・オメガを抜き──


「モエ・ソード!!」


灼熱を纏わせる。


鋼の剣とは比べ物にならない熱量に、アリシアの瞳も輝きを増す。


「この子、凄い……!」


空中で杖に乗るバーバラが声を上げる。

「ムサシさん!アリシアちゃん!」


両の手を二人に向けて伸ばし、詠唱する。

「ツヨ・ナーレ!」


ムサシとアリシアに力がみなぎる。


続けてクリスが冷静に補助魔法を重ねる。

「ここで一度、掛け直しておきましょう。ハヨ・ナリム!」


速度強化が全員に行き渡り、戦場に疾風が巻き起こる。


「俺は左だ!」

ムサシが声を上げ、二刀を構え駆け出す。

「いくぜぇ!!」


ズババババーーーン!!


飛び交う二連の斬撃が、左翼の魔物を切り裂いていく。


「ギャーーッ!!」


「ムサシさん素敵〜〜!!」


テンション急上昇のバーバラが右翼に魔法を放つ。


「私は右いきまーす!!ハジ・ケローガ!!」


エネルギー爆弾が炸裂し、右側の魔物が吹き飛ぶ。


「ギョエ〜〜〜!!」


「じゃあ私は真ん中ね!!」


アリシアが燃え盛るアルファ・オメガを振り抜いた。


「モエ・スラッシュ!!」


キュイーーーン!!


炎の斬撃が火の鳥の如く飛び、中央の魔物たちを焼き払う。


「イヤダ〜〜〜〜!!」


「この子やっぱり凄い!!」

アリシアはキラキラした目で魔剣を見つめた。


──空中。


「……どうすっかなぁ、これ」

エルギーノが面倒くさそうに呟く。


地上では、サイラス率いる兵士たちが呆然と一行の戦いぶりを見つめていた。そこへ——


「サイラス、戦況は?」


モルガンとテリオスが到着する。


兵士たちは道を開け、二人の視界が開かれた。


「……ご覧の通りです」


地上では、勇者達の化け物じみた猛攻が続いていた。


「へっ、やるじゃねぇかアリシア!負けてたまるか!!」

ムサシが暴れれば、


「ムサシさんが一番ですよ〜!!」

バーバラが叫び、


「別にあんたと競ってるわけじゃないから!!」

アリシアがツッコむ。


「ユルシテクレ〜〜!!」

魔物たちはなすすべもなく薙ぎ払われていく。


「こ、これは……」

驚愕するテリオス。


「……ふふっ、やるではないか」

モルガンが思わず口元を緩める。


一方エルギーノは頭を抱えていた。


「多分、攻撃魔法は全部あの盾に吸われるんだろうな〜。しかも反撃ビームつき。後衛、完全にゴミじゃん。……うーん……」


──ドカスカバッコーーーン!!!

「ギャ〜〜〜〜!!」


「……背後から狙ってみるかぁ。おい、魔法打って〜」


後衛の魔物が魔法を一斉に発射。


それと同時に、エルギーノが敵陣の方へ向かって、目にも止まらぬ速さで飛び出す。


「奴を撃てぇ!!」


サイラスの掛け声と共に、魔法兵達が一斉に火球魔法をエルギーノに向けて放つ。


しかしエルギーノは難なくかわしながら、アリシアが魔物たちの魔法攻撃の方向にヒノキチを構えている隙に、彼女の背が射程に入るまで突き進む。


「くそっ!なんて速さだ……!」


そして次の瞬間──


「ライトニング・デス」


エルギーノの詠唱と共に、黒い稲妻がアリシアの背中に向けて放たれる。


「まずい!」

クリスが叫ぶ。

(おそらくこの角度では、魔法がアリシア様に……!)


その時──


「シビ・レローガ!!」


モルガンの雷撃が黒い稲妻に衝突し、相殺した。


「モルガン様!ありがとうござ──」

クリスの声が途切れる。


モルガンが防衛していた隙に、エルギーノは兵士たちの頭上に移動し──


「キガ・フレーロ」


「しまった……!」


兵士たちの肩がピクリと震え、その目に狂気が宿る。


「勇者をやれ」


エルギーノの声と共に、剣を抜いた兵士たちが、一斉にアリシアへと襲いかかる。


「何をしている!」

サイラスが叫ぶが止まらない。


「混乱魔法だ、サイラス!意志の弱き者は抗えん!」

モルガンが詠唱に入りながら、叫ぶ。


「クリス!!」


「はい!シズ・マ——」

クリスの詠唱が終わらぬうちに──


「君ちょっと寝ててねー」


エルギーノの手から、黒い稲妻がクリスに向けて放たれる。


その直後、モルガンの火球がエルギーノの腕を吹き飛ばす。


しかし──


ビリビリビリ!!


「ぐああぁっ!!」

稲妻はクリスに命中し、膝をつき、倒れた。


「……くっ……!」


「セ〜フ」


吹き飛んだ右腕は瞬時に再生し、エルギーノは魔物たちの群れの方へと戻っていく。


「クリス!!」

アリシアが振り向き、倒れる彼を見て叫ぶ。


──だが。


混乱した兵士たちが剣を構えて迫ってくる。


「アリシア!兵士たちは混乱状態だ!標的はそなただ!」


「っ……!」

(魔物の群れはまだ半分残ってる。ヒノキチを向こうに構えてないと、魔法攻撃を防げない……)


──しかしここで、アリシアはふと閃く。

(ダンジョンでムサシを味方と認識したとき、攻撃をやめた……なら!)


「クリス!!仰向けになって!!」


クリスはその意図を察し、痺れる体をなんとか反転させた。


「ムサシ!兵士たちは混乱中!峰打ちで!」


「おう!……バーバラ、任せたぞ!!」


「はいっ!!」

(一人か……でも、やるしかない!!)


アリシアが駆け抜ける。


その瞬間──


仰向けのクリスの視界を、ショッキングピンクの布と美しい脚が通り過ぎる。


──────ビリリッ!!


白銀の髪が漆黒に逆立ち、目には真紅の瞳と殺意が宿る。


全身から黒いオーラを放ちながら立ち上がった、その時──


「クリス!!兵士たちは私の味方よ!混乱してるだけ!敵は魔物!!」


「……承知した」


(届いた……!)

アリシアの瞳が喜びで潤む。


──空中でその様子を見ていたエルギーノは、呆けたように呟いた。

「……今度はなんだよ」


「まあ、こりゃピンチにしか見えねぇだろうな!暴れてこい!!」


「クリスくん黒くなった〜〜!!やった〜!!」


モルガンはただ、目を見開いたまま呟いた。


「……クリス……やはり、お前は………」

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