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黒の僧侶  作者: ヨシダール


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第六十六話 魔剣

漆黒の剣を見つめるアリシアとムサシ。


その背後で、クリスとバーバラが静かに見守っていた。


「……勝っちゃった」

バーバラが、ぽつりと呟く。


「ええ。やりましたね」

クリスも、安堵の笑みを浮かべた。


「女の剣士って……私のことかしら?」

アリシアが黒剣を見つめたまま言う。


「少なくとも俺じゃねぇだろ」

ムサシが肩をすくめた。


「まあ、そうよね。じゃあ──私がもらうわよ?」


「おう」


アリシアが静かに剣に手を伸ばし、それを握った──瞬間。

漆黒の剣が淡く光を放ち、まるで聖剣のような姿へと姿を変えた。


「えっ!?何!?変わったんだけど……!」


名を──「アルファ・オメガ」


聖剣にも匹敵する力を持つ、伝説の魔剣。

だが、心に“真の正義”を宿す者でなければ、その魔力に呑まれ、やがて魔物と化す。

黒騎士こそ、かつて力のみを求め、この地で魔剣を手にした者の“成れの果て”だった。


「でも……触れてるだけで分かる。すごい剣だわ」


アルファ・オメガの切れ味は極上。

さらに、剣に魔力を宿せば、その属性威力は通常の倍となる。

魔法剣を主軸とするアリシアにとっては、まさに理想の剣だった。


「そうか。良かったじゃねぇか」

ムサシはうなずく。

そこには、剣士としての共感が滲んでいた。

名刀を手にしたときの、あの感覚──それは剣士だけが知る確かなもの。


そこへ、クリスとバーバラが歩み寄る。


「アリシア様、その剣は……?」


「黒騎士の剣よ。私が握ったら、こんな風に変わったの。すごい剣よ!」


そう言って、アリシアはこれまで旅を共にしてきた"鋼の剣"を手に取った。

それを胸元に掲げ、一礼すると、魔法の鞄に静かにしまった。


その姿を見たムサシは、どこか誇らしげに頬を釣り上げた。


「じゃあ、行きましょうか!」


アリシアの勇ましい声に、一同はうなずく。


誰も言葉にはしなかったが、考えていたことは同じだった。


──黒騎士との死闘の中で、アリシアは勇者として覚醒した。


不死鳥のヒノキチという最強の盾を得て、戦闘の最前線に立つだけでなく、仲間全体を俯瞰する力を手に入れた。

最適な指示、冷静な判断、そして揺るがぬ信念。

アリシアは名実共に、“パーティのリーダー”として相応しい存在となった。


(……ヒノキチがアリシア様を強くしたのは確かだ。でも、本当に大きいのは──聡明な勇者にこそ相応しい盾を、彼女が手にしたこと)


(悔しいが……こいつの指示なら、悪くねぇ。だが──剣じゃ負けねぇぞ、アリシア)


(……私、何をうじうじしてたんだろ。家出とか、どうでもいいじゃない。こんなすごい勇者の仲間なんだもの。アリシアちゃんは、私の誇り。……ママに胸張って、顔見せてくるだけだわ)


そして──


最強の盾に続いて、伝説の魔剣までも手に入れた勇者アリシアは、仲間たちと共に、目前に迫る魔法王国アヴァロットへと、堂々と歩を進めていった。



──その頃。


魔王城。

四魔王の間。


「エルギーノ様!プーゾが、勇者一行に撃退されました!おそらく、盾職人とも接触したものと思われます!」


配下の魔物が、荒い呼吸のまま報告する。


だが、その報を聞いた四魔王エルギーノは──

肘をついたまま、あくび混じりに返した。


「……あ〜、そう。まあ、仕方ないんじゃない?“仕事させろ仕事させろ”ってうるさかったから、適当にあの山に行かせただけだし」


「は、はあ……」


部下は戸惑いながらも続ける。


「また、アヴァロット付近の秘境にて出没していた例の黒騎士も撃退され、一行はそのままアヴァロットへ向かったとの報告が……たった今、入りました!」


「へえ〜、あれ倒せるんだ。あいつ、ドスコムーアより強そうだったよね?」


エルギーノは、欠伸交じりに椅子にもたれ直すと、つぶやいた。


「そっかぁ……。まあ、そろそろあの国も壊さないと、怒られそうだしね〜。行くとしますかぁ……」


──四魔王の一角が、重い腰を上げようとしていた。

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