第六十一話 不死鳥との旅立ち
「さてと……じゃあ、改めてこの盾の性能について説明すっか!」
ジャックが腕を組み、どこか誇らしげに立ち上がる。
「まあ、もうほとんど実演済みだけどな!」
「お願いします!」
アリシアがまっすぐな瞳で応じた。
「よっしゃ!
まず第一、“魔法吸収”機能だ。こいつは特製の聖水で邪気を清めたことで可能になった。つまり、魔物の魔法はこの盾に触れた瞬間、無力化されるって寸法よ」
「……は? いきなり強すぎじゃない?」
バーバラが目を丸くする。
「はっはっは! まだまだいくぜ!
次、“魔法吸引”機能!魔物の魔法ってのは邪気を纏ってる。この盾は、それを感知して吸い寄せる。つまりだ──方向さえ大きくズレてなけりゃ、仲間の方に飛んでく魔法もこの盾に向かって軌道を変えるのさ!」
「……そして、それは無効化される……」
クリスが小さく呟く。
「そういうこと! やべぇだろ? はっはっは!」
「味方の魔法は吸い寄せられないの?」
バーバラが不安そうに聞く。
「ナイス質問、嬢ちゃん! だが安心しな。こいつは“邪気を纏った魔法”にだけ反応するようになってる。味方の魔法には一切反応しねぇよ。それが可能になったのは、こいつのボディに使った特殊な魔力磁石のおかげだ。あれを手に入れるのは、そりゃもう……」
「……チートじゃん!」
バーバラが叫ぶ。
「当たり前だろ!俺の全てを注ぎ込んだ盾だ。チートじゃなきゃ話になんねぇ!
次!“魔力蓄積&放出”機能だ!敵の魔法を吸収するたび、この盾には魔力が蓄積されていく。で、満タンになったら光る。そして──取っ手のボタンを押すと、鳥の口から…………ビーーーーーム!!」
「そんなすげぇ鳥の頭だったとは……」
ムサシが感嘆の声を漏らす。
「そうだ、すげぇんだよこの頭は!この鳥の頭があって初めて、この盾は完成する。攻防一体、これこそロマンよ!お前さんたちが見つけてくれなきゃ、こいつは完成しなかった。本当に、ありがとうよ……!」
アリシアは、小さく頷いた。
「そして……最後の機能」
「ああ。“瞬間再生”機能だ。さっき兄ちゃんに叩いてもらった通りだな」
「瞬間再生……?」
「あの特製液体には、聖水だけじゃなくて“再生能力を持つ魔物の血”が混ざってる。たっぷり漬け込んだことで、盾にその力が宿った。物理攻撃で壊れた部分は即座に修復される。まさに不死鳥の名にふさわしい、不滅の盾さ!」
「……すごい……すごすぎる……!」
アリシアの瞳が潤む。
「これがあれば……いや、この子となら……私はみんなのこと、守れる!!絶対に守ってみせる!!」
ジャックは、口元を緩めた。
「“この子”か……いい呼び方だ。勇者ちゃん、あんたにこいつを託せるのは、俺の誇りだ。頼むぜ。こいつと一緒に、世界を救ってくれ!」
(それにな……防げると頭でわかってたって、敵の魔法が全部自分の方に飛んでくるってのは、並の精神力じゃ耐えられねぇのさ……。だから、"そいつ"は勇者だからこそ、使いこなせる盾なのさ)
「はいっ!! 必ず!!」
「ジャックさん……本当にありがとうございました」
クリスが丁寧に頭を下げる。
「おもてなしに盾に……心から感謝します」
「だーーーかーーーらーよ、白髪くん!」
ジャックが指を差す。
「あんたがプーゾをぶっ倒してくれなきゃ、俺の人生は終わってたんだ。感謝してんのはこっちだっつの!」
「……あんたみたいな職人と出会えて、良かった」
ムサシが素直に言った。
「……おう。剣士さんよ、そのまま、その目で突き進め」
「ジャックさん! 私、転職なんかしないで魔法使い貫くからね〜!」
バーバラが手を振る。
「はっはっは! それが一番だ、お嬢ちゃん! あんたの魔法は世界を救うのに絶対必要だ。魔法見なくてもわかる。あんたは俺なんかと比べるのも悪いほどすげぇ魔法使いだってな」
「そ、そんなことないってば〜!」
バーバラは顔を赤らめる。
──そして。
アリシアは、不死鳥の盾を背中に背負い、仲間たちに呼びかけた。
「……じゃあ、みんな。行こうか!」
三人は頷き、揃ってジャックに向き直る。
「ジャックさん……本当にありがとうございました! 行ってきます!!」
「おう! 行ってこい! 大魔王ぶっ倒したら、また遊びに来いよな!」
「はい!!」
──こうして、勇者アリシアは、最強の盾を背負い、仲間と共に、アヴァロットを目指して、山を降りていった。




