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第六話 酒場での出会い

夜の帳が下りると共に、リンドバーグの酒場には灯がともり、冒険者たちが集いはじめた。

ここでは、腕に覚えのある者も、酔いどれも、夢見る若者も、皆同じように酒を酌み交わす。

クリスとアリシアも、新たな仲間を探すべく、その賑やかな酒場へと足を踏み入れた。


「さて、手分けして探そうか!」

アリシアがにっこり笑って言った。


二人は辺りを見渡した。

カウンターには、両手杖を傍らに置いた魔法使いらしき女性が一人で酒をあおっている。

中央の円卓では、数人が談笑する中、ひときわ目立つ巨漢の戦士が大声で笑っていた。


クリスはカウンターへ、アリシアは円卓へ。

それぞれ声をかけることにした。


カウンターに近づいたクリスは、少し緊張しながら声をかけた。


「すみません、ちょっとよろしいですか。実は──」


「なにー?ナンパですかー?」

魔法使いの女性は、気だるげに笑った。


「い、いえ、違います!仲間を探していまして……」


「あー、そうなんだー。仲間ねー。じゃ、まずは飲もっか!マスター、ビール持ってきてー!」

女は陽気に叫んだ。


「いえ、ぼくはお酒は結構です。それより貴女は魔法使いですよね?ぼくら、魔法使いの──」


「あー、つっまんなーい!」

女はあくび交じりに言葉を遮った。


「きみー、僧侶でしょ? 僧侶ってホントつまんない男ばっかりだよね~。モテないでしょー? 神様に仕えてるとか、マジ退屈ー!」


魔法使いはだいぶ酔っているようだったが、それにしても酷い言葉だった。

クリスは顔を真っ赤にして、羞恥と怒りを押し殺しながら、その場を離れた。


一方、アリシアは円卓で巨漢戦士と対面していた。


「仲間を探しているの。私たちは──」


「乳でも揉ませたら考えてやるよ。へへっ!」

戦士は下品な笑いを浮かべた。


アリシアはため息をつき、小声でつぶやいた。


「はぁ……しょうもない……こりゃダメね……」


「なんだとコラァ! 調子乗んなよ、姉ちゃん!」


巨漢戦士は怒声を上げ、アリシアに殴りかかろうとした、その時──


「やめてください。」


低く、しかしよく通る声が響いた。


近くの席で様子を見ていたもう一人の戦士が、巨漢の腕を掴んでいた。

その男は、低めの身長ながら、鍛え上げた太い腕で巨漢を押さえ込んでいる。


「ぐ……ぐぬぬ……!」


巨漢戦士は力比べで押し負け、顔を真っ赤にして喚いた。


「覚えてやがれぇ!」

捨て台詞を吐き、逃げるように酒場を後にした。


アリシアは、助けてくれた男に微笑んだ。


「ありがとう。名前を教えてくれる?」


「ポチンコフと申します。」

男──ポチンコフは、胸を張って答えた。


その様子を見ていたクリスが、アリシアに提案する。


「アリシア様、彼を仲間に誘いましょう!」


アリシアも力強く頷いた。


「ポチンコフさん! 私は勇者アリシア。大魔王を倒す旅をしています。

貴方の正義感と腕力、ぜひ私たちに貸してくれませんか?」


「おお! 勇者様! なんと光栄な! このポチンコフ、喜んでお供致します!」

ポチンコフは感激し、その場で膝をついて誓った。


「ありがとう、ポチンコフ! これからよろしくね!」


「こちらこそ、よろしくお願い致します!」


クリスも満面の笑みで深々と頭を下げた。


「ところでクリス、魔法使いの子はどうだった?」


アリシアに問われたクリスは、顔を赤らめながらきっぱり言った。


「……あの方だけは、仲間にすべきではありません。信頼できるとは……思えません。」


「そう。なら仕方ないわね。」

アリシアは小さく笑った。


「でもポチンコフと出会えたもの。大きな収穫だわ!」


三人は、笑いながら賑やかな酒場を後にした。


その瞬間──

街のどこかから、鋭い悲鳴が響いた

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