第五十話 黒の真相
(さっきの捲れ方……絶対見えてたわ……)
アリシアは、自分の中で浮かび上がる疑念と向き合っていた。
クリスの髪が黒くなったあの瞬間。
彼が見ていたのは、確かに──
(だけど……覚えてないのよね……なら、罪ではないはず!)
そう結論づけると、アリシアはにっこりと微笑みながらクリスに声をかけた。
「変わったことは、何もなかったわ!本当に謎ね……。それより、そろそろ私たちも加勢しましょう!バーバラの魔力、そろそろ限界じゃないかしら!」
「え?あ……はい! 行きましょう!」
どこか違和感を覚えながらも、クリスはすぐに頷いた。
二人は走り出す。
鬼たちのもとへ。
*
丘の中腹では、脳筋の鬼と狂愛の鬼が、変わらず元気に暴れていた。
「ムサシさーん!次は氷と火でやってみますー!?」
「おうよ!」
バーバラが杖を振る。
「ヒエ・テーロ!」
左手の刀が氷の魔力を帯びる。
「モエ・テーロ!」
右手の刀が炎に包まれる。
ムサシはご満悦で叫んだ。
「いくぜ!二刀流──溶解斬!!」
ズバァァァアアッ!!
氷の斬撃と炎の斬撃が、巨大な猿型の魔物を左右から切り裂いた。
「ぎゃ〜!!」
魔物の左腕は凍てついて飛び、右腕は炎に焼かれて飛んだ。
わけではなかった。
魔力を帯びても、そもそもの斬撃の威力が強すぎるため、無属性斬撃で斬ったのと何も変わらなかった。
ちなみにバーバラは、とっくに気づいていた。
愛しのムサシが楽しそうだったから、黙って一緒に楽しんでいるだけであった。
──その時。
「バーバラ!スカートの中に虫が!!」
「え!?ウソ!?イヤだっ!!」
バーバラは悲鳴を上げて、スカートをパタパタさせる。
それにより、白とピンクの縞々パンツがチラチラと……
いや、もはやチラチラどころではなく、しっかりと。
アリシアは、すかさず横目でクリスを見る。
──クリスは、しっかりと見ていた。
その証拠に、顔が真っ赤に染まっていた。
だが──
髪は、白いままだった。
(……どういうこと!?違うの!?もうわかんない!!)
アリシアが心の中で叫んだ次の瞬間、地面から突き出た石に躓き──
「きゃっ!!」
勢いよく前のめりに転倒した。
「アリシアちゃん!丸見え!」
パタパタを終えたバーバラの叫びが響く。
その時だった。
黒髪のクリスが、無言でアリシアに近づき、
腰の方に捲れたスカートを整える。
そして、魔物の方へ手を掲げ──
「──ケシ・トーベ」
黒い閃光が疾走した。
ズバァァン!!
魔物は、悲鳴を上げる間もなく跡形もなく消え去った。
「なんだ!?」
ムサシが刀を構えながら振り返る。
そこにいたのは──ちょうど、黒髪から白髪に戻りつつあるクリスだった。
呆然とするバーバラ。
言葉を失うムサシ。
そして──
(………………。
パンツじゃなくて………………。
“私のパンツ”ってこと……………!?)
アリシアだけが、ひとりその"真相"に辿り着いたのであった。




