第四十九話 黒の謎
翌日も、何も変わりはしなかった。
──否。
斬るのが大好きな脳筋剣士と、脳筋剣士が大好きな狂愛魔法少女という、鬼に金棒ならぬ“鬼に鬼”コンビの恐るべき火力は、むしろ日に日に増していた。
この辺一帯の魔物たちが弱いわけではない。
むしろ、旅が進むに連れて、魔物たちも強くなっていた。
単純に、鬼どもは実家で鍛えられすぎたのだ。
さらに相性まで抜群とくれば、魔物にとってはもはや自然災害である。
一行は、標高の高い丘へとたどり着いた。
だが、標高が変わろうが鬼たちのすることは変わらない。
──目に映る魔物を、駆逐するのみ!
「二刀流──超電導斬!!」
ズバババババーーン!!
「ギャ〜〜〜!!」
「上手くいきましたね〜! ムサシさ〜ん!」
いつの間にか謎の連携技まで習得していた鬼たちであった。
*
その頃、丘の頂では──
「いい眺めね〜。今日は天気もいいし、レジャーシートでも敷いておやつ食べたいわ」
「それは楽しそうですね。次の街で探してみますか、レジャーシ──」
その時、丘の下から風が吹き上がった。
ふわり、とアリシアのスカートが舞い上がる。
白地にイチゴ柄──
“それ”が、クリスの視界を支配した。
「きゃっ!!」
アリシアは慌ててスカートを抑え、真っ赤な顔でクリスを見る。
「……見た!?」
だが、そこにいたのは──
髪が黒く逆立ち、
瞳が赤くなった、
"あの”クリスだった。
「………!?」
アリシアは、声を失った。
クリスは、無言で周囲を見渡し始めた。
その視線は、冷たい殺気に満ちていた。
「……クリス……?」
──数秒後、クリスは戻った。
「……アリシア様? どうかしましたか?」
「……クリス、今……髪が黒くなって……」
「……え?」
「それで、周りを見渡して……すぐ戻ったの……」
「……いったい、どういう……。アリシア様、僕が変化する前に、何か……何か起きましたか?」
「……覚えてないの?」
「……レジャーシートの話をしたのは、覚えています」
「……そう」
(……………
その後に何か変わった出来事って……
私のスカートが捲れたことくらいしか……思いつかないんですけど!!)
アリシアの思考が大混乱に陥る中、ふと──
コジーロ村でのムサシとの会話がよみがえる。
──回想──
「……何か、あったの?」
「──お前のスカートが、子どもに捲られて、パンツが見えた」
「…………はぁ!?」
「…………っ!!」
「間違いねぇ。あの時確かにこいつの髪は黒くなり、お前のパンツは紫だった」
──
(……ウソ……でしょ……。
クリスの覚醒って……本当に、パンツを見るのが条件なの……!?)
いよいよ"真相"に迫る勇者であった。




