第四十五話 最高の仲間達
魔道古書店「タナック・ブック」。
バーバラの魔法によって再建されたその姿に、店の前は感動と歓声で満ちていた。
「うおおおおお!すっげええええ!」
「バーバラ様ぁ〜!」
「奇跡だよ奇跡!」
興奮する群衆を前に、店主タナックが一歩前へ出て深く頭を下げる。
「皆さん!ご心配いただき、本当にありがとうございました!
この『タナック・ブック』は、バーバラ様のお力によって甦りました!
これからも、この街で商売を続けさせていただきたく、何卒よろしくお願い致します!」
「おぉーーうッ!」
「いっぱい買ってやるぜー!」
「お前が買ったって読めるわけないだろー!」
「うるせぇ!読めなくたって買うんだよ!」
「タナックさーん!ミーナちゃーん!ほんとによかったねー!」
わいわいと騒ぐ群衆は、やがて満足げに徐々に散っていく。
警備隊の面々も最後に整列し──
「一同、敬礼ッ!」
感謝と敬意のこもったその敬礼を、バーバラは目を見開いて見つめた。
(……魔法って、こんなふうに、人から感謝されるものなんだ……)
それは、今まで知らなかった“魔法の本当の力”。
バーバラの頬に、柔らかな微笑みが浮かぶ。
そんな彼女にタナックが問いかける。
「しかし……あれほどの本を……本当に、よろしいのですか?」
バーバラは腕を組んで、ふふんと誇らしげに言った。
「いいのいいの!母への当てつけで、城から勝手に持ってきた本だったけど……まさかこんな役に立つなんて、むしろ感謝だわ!」
「え!? 勝手に!?」
アリシアが素で驚く。
「うんっ!」
バーバラは無邪気に笑う。
「し、城から勝手に……!? ほんとに大丈夫ですか!?」
タナックは額に汗を浮かべる。
「だいじょーぶでーす!」
と、バーバラはピースサイン。
タナックは困惑しながらも、ふっと肩の力を抜いて言った。
「……では、お言葉に甘えて。ありがたく、商売を再開させていただきます!」
「はーい!」
ムサシはそんなバーバラを横目で見て、ぽつりと呟く。
「まったく……大した女だ」
(きゃーーー!もっと言って〜!ムサシさ〜ん!)
そしてクリスは、まっすぐ彼女に向き合い、静かに告げた。
「バーバラさん。あなたは本当に、素晴らしい魔法使いです。
正しい心が大きな魔力を操れば、人はこうして奇跡を起こせるのですね………」
その言葉に一切の誇張はなかった。
まっすぐで、誠実で、澄んだ想いが、バーバラの胸にまっすぐ届いた。
「……クリスくん、そんな……ありがとう。でもね──
私……みんなと出会えたから、正しいことができたんだ。絶対に!」
その様子を見ていたアリシアは、胸が熱くなっていた。
(最高の仲間が……揃った。私には、もったいないくらいの──)
今日ほど、自分が勇者として生まれ、辛い日々を送ってきたことが報われた日はないと、心から思った。
絶対に、大魔王を倒してみせる。
そしてこの仲間たちと──平和を築くのだ。
アリシアの決意に満ちた眼差しを見て、ムサシが言う。
「……じゃ、そろそろ行くか。盾を買いに。──"俺たちの"盾をな」
タナックの話で盾役の重さを理解した上での、ムサシなりの言葉だった。
その重さを背負うことを、一人に任せっきりにはしてはいけない。
"このチームにとって必要な防具"を、全員で真剣に選ぶ。
そういう意志が込められていた。
その意志は、クリスとバーバラにもしっかりと伝わった。
「ええ、行きましょう!」
「行きましょう!」
(ムサシさん……尊すぎ……でもやめて……アリシアちゃん惚れちゃうってマジで!)
アリシアは、仲間たちに笑顔で告げる。
「……みんな、ありがとう。──行きましょう!」
「皆さん、本当にありがとうございました!大魔王を倒したら、またぜひお越しください!」
タナックが叫び、ミーナがバーバラに駆け寄る。
「まほーつかいのおねーさん!」
「ん?」
「パパとミーナと、パパの本屋さんを助けてくれて、ありがとー!ミーナ、おねーさんみたいなまほーつかいになりたい!」
バーバラはそっとしゃがみ、ミーナの頭に手を置いて、優しく微笑んだ。
「そしたら──いーっぱい、お勉強がんばるんだぞー!」
「うん!! 頑張る!!」
こうして、美しい別れの後──
一行は意気揚々と、防具屋へと入店する。
が。
「……売り切れ~~~!?」
「あぁ。盾は生産が全然追いついてないんだ。すまん」
「…………えぇ……」
──勇者と最高の仲間達。
彼らの旅は、今日も順調に予定外である。




