第四十一話 強さ
「間に合った!!」
焼け焦げた書店の前に駆けつけたバーバラの声に、ムサシが驚いたように笑みを浮かべた。
「お前……やるじゃねぇか!」
「ありがとうございます!」
(きゃー!褒められた!嬉しい〜!!)
二人はすぐさま、店の前でしゃがみ込んでいる親子のもとへと駆け寄った。
──その時。
「ムサシ!バーバラ!」
アリシアとクリスも、遅れて現場に到着した。
魔物に背を向け、娘を抱きしめながら守っていた父親は、今ようやく魔物の消滅と火の鎮火に気がついたようだった。
「……生きて…る? 魔物は!?」
「ぐすっ……ぐすっ…パパ…?」
娘のミーナが、涙をこらえきれずに父の胸に顔を埋める。
「やっつけましたよー!」
バーバラが明るく声をかけた。
父親が振り向くと、そこには四人の若者たちが立っていた。
「あなた達が……魔物を? ……あぁ………」
その場に崩れ落ち、地面に額をつける父親。
「……ありがとう!………ありがとうございます!………ありがとうございます!!…」
誰も言葉は返さなかった。
ただ静かに、彼の感謝を受け取った。
ミーナが焼け焦げた書店を見つめ、口を開いた。
「……パパの本屋さんが……パパの本屋さんが………うああああぁぁん!」
「大丈夫だ、ミーナ! 生きてさえいれば、なんとかなる! パパ、頑張るから! ミーナ…生きてて良かった!! うぅ…!」
娘を抱きしめながら号泣する父親の姿に、アリシアは目を潤ませた。
「バーバラ……本当にありがとう!!」
そのまま、彼女はバーバラに思いきり抱きついた。
「わっ!? いや、そんな! 間に合って良かったよ! それに、アリシアちゃんがあいつを止めてくれてたんでしょ? じゃなきゃたぶん、間に合わなかったよ……ありがとう、アリシアちゃん!」
(え、何これ……私こんなこと言う人だったっけ?……私、どうしちゃったんだろ、ホントに……)
アリシアはその言葉に、ふと先ほどの光景を思い出す。
自分の前に飛び出し、全ての攻撃を受け止めた、黒髪のクリスの姿。
(……二人はあの時のクリスを見てないのなら、黙っておこう)
そして、自分の力不足を噛みしめるように、ぽつりと呟いた。
「いいえ……私の魔法がもっと強ければ、あんな攻撃だってさせずに済んだはずだし……」
すると、ムサシが少し眉をひそめながら言った。
「おい、あんまり気負いすぎるなよ。役割があんだろうが。そのために俺たちを仲間に入れたんだろ?」
(……やっぱり、素敵すぎるよこの人……アリシアちゃんまで好きにならないでしょうね!?)
バーバラは心の中で軽く焦る。
「……そうね。ありがとう、ムサシ」
クリスはその様子を見ながら、内心で葛藤していた。
(記憶が……抜けている。やはり、あの“覚醒”をしたのだ。アリシア様は気づかって、それを伏せている……いったい、何なんだ……クソ!!)
そんな中、父親が娘を抱きかかえたまま、四人に深く頭を下げた。
「あの……よろしければ、お礼をしたいので、お急ぎでなければ、うちにお越し頂けませんか? そんな大したものは何もできませんが……どうか、是非!」
アリシアは、己の不甲斐なさに押し潰されそうになりながらも、人の厚意を無碍にしてはいけないと、笑顔を作る。
「ありがとうございます! では、せっかくですから、お言葉に甘えてお邪魔しましょうか、みんな!」
三人は頷き、命を救った親子の家へと歩みを進めていった。




