第二十八話 秘剣の力
勇者と僧侶による壮大な連携技が発動したというのに──
剣士と魔物は、一心不乱に股間を挟んだスパーリングを続けていた。
「いい加減に……」
「しやがれぇぇぇっ!!」
魔物は渾身の力で、ムサシの刀を盾で押し返す。
刃と盾が激しくぶつかり合い、火花を散らす。
「クソが……!」
ムサシはバク宙気味に飛び退き、距離を取る。
だが、再び突撃しようと構えたそのとき──
視界の端が、眩しく揺れた。
「……なんだ、それは?」
振り向いたムサシの目に映ったのは、光を放つアリシアの剣だった。
「あなたのお父さんから授かった技よ!」
アリシアが誇らしげに言うと、
「あぁ、そういやそんなこと言ってたな」
ムサシは面倒くさそうに返し、そのまま再び魔物とのスパーリングへ突撃していった。
アリシアは、
(さすがに少しは感動してもいいのでは……)
と思いながら、
「……ちょっと! 待ちなさいよ!」
と叫んで、自らも戦闘に加わる。
当然、ムサシとは違い──
四本腕の巨人は、光り輝くアリシアの剣に対して、無関心ではいられなかった。
「……なんだ、その剣は……!?」
魔物は、もはや目を向けずともできるスパーリングをしながら、アリシアに怒鳴る。
「さあ、何かしらね!」
アリシアはそのまま、魔物の左脚を斬りつけた。
「ぐっ!」
一瞬ぐらつくも、傷が浅いことに安堵し──
「なんだ……なんてことのない普通の斬撃じゃねーか。こんなもん俺には意味ねーんだよ!」
と嘲笑った……
が──
「……?」
再生しない。
「……なんだ? 再生……しない……?」
その言葉にアリシアの目が輝く。
「──よし!」
彼女は一気に距離を詰め、モド・ラナクの斬撃を両脚に浴びせ始めた。
ムサシであれば一撃で斬り落とす脚も、アリシアの腕力では斬り跡を増やす程度。
それでも──
「アリシア様! ハヨ・ナーレ!」
クリスの詠唱が、彼女の体に魔力を巡らせる。
アリシアの剣筋が一気に加速した。
「サンキュー!クリス!」
その速度は、ムサシを凌ぐほどの鋭さ。
斬撃が、傷を、次々と刻んでいく。
「どうなってやがる!!」
魔物は焦り、吠えた。
──魔物の再生能力には、ある秘密があった。
それは、ダメージの蓄積と共に、再生能力そのものも低下していくというものだった。
蓄積された傷が“靱性”と呼ばれる限度を超えたとき──
モド・ラナクの力を帯びていない攻撃すら、通るようになる。
「くそがぁぁっ!!」
ついに、魔物の両脚が崩れ落ち、膝をついた。
靱性──ブレイク!!
「今よ、ムサシ!!」
アリシアが叫ぶ。
しかし──
ムサシには、その声は全く届かなかった。
彼は、すでに“完全自動股間斬りマシーン”と化していた。
「──せいっ!」
神速の一閃。
盾のない、無防備な瞬間を本能的に察知し、放たれた斬撃が──
魔物の股間を、両断する。
「……ば、ばかな……」
魔物は悔しげに呻き、光となって消滅した。
──こうして結局、靱性とは無関係な急所の股間を斬って勝った一行であった。




