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黒の僧侶  作者: ヨシダール


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第二十四話 ダンジョン事変

「……やっぱり、私……盾が欲しい!!」


そんなアリシアの決意から一夜が明け、三人は変わらず平原を進んでいた。


「まあよ、そろそろどっか街でも見えてくるだろ。そこの防具屋で一番硬ぇのでも買えばいいじゃねぇか」

ムサシが肩を回しながら言う。


「ええ、そうなりそうね。ムサシが勝手に敵を斬りまくってくれるおかげで、ゴルもだいぶ貯まってきたし!」

アリシアは笑顔で手持ちの袋を軽く振る。

※ゴル……魔物を倒すと、その強さに応じて変化する通貨。モンスターを倒せば倒すほど懐が潤う仕組みである。


「そうですね。そろそろ足も疲れてきたことですし、どこか街が見えてくると嬉しいのですが……」

クリスも、やや弱った声で歩を進める。


その時だった。


「──待って! あそこにダンジョンがあるわ!!」

アリシアが地平線を指さす。


「ダンジョン……ですか? しかし今は、休息を優先するべきかと……」

と、クリスが言いかけた瞬間。


「盾の匂いがプンプンするわね! 行くわよーっ!!」

アリシアは勢いよく駆け出した。


「ア、アリシア様ぁ〜……!」

クリスは目を丸くして、慌てて後を追う。


「ダンジョンか、面白そうじゃねぇか!」

ムサシは虎のように地を蹴った。


こうして三人の、急きょ決定したダンジョン攻略が始まった──。



内部は広大かつ入り組んでおり、魔物も数多く潜んでいた。


ムサシはご馳走を前にした子供のように走り出し、魔物たちを次々と斬り倒していく。


「せいっ!」

ズシュン!

「はぁっ!」

バシュン!

「おらぁ!」

ズバシュン!!


その剣撃はあまりに速すぎて、敵は描写すら許されずに消滅していった。


そんな中──


アリシアは魔物退治には見向きもせず、ダンジョン探索という“冒険の醍醐味”を一心不乱に堪能していた。


「うわっ、毒沼!」

「アリシア様ぁっ!!」


慌てて駆け寄るクリス。

すかさず毒消し魔法ポイ・サーレを詠唱する。


──少しして。


「いったぁ〜! 棘床ってば!」

「アリシア様ぁぁっ!!」


またも駆け寄るクリス。

今度は回復魔法カロ・ナーレが発動。


──さらに数分後。


「きゃ〜〜っ!!」

「アリシア様〜〜〜っ!!」


落とし穴に落ちかけたアリシアの手を、クリスが非力な腕で必死に掴んでいた。


アリシアに翻弄され、どんどん疲弊していく聖職者。


そんな彼の悲鳴をよそに──

ムサシの剣撃ショーは続いていた。


「ふっ!」

ズシュン!

「てぃっ!」

バシュン!

「そりゃあ!」

ズバシュン!!


いよいよクリスの体力が底を突きかけた頃──

三人は、T字路の突き当たりにたどり着く。


右には最下層へと続く階段。

左には、視界の悪い曲がりくねった通路が伸びていた。


「階段がありますね。……降りましょう」

クリスが、疲れきった顔で言う。


「──あっちに絶対、宝箱があるわっ!!」

アリシアが勢いよく左へ向かってダッシュ。


「まだ斬ってねぇ魔物がいそうだな!」

ムサシも興奮気味に後を追う。


「お、お待ちください〜〜!!」

クリスは顔をしかめながら、ふらふらとついて行くしかなかった。


その先、通路の果てには──


「やっぱりあった! 宝箱よ!」

アリシアの瞳がきらきらと輝く。


「開けちゃうわよ〜っ!」


と、その瞬間。

ガバァッ!


「きゃ〜〜〜っ!!?」


アリシアが、宝箱に食われた。


クリスとムサシが駆けつけると、アリシアの下半身が宝箱からはみ出し、黄色のパンティがばっちり見えていた。


「た、助けて〜〜〜!!」


「……食われたか」

ムサシが静かに呟き、腰の村政宗に手をかける。


(どう切る……?)

パンツは目に入っていたが、見えてはいなかった。


──ズバンッ!


しかしその時。

黒い閃光が空を裂き、人食い宝箱に突き刺さった。


「なっ……!?」


閃光は瞬く間に数発放たれ、アリシアの身体を避けつつ、宝箱だけを粉砕した。


「お前……!!」


振り返ったムサシの視線の先には──

黒髪のクリスが立っていた。


無言のまま手を向けるクリス。

その顔は冷酷で、どこか聖職者とは思えぬ表情だった。


だが、その異様な気配にもムサシは臆せず──いや、むしろ燃えていた。


「……おもしれぇ!!」


ムサシは村政宗を振りかざし、突撃する。


その瞬間、黒いクリスが静かに囁いた。


「……ケシ・ト……」


詠唱の途中、アリシアの声が響いた。


「ありがとうムサシ! 助かったわ!!」

宝箱から這い出たアリシアは、勘違いも甚だしく叫んだ。


その言葉は、狂犬ムサシの耳には届かなかったが、黒いクリスの耳には届いた。


──次の瞬間。


クリスの髪は、ふわりと白に戻った。

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