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黒の僧侶  作者: ヨシダール


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第十八話 破邪の秘剣

ムサシとリョーマの一本勝負が終わった後も、稽古場の余韻はすぐには消えなかった。


「ふたりとも……立派になって……」

母ナゴミは涙をぬぐいながら、誇らしげに微笑む。


その隣で、ナゴミの友人ももらい泣きしつつ鼻をかむ。

郵便配達員は配達のことなどとうに忘れ、ベンチに座りながら「この村に生まれてよかった……」と感動に浸っている。


リョーマと遊びに来ただけの近所の子どもたちは、目を輝かせてリョーマに駆け寄った。


「リョーマ! 俺たちにも剣、教えてくれよ!」

「俺たちも……一緒に村を守るんだ!」


思いがけない言葉に、リョーマはきょとんとし、すぐに顔をほころばせた。


それを少し離れた場所から、ムサシは静かに見つめていた。

その表情には、どこか安心したような、それでいて誇らしげな影が差していた。


「……さて。俺は部屋に戻って、支度でもすっかね」


そう言って歩き出すムサシは、すれ違いざまに父コジーロに問いかけた。


「親父。この後、例の“連携技”をこいつらに教えるんだろ?」


「うむ、そのつもりじゃ。……じゃが、お前は見ていかんのか?」


「……自分が使えねぇ技になんざ、興味ねぇよ。いずれすぐにわかることだしな」


ムサシは背中でそう告げると、アリシアとクリスの方を振り向いた。


「おいお前ら。しっかり習得しろよ」


「もちろんよ!」

アリシアはぱっと顔を輝かせる。

その横で、クリスもまた真っ直ぐな目で頷いた。


「はい、必ず」


そうして──二人の修行が始まった。



「今から教えるのは、勇者と僧侶の連携技……その名も“モド・ラナク”じゃ」

コジーロがゆっくりと口を開く。


「モド・ラナク……」

アリシアとクリスが同時につぶやいた。


「この技は、勇者の剣に僧侶の信仰をぶつけることで、剣に破邪の力を宿す秘剣じゃ。

……習得できるかどうかは──クリス君、君の“神への信仰”にかかっておる」


「……僕の、信仰ですか」


クリスはつぶやいた。

だがその顔に、不安は一切なかった。

むしろ、当然のような静けさがそこにあった。


「そうじゃ。君は、自分の信仰が“本物”だと言えるか?」


「──はい」


その答えに、一片の迷いもなかった。


コジーロは、どこか懐かしさの混じった眼差しでクリスを見つめる。

──かつての仲間、モーゼフの面影を、その姿に重ねながら。


「……そうか。では、教えよう」


「お願いします」

「よろしくお願いします!」


「まず、アリシア様。

世界を救う覚悟を胸に、天に向かって剣を掲げなさい」


「……はい!」


アリシアは静かに目を閉じ、

まだ見ぬ未来の平和な世界を思い描いた。

心に宿る希望を、剣に乗せて──高らかに掲げる。


「はああぁっ!!」


アリシアの剣が陽の光を受け、煌めく。


「よし。では、クリス君。

 アリシア様の剣に破邪の力が宿るよう──

 神に向かって、全身全霊で祈りなさい」


その言葉は、クリスにとって何の意味も持たなかった。

なぜなら彼の祈りが“全身全霊でなかったこと”など──

生まれてこの方、一度たりともなかったからだ。


クリスは、ただいつも通りに、

静かに、誠実に、心からの祈りを捧げた。


(主よ……勇者アリシアの剣に、邪を打ち破る力を与えたまえ)


そっと、アリシアの剣に手を向ける。


──その瞬間。


剣は、まるで太陽のように眩く、黄金の光を放った。


「クリス……!! やったわ!!」


「はい!」


「これが……モド・ラナク……!」


「……ほぅ……」

コジーロが思わず息を漏らした。


「まさか、ここまでとはのう……」


こうして、勇者と僧侶は──

破邪の秘剣“モド・ラナク”を見事、習得したのであった。

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