第十話 四魔王ドスコムーア
——ドスーーン!!
上空から、魔物が落ちてきた。
筋骨隆々の赤い肌に無数の棘を生やした、異形の巨体。
「おい……てめぇが勇者アリシアかぁ?」
ニタニタと笑い、巨大な尻尾を引き摺りながらアリシアへと近づいてくる。
アリシアは剣を構え、怯まず答える。
「ええ、そうよ」
クリスもすぐにアリシアの傍らに駆け寄り、戦闘体制に入る。
「俺は四魔王ドスコムーアだ。ザルマデスが世話になったみてぇだなぁ!」
「四魔王……!」
「まあ、あんな雑魚のオカマ野郎、死んでスッキリしたぜぇ!ガハハッ!」
アリシアの顔が強張る。
「ザルマデス……やっぱり死んだの……?」
「あぁ? 殺したことも忘れちまったかぁ!? ガッハッハ!! 面白ぇじゃねぇか!」
吠えると同時に、ドスコムーアは地面を砕いて突進してきた。
「来るわよ、クリス!」
「はい!」
アリシアが剣を振るい、ドスコムーアの豪腕を受け止めた。
クリスも素早く支援魔法を放つ。
「ハヨ・ナーレ!」
アリシアの速度が上昇する。
激しい近接戦が、村を揺らしながら展開される。
だが──
「どしたどしたぁ! 二人がかりでこんなもんかよォッ!」
ドスコムーアは大声で嘲笑した。
「……あのオカマ、こんなヒヨッコ共にやられたのかよ、マジ情けねぇなぁ!!」
鋭い一撃が、クリスを吹っ飛ばす。
「ぐああっ!」
クリスの身体が地面を転がった。
「クリス!」
アリシアが叫ぶが、その隙を突き、ドスコムーアが襲いかかる。
──その瞬間。
ズシュンバシュンッ!!
閃光の如き斬撃が走る。
ドスコムーアの両腕が、
肘から先ごと吹き飛んだ。
「なにっ!?」
ドスコムーアが怒りと驚きに満ちた声を上げる。
斬撃の主は、二刀を手に、無造作に肩をすくめる。
「おいおい、あんまり村を壊さないでくれよ」
「ムサシ!」
アリシアが歓喜の声を上げる。
ムサシはにやりと笑い、
「さあ勇者様よ、さっさとかたしちまおうぜ」
二人は、息を合わせてドスコムーアに斬りかかった。
しかし──
ズンッ!!
ドスコムーアの両腕が、その場で再生する。
アリシアとムサシの斬撃を、弾き返した。
「……!」
「……なるほど、こいつぁ、ちぃとやっかいだな……」
ドスコムーアは下卑た笑いを漏らした。
「へっ、四魔王ってのはなぁ……瞬間再生くらいできて当然なんだよォ! ザルマデスもそうだったろ? それも忘れちまったかぁ? 勇者様よォ!」
アリシアは剣を握り直し、叫ぶ。
「知らないわよ、そんなの!」
彼女は魔力を込め、さらに鋭い斬撃を放つ。
再び激しい攻防が続く。
アリシアは剣撃と攻撃魔法で、
ムサシは二刀流で、
ドスコムーアを叩く。
だが──
いかなる傷も、ドスコムーアは即座に再生してしまう。
「……っ!」
アリシアとムサシは、一旦距離を取った。
「クソっ! これじゃ埒があかねーな!」
ムサシが舌打ちする。
「あんた、本当に倒し方覚えてないのかよ!?」
アリシアは苦しげに息をつきながら答える。
「実は……前の奴は……気を失っている間に、消えていたの……。だから、死んだのかどうかも、さっきまで知らなかったの……!」
「……あぁ? なんだそりゃ……」
(ったく、あの僧侶の兄ちゃんといい、妙な奴らだぜ……)
ムサシは心の中でぼやいた。
「とにかく、何か弱点があるはずよ!」
アリシアが剣を構え直す。
「攻撃し続ければきっと何か──」
──その時。
村長コジーロの叫び声が、村の家々の方から響き渡った。
「股間じゃーーーっ!! 股間を狙うのじゃーーーっ!!」




