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 レイは天才だったようで、知識をとんでもない勢いで吸収しているようだった。

 神童だ、神童だと囃し立てられているが、それは私も同じ。ハートフィルドの将来は安泰だと嬉しそうに使用人達が話していた。ただ、私のは期限付きだから罪悪感がある。

 お父様に説得して、レイと毎日いられるように交渉した。悲しそうにしていたと訴えると、見ず知らずの場所の同年代の女の子はさぞ安心出来るだろうと納得していた。

 そして私の賢さや別人っぷりにはずっと顔を顰めていた。

 夢で神に会ったと適当なことを言ったら、なんとか納得してもらえたので、とりあえずはよしとしておこう。


 そして、レイと城下町に行く許可が下りた。祭りの日が近く、夜には花火もするらしい。

 仕方ないと、お父様が困った顔をしていた。


「レイ! 行こ!」

「う、うん……!」

「あ、あんまり走って遠くに行かないでください。お嬢様達が攫われたら大変です」


 護衛五人、子供二人。手厚すぎると思ったが、ハートフィルド家の愛娘だ。それくらいが当然なんだろう。


 それにしても、レイはあまりにも世間を知らなさすぎるように思う。

 簡単な食べ物も分かっていないし、文字も書けないし、虐待されていたのか疑うレベルだ。

 だから、今はめいいっぱい楽しんでもらいたかった。

 

「ねえ、りんご飴食べない?」

「りんご、飴?」

「そうそう、最初だけとても美味しいの!」

「最初だけ? わたしは、いらないよ?」

「一緒に食べたほうが美味しいの!」


 りんご飴を説明するのにこの説明は不適切だろうが、レイは美味しそうに最後までりんご飴を食べていた。


 それから、沢山ご飯を食べ、射的をしたり、おみくじをした。


 そんな風に、お店を回っている途中だった。

 レイが、物欲しそうに宝石店を眺めていたのだ。


「レイ?」

「綺麗だね、あれ」

「うん。欲しい?」

「いらない」


 レイはずっと遠慮をしているように見えた。食べたい、やりたい、と今日は一度も言っていない。私が様子を見て、やりたいものを一緒にやらせていた。


「お揃いの欲しいから、選ぼっか」


 きっと安くはない。ただ、私は貴族なのだし、それくらい払えるだろう。不相応な宝石達。値段が見えたのかレイは目を見開いて、震え上がっていた。かくいう、私も。


「護衛さん、これって買えるんですよね」

「ハートフィルド名義で買えると思いますよ。お嬢様方にお似合いです」


 そう言われると、嬉しくなってしまうな。

 色々な宝石を見ることにした。レイは申し訳無さそうに付いてきたけど、私はそんなレイに何かをプレゼントしたくなった。

 不相応でもいい、何か、一つでも、彼女が宝物になるものがあるといいなと、直感的に思ったんだ。

 ふと、レイが一点を見つめていた。そこにあったのは紫色の宝石。


「アメジスト、綺麗ですよね」

 

 店主らしき人に声をかけられ、肩を跳ねさせるレイ。


「それがいいの?」

「う、ううん! その、綺麗だなって見てただけで、欲しいわけじゃないの!」

「あげるよ。私のお金じゃないけどね。」


 護衛に目を配らせると、店主はそれをネックレスにしてくれたようで私の手に渡った。


「レイ、後ろ向いて。付けてあげる」

「で、でも……」

「いいから。今日一緒に遊んでくれたお礼。」


 レイの少し長い髪を、私は前に流した。それから、首にネックレスを付ける。


「うん、似合ってる」

「ありがとう、ロゼリアちゃん」


 嬉しそうにはにかむ彼女に、私は喜びと、安堵の気持ちがあった。

 こうやって貢いでいれば、彼女はきっと私を嫌いにならないだろう。

 そんなふうに、思ってしまっていた。純粋な気持ちで彼女と接していたかった。けれど、私には無理だったようだ。

 でもそんなのは度外視して、とても楽しい1日だったと思う。



 ──楽しい一日で、終わりたかった。



 空が宵闇に包まれる頃、護衛の何人かが急に倒れ込んだ。瞬間、私──ではなく、レイが抱きかかえられ連れ去られた。きっと、首に宝石のついたネックレスを付けていたからだろう。


「くそ……」

「ロゼリア様、大丈夫ですか?」

「レイをッ……!」

「で、ですが……」


 護衛は私にだけ声を掛ける。ハートフィルドの娘は、私だけだと?


 それじゃ駄目だろうが──ッ!


 小さい体では中々大きい大人には追いつけない。でも、この世界には魔法がある。

 使い方なんてさっぱりだったけど、この悪役令嬢は魔法の才能がそれなりにあったはず。だから、驚異的に見られ、ハッピーエンドの最後に殺された。


 ありったけの力を足に込める。魔法なんて使ったこと無かったが、大きな風が吹いたみたいで、私の身体が前に吹き飛ばされていた。


「う、うわぁぁぁぁあ!?」


 振り向く男。そして、こちらに気づいて大きく目を見開いたレイ。


「レイ──ッ!」


 連れ去った男の背中に私の身体がクリーンヒット、そして、投げ出されたレイの身体。まずいと思って咄嗟にレイを風魔法で包んで、私は地面に転がった。

 レイが無事か見たいのに、目が開かない。眠くなってしまって、私はそのまま目を閉じた。

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