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猟犬の狩り

「最初のダイナマイトは不発か……」

 俺は遠くの方を見てつぶやいた。

 俺の魔道具には、触れた物に車輪を付けて走らせる能力が備わっている。

 車輪がついた物体は匂いを元に対象を追いかける。

 背後から「ブトゥトゥトゥ」とエンジンの音が聞こえた。

「少し、遅かったな」

 そう呟いて、やってきた札束を拾い上げる。

 元はあの門番が貰った賄賂だ、こんな盗み方しても罰は当たらない。


 片方はマコト、始末する対象。

 もう片方は……確か、紫炎という女性だったか……

 魔王戦で見たことがある。

 紫色の炎を器用に操る能力だが、どうやって消したのだろうか……

 ダイナマイトは破裂しなかったが、これは予定調和だ。

 第二の手段、ナイフを走らせて行う攻撃はまず、脚に刺さる。

 そこから気合を入れて立とうとしても、次々に刺すナイフに耐え切れず膝を付いたところで身体をあちらこちらから刺す。

 すると、そこには、血の池に全身に無数の刺し傷を残した死体だけが残る。

 ダイナマイトに真っ先に飛ばされる方が楽な訳だ。


 暫くすると「ブゥウウン、ブゥウン」と音を立て、ナイフの軍団が帰ってきた。

 送ったナイフの半分しか戻ってきていないが、おそらく紫炎とかいう女性に燃やされたのだろう……

 帰ってきたナイフ全てに返り血が付き、何本かには布切れが付いている。

 これだけで、かなりの報酬がもらえる予定だ。

 俺は走り出した。


「あの木の裏か……」

 俺の嗅覚が教えてくれた。

 あそこに、あの男の死体がある。

 どれだけ時間が経とうと自分が殺した者を見るのは気分が良い物ではない。

 俺は足をゆっくりと、恐る恐る近づく。

 木の近くまで来たところで一度、乱れる呼吸を整えなおし、木の裏を見る。

 そこには、血まみれでシャツやズボンに巻かれた木の丸材があった。

 そういえば、マコトは肩を負傷していると報告があった。

 その血を利用したのか。

 困惑する俺の嗅覚が、避けろと叫んだ。

「はぁ!!」

 身をかがめて大きく転がり振り向くと、こちらに杖を向けた高身長の執事とスカートを抑えてモジモジとしているお嬢様が居た。

 二人からは強い香水の匂いを感じた。

「んなぁあ?」

 俺は困惑しすぎて変な声を出した。

 本来、魔道具にはロックがかけられているはずだ。

 俺は女性の顔をまじまじと見た。

 紫炎と似ている……

 俺に魔道具を渡した、上位の存在は言っていた「魔道具は本人と血のつながりのある者が使える」と……

 だとしてもおかしいだろ。

 なんで紫炎のお兄さんがここにいるんだ……

 そして、そこでスカートをモジモジとさせたお嬢様は誰なんだ!!

「こめん、マコトちゃん、避けられた」

 高身長の執事が言う。

「マコトちゃん?」

 俺は聞き返した。

「おい、馬鹿、そんなこと言うからバレただろ!!」

 お嬢様がキレだした。

 それも、男の声で。

 俺は今ある状況の全てを理解した。

「お前、そういう趣味があったのか!!」

 俺は叫んだ。

「いや、無いから!!」

 お嬢様は叫んだ。

「本当はある!!」

 執事がそれにかぶせて言う。

「女装趣味はやりがいです」「女装趣味は間違いです」

「やりがいです」「間違いです」

「やりがいです」「間違いです」

「やりがいです」「間違いです」

「「女装趣味は」」

「やりがいです」「間違いです」

 二人は色々言い合っているが、おそらくマコトの言う方が真実なのだろう。

 ナイフは衣類を巻いた木材を刺した。

 ナイフもセンサーが嗅覚依存なら嗅覚をごまかすために着替えて、香水を付けたのだろう。

 しかしだ……

 この俺が何の準備もなく、ここまで来たと思ったら大間違いだ


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