表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ETERNAL PROMISE 【The Origin】  作者: 小林汐希
0章 なみだいろ
1/164

[0章0話-1]:あの日のあの場所で…


【茜音・小学2年・夏】




茜音(あかね)ちゃん、一緒に行けなくてごめんね」


「ううん……。(けん)ちゃんが悪い訳じゃないもん。元気でね……」


 茜音と呼ばれた女の子は涙を少し浮かべながら、それでも健気に笑顔を作っている。


「茜音ちゃん、健君、お昼ごはんできたぞぉ」


「は〜い!」


 二人は声を揃えて返事をして、呼ぶ声の元に走っていく。




 理由あって親元で生活できない子どもたちを預かる施設。一般的には児童福祉施設と呼ばれることが多く、その大半で自宅を離れた施設内で子どもたちの生活を支える取り組みがされている。


 入所できるのは幼稚園から高校生まで。今この「ときわ園」には小学生から高校生まで、ここを「家」として暮らしている子どもたちと親であり先生代わりでもある職員も含めて二十人ほどが一緒に生活をしている。


 先の小学2年生の二人、佐々木(ささき)茜音(あかね)と、松永(まつなが)(けん)もその一員だ。



 健は家庭の事情で2年前に連れてこられた。幼稚園の年長という歳であったけれど、本当の両親が健在だったということも覚えている。


 しかし、もうそのどちらの元に戻ることもないと、幼いながらも悟っていた。


 はじめは勝手な両親に腹を立て、職員の言うことを聞かなかったり、物を壊したりといろいろと荒れていたが、ある日を境にそれが変わった。


 同い年の茜音が「ときわ園」に連れてこられた時、彼の中で何かが動いた。




 茜音は彼より半年遅れて仲間に加わった女の子だ。



 最初に連れてこられた時から、彼女はそれまでに入所していたどの子どもたちとも少し違っていた。


 連れてこられたときの服装はブラウンを中心としたチェックのスカートに丸襟のブラウス、髪型は左右のもみあげを中心に細い三つ編みを両側に結い、背中まで伸びる残りの後ろ髪は自然に下ろしている。


 顔や手足に傷と言った家庭内不和の子に見られる要素も見あたらない。持ってきている荷物はどれも大切に育てられていたのを感じさせる品ばかりで、普通であればこのような施設に来ることはないような彼女の登場に、他の面々は少々戸惑っていた。


 服装や持ち物以上の違和感が、彼女が幼稚園の年長生にも関わらずひとことも話せないことにあるのだとすぐに気づく。


 しかし、茜音の身の上の説明を受けた後は、皆その認識が変わった。


 彼女は前年の冬に起きた飛行機事故で救われた数名の生存者の一人だというのだから……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ