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魔法使いの髪

作者: 高柳由禰

 ここは魔法学校。将来魔法使いを目指す少年少女が集う場所である。お昼休みの休憩時間、二人の少女達は他愛もない話をしていた。

「私、ショートヘアにしようかな~」

 少女の一人はそう呟いた。女というものはいつでもお洒落に気をつかうものである。そして気分によってショートヘアにしてみたり、ロングヘアにしてみたり、髪を結んだりと、様々な髪型にしてみるのである。すると友人であるもう一人の少女が言った。

「え?髪を切っちゃうの?魔法使いなんだから長い方がいいんじゃない?髪には魔力が宿るって言われてるよ」

 一般的に魔法使いは髪を長く伸ばしている者が多い。髪には魔力が宿るという一説もあり、その為か髪の短い魔法使いは少ない。しかし、ただそう言われているだけで実際に確たる根拠があるわけではなかった。髪を切ろうか迷っている少女は考え込む。

「う~ん、その髪には魔力が宿るっていう話が本当かどうかよね。本当だったら伸ばしていた方がいいんだろうけど、もしかしたら関係ないかもしれないのよね」

 二人の少女達は髪と魔力に関係があるかどうかについて議論し始めた。あれだけ多くの魔法使いが長髪を好むのだからやはり関係があるのではないか。いや、皆そう信じているだけで実際には何の関係もないのではないか。そうやって話しているうちに少女の一人はあることに思い当たった。

「あれ~?だけどさ、お爺さんの魔法使いってハゲだよね」


 ハゲ


 数多くの魔法使いの中には晩年になって大魔法使いと呼ばれるほどの功績を残す者もいる。そんな有名な大魔法使いの老人達はたいてい『ハゲ』であった。偉大な魔法使いのお爺さん達。彼らの頭は光に反射して常にテカテカと輝いている。少女達は再び考え込んだ。

「ハゲのお爺さん達でも大魔法使いって呼ばれるくらいの魔力があるんだったら、髪と魔力は関係ないんじゃない?」

「そう?じゃあやっぱり私、ショートヘアにしようかな~」

「待ってよ。結論を出すのは早過ぎない?お爺さん達は老練だから髪の毛が無くても大丈夫なのかもしれないよ。長年の鍛錬により髪がなくても強大な魔力を駆使できるようになったとか」

「そうなのかなあ」

 果たして髪と魔力には関係があるのか。魔法使いを目指す自分はショートヘアにしてもいいのか、するべきではないのか。お洒落に気をつかう年頃の少女は無邪気に悩む。そんな友人をよそに、もう一人の少女はとんでもないことを言い放った。

「大魔法使いって呼ばれるくらいすごいお爺さんでも自分のハゲは治せないんだね」

「いきなり何を言い出すの!…ぷっ、あはははは!」

 少女たちは笑い転げた。

「ハゲを治す魔法なんてあるのかなあ」

「さあ、聞いたことないわ。でも私達が知らないだけかもしれないわね」

「ハゲを治す魔法なんてくだらないものを考える人なんていないかもね」

「くだらないって言うけどハゲてる人にとっては切実な問題だよ。お爺さん達はみんな、ハゲって言うと怒るじゃん」

 ハゲで悩んでる大魔法使いのお爺さん達、彼らはもしかしたらこっそりハゲを治す魔法の研究をしているかもしれない。世界には死者を生き返らせる魔法すらあるというのだからハゲを治す魔法を編み出すのは可能であろう。

「思わず笑っちゃうわね。若い頃はどんなにカッコいいお兄さんの魔法使いも歳をとったらつるっぱげになると思うと」

「あはは。ハゲこそ大魔法使いの資格かもしれないね。男限定で。あ、魔法使いの帽子はハゲを隠すこともできるから、あんまり気にしてない人もいるかも」

「いずれにしても私達は女の魔法使いだもの。関係ないわ。女は女で立派な魔法使いを目指すのよ!」

「それで結局髪の毛はどうするの?切っちゃうの?」

「やっぱり私、ショートヘアにしようかな~。別にいいもん。髪を切ってもまた伸びるんだから」

 そう言って髪を切るか悩んでいた少女はショートヘアにすることに決めたのだった。

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